興亡の世界史 ケルトの水脈 (講談社学術文庫) [Kindle]

著者 :
  • 講談社
3.50
  • (1)
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 50
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (453ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ギリシャ・ローマ文化・キリスト教に並ぶヨーロッパ文化の基層とされるケルト文化を、歴史と受容史の両面から解説した書。フランス・ブルターニュ地方を中心としたケルト文化の歴史を詳説すると共に、その中で「ケルト」という概念が何を意味してきたのか、そしてそれがどのように変遷・受容されていったのかを考察する。
    本書は、2007年に刊行された同名本の文庫化である(学物文庫化に際して掲載写真がフルカラーから白黒になっているほか、最新の研究動向について補足したあとがきが追加されている)。ブルターニュ地方を軸としたケルト文化(≒ケルト語圏)の歴史から、「ケルト」という概念の再考を試みたものである。近年のケルト研究においてはいわゆる「ケルト懐疑論」など「ケルト」概念そのものの見直しが話題になっているが、本書はそうした議論を踏まえ、ブルターニュを中心とするケルト語文化圏の歴史を解説しつつ、その中で「ケルト」(或いはその文化に属するとされてきたもの)がどのように語られてきたのかを検討していく。特にケルト語文化圏の近現代史では学問や政治の場における「ケルト」の成立・受容過程に多くを割いており、ケルト文化圏の歴史と「ケルト」概念の受容史の両面から叙述を行っているのが本書の特徴と言える。
    その上で、著者は「ケルト」という概念の使用に極めて慎重な姿勢を見せている。例えば、これまでケルト文化に属するとされてきた先史時代の巨石文化や非キリスト教的なフォークロア・自然崇拝といった事物については汎人類文化的な普遍性を指摘したり、「ケルトの司祭」として知られるドルイドについてもフランスの考古学者ジャンルイ・ブリュノーの説に基づき「ガリアの賢人集団としてのドルイド」と「後代のアイルランドなどにおける呪能者(偽ドルイド)」に峻別することを主張している。従来の説に対する批判的検討を多く含んでいるという点から見ても、今なお論争が続くケルト研究の戦線を垣間見た気分になれた。(その意味では、真にこの本の立ち位置や価値を理解するためにはもっと多くの本を読む必要があるようにも感じられた)

  • ファンタジーの世界とごっちゃになってしまっている「ケルト」について、整理整頓しようとした一冊。ケルトとはなんなのかが分かった。
    ただ、テーマがそのように難しいものだったためと、個別事例の紹介が多いが故に、個々の章の、全体に対する位置づけがちょっと分かりにくくなっている。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

女子美術大学芸術学部教授<br>専攻 言語社会学、民族学<br><br>単著<br>『周縁的文化の変貌』三元社、1990年<br>『〈民族起源〉の精神史』岩波書店、2003年<br>共著<br>『記憶と記録』(臼井隆一郎・高村忠明編)東京大学出版会、2001年<br>『ヨーロッパ統合のゆくえ』(宮島喬・羽場久み(*)子編)人文書院、2001年<br>『国民国家はどう変わるか』(梶田孝道・小倉充夫編)東京大学出版会、2002年<br>『歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティ』(谷川稔編)山川出版社、2003年<br>翻訳<br>『虐げられた言語の復権』(ジオルダン編)批評社、1987年<br><br>(*)みの字はさんずいに尾

「2005年 『ヨーロッパ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

原聖の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×