イチャラブマシマシですと前巻のあとがきにあった気がするのですが、これは…イチャラブ…? マシマシ…? なのか…? メリダのやきもちマシマシではありました。
ビブリアゴートでの騒動で泣くほど怖かったところを助けられたからか、エリーゼがクーファへの好感度をかなり上げていますね。メリダを取られないようにするよりもメリダもクーファもまとめて家族にしてしまう方向に舵を切ることにしただけでなく、信頼していると伝えたり見惚れたりとかなりわかりやすく好きになっています。コミュ障は一旦心を許すと一気に距離を詰めるあるある。クールな態度でわかりやすくデレるエリーゼめちゃくちゃ可愛いです。
そして温泉旅行により無事にサラシャも落とされたようです。十三歳の心を奪いまくる鬼畜紳士、とても罪深い。公爵令嬢組で残るはミュールだけですが、クーファに対する反応からして時間の問題っぽい。ミュールがデレたら破壊力が断トツになりそう。今回はラストに少し登場しただけのロゼッティとも数ページの間にハプニングを起こした空前絶後のモテッぷりを見せつつも、本人は完全にメリダ一筋なところが最高です。
今まではメリダへの試練がほとんどでしたが、今回はクーファを追い詰める展開に余念がありませんでした。時期王爵の影武者として正体がバレてはならないという緊張感、影武者であることがバレる度に周りは激怒して非協力的になるという逆境、ロゼッティがいないため戦力は実質自分一人という制限、こうして並べてみるとすごい苦行の旅です。メリダのようにクラスメイトや大衆から精神的に攻撃を受けるというものではなく、連戦と警戒と気配りでとにかく疲労させて弱らせている印象。それでも道中はずっと平気な顔をしていたタフさがかっこいいです。四人娘に勝てずに「オレをなじってください…」と崩れ落ちる姿は可愛いです。
常にピンチ状態のクーファに比べ、珍しく巻き込まれた立場のメリダは先生との旅デートを楽しんだようで何より。誰もが疲れ切っている中、一人だけ元気に旅路を反芻してトリップしている恋する乙女の無限のパワーは流石。ラストのロゼッティの暴走に終末感を漂わせているメリダの描写と挿絵は笑いました。
先生のことを何も知らないと焦っている真っ最中だったからというのもあるのでしょうが、セルジュにまで嫉妬をするというのはヤンデレの素質があるような…? 依存が負の方向に暴走したらどうなるのかけっこう興味があります。お嬢様は純然たる光属性なのでそのようなことには絶対にならないでしょうけど。ヤンデレ適正であればクーファの方が断然ありそうです。
羽プレイに目隠しマッサージとまるで年齢指定本のようなことをやっていますが、それでも下品に振り切れないのは美少女が四人とも本物のお嬢様だからというのは大きそう。逆に、紳士的なクーファと令嬢四人というお上品集団でメイドごっこに温泉と、よくこれだけピンクな展開をねじ込めたなと感心してしまう。
クーファが『お仕事の頭』になっているとわかるなり、思春期らしいおふざけモードからお嬢様モードへと自然と切り替えるメリダとエリーゼが妙にツボに入りました。
読者から見ればとことん胡散臭くて黒幕役が板についているセルジュが、ポジション的には英雄になりそうというのは熱い。クーファの言う通りであれば最終的には大衆から見ればフランドールを救った英雄、主人公側から見ればラスボスということになるのかも。笑顔で人を利用し尽くしてから不要になればあっさり殺すタイプでありながら、妹への愛だけは本物というのはなかなかにおいしい設定。でもビブリアゴートでサラシャが傷ついても平然としていたし、危険な道具を渡してもいるんですよね…? 妹も武人なのだから強さを信頼していて、過保護な愛し方はしないということでしょうか。まさか最重要な道具として生かしておく必要があるから失いそうになって取り乱したなんてそんな惨い話ではないと思いたい。
妹への愛だけは本物のセルジュと主人への献身だけは本物のクーファ、生まれも育ちも貴族の王爵と夜界生まれ下層居住区育ちの暗殺者、春と冬の対象的な見た目と物腰という、作者はよくわかっているなぁと思わざるを得ない美青年二人の今後に期待しかありません。最終的には敵対すると思いますが、二人のやり取りが楽しいのでできれば共闘する展開もたくさん欲しい。
実に主人公らしくドラグーンの空中戦を学んでスキルまで習得したということは、パラディンもやろうと思えばできてしまうのでは。メリダとクーファが二人して上位クラスを打ち破ってサムライが最強になってクラスによる能力差など些末なことみたいなことになって革命が起きる、なんて展開は流石に安直ですかね。
「オレもまだまだ成長する」とクーファは言っていますが、そりゃ十七歳なら成長期でしょうね。既に化け物レベルに強いのにまだ伸び代があるという、強さのインフレが置こるのではないかとわくわくする心配が発生しました。
十七歳といえば、セルジュにおいしいところを持っていかれたことに拗ねたり、疲労のあまりメリダに甘えてしまったりと、ちょいちょい未成年っぽさを見せてくるのは本当にずるい。
『墓場まで抱えていく』という表現を「風の彼方まで連れていく」とセルジュが言ったりと、地味に世界観を感じられる細かさがたまらなく好きです。
フランドールの外の勢力について少しだけ触れられていますが、クーファはその『外』で生まれた最高位のランカンスロープであるわけで、今後の展開に期待が高まります。