組織の不条理―――なぜ企業は日本陸軍の轍を踏みつづけるのか [Kindle]

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  • ダイヤモンド社
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感想・レビュー・書評

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  • 大東亜戦争での失敗は、組織として非効率な行動が、各個人の合理的判断で引き起こされたということが勉強できました。
    『失敗の本質』も読みましたが、いろんな視点でのガダルカナル、インパール作戦の考察に触れられて良かったと思います。

    人間個人の情報入手、処理能力には限界がある、ということはこの本の非常に大事なポイントでした。
    過去、日本軍の非合理性を批判した人たちは、人間が完全な情報収集、処理ができる前提で考えてしまっており、「もっと合理的に動くべきだった」という結論にまとまってしまっているということが指摘されてました。
    「後から振り返って非効率だのなんだのいうことは簡単だよな」というのは『失敗の本質』を読んでる時に自分もまさに思ってたことだったので、とても納得できました。

    大切なのは先が読めない今現在において、合理的非効率、あるいは合理的不正をどう防げるかというところですが、自分には限られた情報処理能力しかないことを自覚すべし、とのことでした。
    今の自分は組織の未来を決めたりするポジションにはないけど、その時が来た時に謙虚に落ち着いて考えられるように、いろんな事例に学んでいきたいと思いました。

    最後に、今村均の人道的なジャワ統治の話に感動しました。周りに流されず、愛を持ってインドネシアの人と接した話はとても印象に残りました。

  • こじつけ感が半端ない

  • 【感想】
     戦争における日本軍の非合理な意思決定がなぜ起きてしまったのかをわかりやすく解説してくれる書。
     名著とされる「失敗の本質」の内容を誰でも理解しやすいように噛み砕いてくれている書。

    【私的ポイント】
    ▶︎集団の心理は取引コスト理論、エージェンシー理論、所有権理論で説明できる
    ▶︎誰もが違うと思っても、意思決定者の意思を変えるコストとそれによって得られる個人のメリットによっては誰もが意思を変えようとしない。
    ▶︎失敗の決定は、実は個々人の合理的な判断の集合で決まっているもの。

    以上のことを踏まえてあたりを見渡すと戦争だけではなく多くの身近なところで似たような構図があることに気づきます。

  • 新制度派経済学という学問を手がかりに日本はなぜ勝ち目のない対米戦争に進んだのかを論じている。エージェンシー理論とか取引コスト理論で、日本陸軍の愚かさ、不合理さの代表とされるインパールやガダルカナルを、実は合理的に考えた結果、ああなっちゃったんだよね、と説明する。その説明が、現代の経営であったり組織運営と重なって考えられるものだから、刺激的でべらぼうに面白かった。不条理、不合理な例だけでなく、硫黄島であったり、ジャワ統治といった成功例もあげてくれたから、必ずしも気が滅入るばかりではなく、バランスも良かった。とはいえ、やっぱり戦争についての記述は重い。人間は完全合理ではなく限定合理的であるからこそ、戦争のような悲劇は避けるべく、努力しなければならない。その努力の方向性についても、批判的合理精神、漸次工学といった形で示してくれたことも気持ちが前向きになれたと思う。

    この本は、戦史ではなく、今、自分をとりまいている社会であったり、仕事を考えるヒントの詰まっていたと思う。

  • 日本軍の例を元に組織が失敗や成功したのかを辿る内容です。著者は企業勤めはない方のようですが、企業の組織について言及されている部分はあながち間違ってないなと感じる部分が多いです。
    全ての人間は限定合理的なので、はたから見れば合理的でないように見えても、その人の知識や能力からすればそれが合理的な結論という考え方は興味深かったです。ニュースなどを見ていると、なんと馬鹿なことをやったのか、などと思うことは多々ありますが、それは視聴者が客観的な情報を与えられた完全合理に近い状態での感想になるのに対して、ニュースの当事者は限定合理による結果なので、どうしてもそこに見方の違いが生じるので仕方がないのだなと思いました。
    また、老舗や大手企業において、自分たちが長い事時間とお金をかけて昇華させたものなので、よりいいものがあったとしてもこれまでの投資を無駄にしないためにも、現行の方法を正当化させる考え方になるというのも面白かったです。事例で言うとポルシェが一番に思い浮かびました。ずっと911のRRというパッケージで開発を進めてきたものの、MRのほうが特性が良さそうということでケイマンというモデルをだしましたが、911はフラッグシップでありそれを超えてはいけないという考えで、ケイマンの性能を落としているという話を聞いたことがあります。それに対してコルベットがMRになったのなんかは批判的な企業風土があったからこと達成できたのでしょうか。このあたりは市場の声にも左右されるので一概には言えないですが、伝統を正当化するだけでなく、批判的な考え方も重要だということに気づかされました。

  • 「失敗の本質」と「イノベーションのジレンマ」を足して2で割った感じ。日本陸軍の各敗戦での判断はその当時としては合理的だったと著者は主張しているが、その点は同意しかねる。

  • ガダルカナルもインパール作戦も与えられた条件下では合理的な判断の結果とられた最善の選択だったと筆者はいう。それはそうかもしれないけど、そんな風にいうたら大概のことは与えられた条件下での合理的は判断の結果ということになってしまうよ。それでは、過去を学ぶ意味はなくなってしまうよ。何が言いたいのこの本は?

  • 一見不合理に見えることも、実は合理的な判断をしているということを、部分合理性によって説明できるという考え方。

    理屈や考え方として面白いと思いましたが、本文中では何でもかんでも部分合理性で説明できるような記述の印象を受け、やや強引と感じました。

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著者プロフィール

慶應義塾大学教授

「2016年 『組織の経済学入門〔改訂版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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