- Amazon.co.jp ・電子書籍 (287ページ)
感想・レビュー・書評
-
中澤日菜子さんの小説は、これで3冊目になります。古書店で中澤日菜子さんの著書を探していたら、この小説を見つけました。2016年秋に映画化された、当時のブックカバーがついていました。「お父さん」役の藤 達也さんは、昔から映画やテレビドラマで知っていたので、小説で「お父さん」の話す言葉使いは、藤さんを意識しているのでは?と思う程でした。この小説は、「家」「家族」の在り方、「親子の関係」を考えさせられるものでしたが、「伊藤さん」は主人公の「彩」の彼氏だけでなく、「家」「家族」「親子の関係」対する著者のメッセンジャーの役割があったのではと感じました。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
お父さん74歳、伊藤さん54歳、私34歳。
ちょうど20歳違いの3人が同居したら・・・。
もともと一緒に暮らしていたのは、
恋人の伊藤さんと私の二人。
そこに兄の家を飛び出したお父さんが、
転がり込んでくる。
お父さんは昔気質の素直じゃないタイプ。
一緒に居ると息がつまっちゃう。
私は嫌で仕方ないんだけど、
意外にも伊藤さんはお父さんに慣れていく。
でも伊藤さんは家族じゃない。
肝心な話はお父さん・お兄さん・私を含めた、
家族で決める必要がある。
伊藤さんがいい。
だらしなけど、決めるところは決める。
いや、そんな格好いいもんじゃないか。
でも頼りになる。
一本筋が通っている感じがする。
世渡り上手ではないけれど、
組織ですごく評価されるタイプじゃないけど、
いい人だと思う。
近くに居て欲しい人。
今、コーチングを学んでいる。
ヨガにもずっと取り組んでいる。
コーチングとヨガの意外な共通点。
それは宙ぶらりんで、
そのまま受け止めるということ。
評価したり白黒つけず、
保留したまま一旦受け止めてみる。
伊藤さんはそんな感じ。
「答え」が溢れている時代。
正しい答えを効率よく手に入れ、
次から次へと渡っていく、そんな時代。
でも人間のスピード感覚、
身体のタイマーはそんなに速くないんだと思う。
ゆっくりわかることもある。
あとから気づくこともある。
一旦、受け止めてみる。
今の時代だからこそ大切な力なように思う。 -
34歳の主人公と54歳の彼氏が住むアパートに74歳の父が転がり込んでくる話。分かり合えそうで分かり合えない、分かり合えなさそうで実は分かり合えている。個人的にはちょっとモヤモヤが残りました。
-
一気に読んでしまった。
何このお父さん?すごいなぁ・・・
このお父さんに動じない伊藤さんもすごいなぁ…
結局スプーンが私の中ではまだ謎…? -
伊藤さんとの、安定しないけれど穏やかな長く一緒にいる夫婦のような関係。54歳の給食のおじさんからは結びつきにくいが、伊藤さんは時折「男らしさ」を感じさせる。
一方で、血がつながっているという何よりも強いつながりがある父親は「男らしさ」ではなく、内弁慶で「器が小さい」と形容される。
彩と年が近いせいか彼女の父親観に大きく共感をした。母にひどいくらい強気だったり、気が小さいところがあったり、頑固だったり。自分が社会に出て親以外のいろんな大人と接していくうちに、自分の父親の器の小ささに辟易するようになる。やるせなさすら感じる。
でも、それって、父親にはこうあってほしいっていうこどもの願望の押しつけなんですよね。父も人格を持った一人の人間なんですよね。そしてわかってくる。いろんな苦労を超えて数十年、定年まで勤めあげて家族を養ってきた父のすごさ。
彩は伊藤さんといっしょにいて、受け入れる、許す、っていうことに気が付いた。私はこの本に気づかされた。最後に父親を追って走る彩に、自分の姿を重ねて涙がにじんだ。お父さん、けんかしながらやけど、これからもよろしく。