- Amazon.co.jp ・電子書籍 (170ページ)
感想・レビュー・書評
-
功利主義は社会の最大多数の最大幸福を重視する。
個人の幸福を最大化する利己主義ではない。
・功利主義の3つの特徴
①帰結主義:行為の「帰結」を重視する(こう行為するとこうおうことが結果として起きるだろうという事前の予測に基づいて、行為の正しさを評価)。
②幸福主義:行為が人々の幸福に与える影響こそが倫理的に重要な帰結である
③総和最大化:人々の幸福の総和の最大化を重視する。
・功利主義的思考の公共政策への応用
公衆衛生を理由に個人の活動の自由を制限できるか。→リバタリアン・パターナリズムという立場
政府は人々が自らの最善の利益を追求できるように配慮するが、あくまで強制はせず、各人が異なる選択肢を選べる自由を保障する(「ナッジ」)。
彼らが想定する人間:必ずしも合理的に行動しない
(例:健康に良くないと分かっていても「とりあえず生ビール」)
–中央地方関係
ミル「能率と矛盾しない限りでに権力の最大限の分散、しかし可能な限り最大限の情報の集中化とそれの中央からの拡散」があるべき中央と地方の関係である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まさに入門たる良書であろう。大学で倫理を学ぶ身からすれば、これは取り敢えず読んでおいて損は無いだろうと思う。功利主義についての理解は深まり、倫理学について考える上では、かなり難しい議論はされないので役に立つ。
-
朝活でのホットワード
-
倫理学を学ぶことの意義と、功利主義とは何かについてわかりやすく解説した本。
倫理学と功利主義を知りたいとき、最初に本書を読めば大枠を理解でき、次に何を読むべきかを示してくれます。巻末のブックガイドは、次に読むべきものを丁寧に教えてくれます。 -
功利主義も知らずに読んだが楽しめた。
社会の倫理を考える時には、「最大多数の最大幸福を実現するべき」という立ち位置で、
「じゃあ幸福とはなにか」
「組織は個人にどこまで干渉して良いのか(どこから幸福が下がり始めるか)」
といったことを考えている学問でした。
絶対的に正しい答えはでませんが、「こういう考え方もある」というのを生み出し続けることに価値があるのでしょうか。 -
功利主義というものを勘違いしていた。「各人の快楽(=利益・幸福etc)を最大化すること」だと思っていたので利己主義な自分を肯定してくれる素晴らしい理論かと思っていたのだが、むしろ逆で、「各人ではなく社会全体」、しかも「各人の快楽は自分も他人も平等に1として測る」ということで、弱者側に立つ理論だった。かつての功利主義者は女性の参政権問題や同性愛問題を前進させたそうだ。自分の理論補強に使えないと分かった時点で急速に読む気力が失われてしまった。
-
とても面白い。
-
功利主義について「最大多数の最大幸福」という標語しか知らず、学んでみたいと思って手にとった一冊。
高校の倫理学の授業を思い出した。面白かった。
本書によれば、功利主義には三つの特徴があるという。①帰結主義 ②幸福主義 ③総和最大化。
ここに「嘘をついてはいけない」や「家族や友人は大切にすべきだ」といった規則を二次的に採用することで、功利主義は非人道的な考え方ではなく、洗練された規則功利主義となる。
本書で特に面白かったのは、公衆衛生と功利主義の関係性についてである。厳格に功利主義を徹底しようとすれば、個々人の自由権を奪いかねない権威主義的な公衆衛生的アプローチをしてしまいかねない。
しかし、J・Sミルの他者危害原則も重要な考え方であり、現代においてはむしろ自由主義的な発想で公衆衛生的なアプローチをすべきだ。そこにリバタリアン・パターナリズムやナッジの考え方を導入することで、個人の自由を保障しながらも公衆衛生的活動を行うことができる。
私は個人主義よりも自由主義を内包した功利主義を支持しており、また医師として幸福の追求よりも不幸の最小化に貢献できる人間になりたい思いが強いということがわかった。
またジョン・ロックの自然権はその範囲について議論にキリがなく、功利主義の方がスマートに思えた。
一方で、自由主義がある程度担保された現代においては、個々人は合理的な判断ができるかどうかで帰結が変わってくるように思える。辛くても勉強を続けられる人や、健康に注意して食生活を変えられる人は、将来得られる幸福が相対的に高くなる可能性が高い。
そして個々人の考え方やパフォーマンスに影響を与えるものは、社会資本やナッジ、そして各人のモチベーションあたりだろう。
改めて、環境や社会資本の重要性に気づくことができ、また自分がどういう思想をもっているのかを認識することができて良かった。 -
倫理学の入門書として読むのにおすすめの1冊。
倫理とは、社会の常識やルールを改めて考え直す技術であり、「最大多数の最大幸福」として功利主義を説いたベンサムの考え方をメインに解説されている。