ビオレタ [Kindle]

著者 :
  • ポプラ社
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  • p95 「どこにいても、誰の前でも私は私でしかないのに。その肝心の私が関わる人次第で変わるなんてちょっと頼りない。ゆるぎなさが必要な気がする。」

    菫さんと出会い、菫さんの事を知る。かっこいい、羨ましいと思っていた人にも苦悩や葛藤があると分かる。

    嫌いな自分も受け止める強さを知る主人公を応援したくなりました。

  • 「ビオレタ」というのはスペイン語でスミレと言う意味
    ビーズやレースや色とりどりのボタンで装飾された
    手作りの商品を売っているこの店の看板商品は棺桶

    棺桶と言っても人が入るような大きなものではなく
    宝石箱ぐらいの大きさで壊れた皿や万年筆
    人の思いを入れて庭に埋葬するというもの。

    でも実際のところ、この雑貨屋で食べていけるのかが
    心配なところだ。
    儲かっているのだろうか。大丈夫なのだろうか。
    と現実の金勘定ばかり気にしていたのだが
    心にね、ちょいちょい刺さるセリフが出てくる

    そうよね、余白って大事だね
    何でもギチギチに詰め込んじゃうとしんどい
    自分も見てる人も疲れてしまう。
    面白みとか余裕みたいなものってそういう余白に
    あるものだものね、と思うわけです。

    妙ちゃんは時にめんどくさい女性で
    すごく魅力的かと言えばそうでもなくて
    どっちかって言うと変人の菫さんのほうが
    魅力的に見えたりもするのだけれど
    まぁ、菫さんには菫さんの悩みや弱い部分も
    あるわけですよ。

    好きになれない自分をどこかで受け入れながら
    自分の居場所を見つけていく。
    わたしのかっこ悪い部分をこそ、
    面白くてかわいいと愛してくれる人
    自分のまるごとを受け止めてくれる人がいる

    弱くても強くても私は私、全部含めての私を
    受け入れて強くなっていけばいい。

    そんなエールを送られているような読後感でした。

  • 突然結婚がダメになり、仕事も辞めてしまっていてたどり着いた菫さんのお店。
    菫さんの嗅覚は鋭くて、本当に人に興味がなさそうなのに、助けを本当に必要としている人には差し伸べられるのがすごい。
    そこで出会った千歳さん。千歳さんは千歳さんのあまり嬉しくない過去を持っているのに、飄々として暖かい。
    寺地さんの作品は、一人一人完璧じいのにゃな、それぞれの人間臭さが魅力的で好きだなあと思った。

  • 失恋に沈んでいた彼女が連れてこられた雑貨屋で売られていたのは棺桶なる箱。それは来訪者の想い出を埋葬するためのものだった。厳然な訣別を表すると同時に永久不変を願う埋葬という行為。過去を認容しながら新たなスタートを切る時、人はさらに強くなれるんじゃないかと。

  • 婚約破棄をされ、道端で泣いていた私。「不幸な自分を見せつけるように泣くな」という女性。
    菫という彼女に連れられ、彼女の店で原卓ことに。
    宝石箱のような商品は棺桶。事情のある人の行き場がないものを引き受けてあげるもの。
    なのにわたしが持ち込む婚約者との思い出は引き受けてくれない。
    いつも厳しい言葉や言動の菫だが、わたしの料理を食べるときだけは顔がほころぶ。
    対照的にいつもにこにこ。誰にでも愛想のよいちさと。
    彼と付き合うようになり、実は菫の元夫だと知ったときの衝撃。夫婦の子供とも知り合い、話すようになり
    菫の厳しい言葉や店の客、たくさんのものから影響されて変わっていく私。姉と兄に挟まれ、自分はいらない子だと結婚も仕事もできない自分をさげすんでいた気持ちが和らぐ。ゆるやかに前を向ける物語

  • 自分が受けた辛いことを「こんなことくらい大したことじゃない、もっと大変なことは世の中にたくさんある」と思うことに対して
    そんなふうに思わなければならなかった環境こそを恨む、という考えが目から鱗。

    自分にも経験があるけど、たいしたことじゃないって思うことで自分を保てることってあるから。

  • けしてヒーローでも何でもない地に足のついたような、自分に責任をとることのできる人を感じる。

  • 主人公が勝手に人の考えを深読みして妄想が暴走し、結果ネガティブ思考になったり、3人きょうだいの真ん中の自分はどうでもいい子ども、だの、地味な名前しか付けてもらえなかった、だの…。昔の自分の姿とかぶってしまった。寂しいのは普通のこと、ほんとにそうだと思う。主人公が少しずつ心が柔らかく変化していく様子の描写がよかった。わたしにできることだってある、そう思って前に進んでほしい。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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