邪馬台国をとらえなおす (講談社現代新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 考古学の重鎮、大塚初恵さんの邪馬台国論の新書である。大塚さんは昨年7月に亡くなった。95歳だった。本書を著した時は2012年なので85歳である。それなのにキレキレの論陣を張っていた。梯久美子「昭和20年夏、僕は兵士だった」のレビューに、戦争体験を詳しく紹介したけれども、大塚さんが考古学を目指したのは、戦争で九死に一生を得て神風は吹かなかったと感じ、事実で持って古代を見ようとしたからである。その初心は、おそらく一生を貫いたと思う。

    いい意味で、松木武彦さんとはタイプの違う、考古学発掘に基づく膨大なデータを下に、中国文献などと比較しながら、真実に近づくという昔ながらの研究者だった。

    本書は電子書籍で半額以下に下りて来たので買ったのではあるが、邪馬台国論史のデータとしては有用だったと思う。また、iPhone読み上げ機能を使って読了した。本来なら専門用語は誤読が多くあって聞き取りは難しいのだけど、今回は目でも追いながら読んでいった。2倍速で読むと黙読よりも早く読めるし、集中して読めるという利点を発見した。これから学術書の電子書籍はこのように読んでいこうと思う。

    邪馬台国問題を論じることは、即ち弥生時代から古墳時代に移るアレコレを論じることになる。卑弥呼の鏡(三角縁獣神鏡のことなど)の話はかなり整理された。また、大塚さんは近畿邪馬台国説に立っている(←私も同じ)。1番の弱点である、九州に比べて近畿に鉄の出土が極端に少ないという点については、近畿の土壌が関係しているのでは?と述べていた。覚えておきたい。一方、邪馬台国九州説のいちばんの弱点は、九州内でこれといった卑弥呼の墓の候補が見当たらないことであろう。覚えておきたい。

    箸墓古墳は炭素年代測定法だけではなくて、その他の証拠でも築造年代が240-260年(cf.卑弥呼死亡248年)であることを証明していた。この事で、大塚さんはの確信はかなり高まったようではあるが、箸墓=卑弥呼の墓、纏向=邪馬台国の宮殿は確実とは書いていない。まぁ学問的にはそういうものなのである。

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著者プロフィール

1926年 東京都に生まれる。1957年 明治大学大学院文学研究科博士課程後期史学専攻修了、文学博士。現在 明治大学名誉教授。 ※2021年8月現在
【主要編著書】『東国の古墳文化』(六興出版、1986年)、『東国の古墳と大和政権』(吉川弘文館、2002年)、『歴史を塗り替えた日本列島発掘史』(KADOKAWA、2014年)、『古代天皇陵の謎を追う』(新日本出版社、2015年)

「2021年 『邪馬台国をとらえなおす』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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