原油暴落の謎を解く (文春新書) [Kindle]

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  • 著者の岩瀬氏は三井物産に入社後、三井石油開発に出向し、世界各地で海外勤務を行いながら、エネルギー関連業務に携わってきたエネルギー分野のエキスパートですので、経験を元に歴史と原油価格の変動の仕組みを丁寧に解説しています。
    中東に滞在経験のある著者がかいた石油価格の変動とその要因や、石油価格がいかにして決まっていくのか?中東諸国の原油の種類の違い等書かれていて石油の歴史と価格、種別学べて前作同様個人的な評価は高いです。
    シェール革命が何故アメリカで起こり、今後石油全体で占める割合はどうなのか?他国でも同様にできるのか?という点に関する分析は特にインパクトが大きかったですね。

  • 日々の原油価格は在庫が増えたとか、増産の可能性がとか後付けとしか思えない理由で動いている。原油価格はいつかは上がるのか、またその時期はいつか。長年取引の現場にいた著者からの解説がこの本だ。

    今は50ドル近くに戻ってきているが2月11日には26.12ドルの最安値をつけた。年明けから3週間ほどで価格が3割下がった理由は3つと考えられている。サウジとイランの断交により減産合意の可能性が当面なくなった。そして経済制裁の解除によりイランには増産の動機が生まれ供給過剰が予想より早く進む。そして1月19日に発表された中国の2015年のGDPは6.9%、金融市場は実際にはもっと低いのではと色めき立った。

    中国の需要は本当に減るのか?8月末の時点まで粗鋼の生産は対前年比マイナスを続けているが、不動産投資、固定資産投資、セメント生産量は今年に入って回復している。成長率は低下するとしても需要は伸びると見た方が硬いようだ。

    予想以上に競争力が有ると見られてシェールオイルは暴落の原因なのか?著者の見立てでは最も競争力のあるリグは50ドル台でも稼働する。在来型の油田が取り続けないと効率が悪くなるのに対しシェールオイルは比較的簡単に採掘を止められ、価格上昇時には増産に対応できる。将来価格が上昇する時にはシェールオイルがシーリングの役目を果たしそれが60ドルというのが著者の予想だ。

    では最大の問題は何かと言うと2年にわたる供給過剰で積み上がった膨大な在庫だ。2016年始めで100万〜200万バレル/日の供給過剰で2月末のOECD全加盟国の在庫は30億バレル、日本の需要の2年分を超える。この在庫はいつかは市中に放出されるため価格の下押し要因となっている。

    投機筋の影響はどうか?NYMEXでは日当たり9000万バレルの生産量に対し、10億バレルが取引されており未決済の残高も17億バレルある。原油生産業者は将来の価格下落に備え先物は売り越し、航空会社が買い越す結果実需グループでは売り越しとなっている。一方投機筋と呼ばれる金融業者は買い越し将来の価格上昇にかけている。

    では原油価格はどうなるのか。米EIAは膨大な在庫が有るので原油が高騰することはないと予想している。しかし、著者は市場参加者が将来の需給バランスを重視するため価格は上昇すると予想する。在庫のリバランスはいつかは目立たないように進み、いつか需要が供給を上回る日が来る。OPECが減産を決めなければ、中東で地政学上のリスクが暴発しなければ価格は上がる。日本は今こそ国家備蓄を進める時だというのが著者の提言だ。

  • 【原油暴落は世界をどう変えるのか】不安定な中東と原油価格に関係はあるか。そもそも価格決定のしくみとは? 注目のエネルギーアナリストが分析と未来予測を緊急出版!

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著者プロフィール

エネルギーアナリスト。1948年、埼玉県生まれ。埼玉県立浦和高等学校、東京大学法学部卒業。1971年、三井物産に入社後、2002年より三井石油開発に出向、2010年より常務執行役員、2012年より顧問、2014年6月に退任。三井物産に入社以来、香港、台湾、二度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクでの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。現在は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」の代表世話人として後進の育成、講演・執筆活動を続ける。
著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』『原油暴落の謎を解く』(以上、文春新書)など。

「2022年 『武器としてのエネルギー地政学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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