- Amazon.co.jp ・電子書籍 (304ページ)
感想・レビュー・書評
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前半は、先進国を中心に潜在成長率が低下しているために、実質金利をゼロまたはマイナスにまで押し下げないと、完全雇用GDPが達成されない話について、説明。特に、アメリカでグリーンスパンが当時を振り返る記述(少しでも金融を引き締めようとするだけで、インフレ率が容易に下がる、金融政策を実施しても経済成長がしない日本に対する恐怖)は興味深い。
後半は、金融政策の限界的な話に終始。現在の金融政策の背後にある考え方を時系列ごとに追う場合は丁度良い。しかし、「どうしたら潜在成長率が上がるか」についての記述はほぼない(当たり前だが、金融政策の範囲外なので)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
信頼がおけるエコノミストの著作です。この手の題名の本はトンデモ本もあったりするので、要注意が必要です。
バブルの仕組みと対処は、未だによく分かって居ないこと。理論的な思考を停止させる不愉快な存在であること。
合理性を重視する正統的な経済学の枠内に収まらない。ファンダメンタルズからの乖離であるバブルに金融政策が与える影響は、やってみないと良く分からない。
と言い切っている部分が鮮やかでした。
また、「前向きの確信がある間は飛べる」という理解は「気合の金融政策」のイメージとも合致していると、裏付けのない理屈に苦言を呈している部分も大いに共感いたしました。
金融政策の効果の基本は、需要の底上げではなく、前倒しにあることは中銀関係者に広く認識されているけれど「前倒し」と「底上げ」の違いについては、金融政策で住宅需要が増えるのは、金利低下がエコポイントのように需要を前倒しさせる効果がある場合。将来の住宅需要を減らし、金融政策で需要を前倒しして、現在の需要不足を埋めていこうとする場合は、自然利子率を下げていくだろうと。
主役は金融政策ではない。自然利子率の低下をどうすれば食い止められるかである。と無駄の無い簡潔な文章で書かれていたので、とても読みやすかったです。
黒田日銀総裁がサプライズを多用する理由の推測として、国際金融局長・財務官として市場と向き合ってきた経験が市場観に非常に強く影響をしているのではないか。という分析も余りメディアで目にしたことがなかったので、新鮮に映りました。
簡単に言うとマーケット及びマーケット関係者に舐められてはいけない。過去のソロス VS BOEのポンドの攻防などを見ている事から下されてるという考察のようです。
就任前のトランプ政権に対しては、ニクソンショック的なマクロ的な通商政策に踏み込むかもと予想されていた点に興味を持ちました。現在進行系の政権なので、この辺普段のニュースでも気をつけながらウォッチしたいと思ったトピックでした。
最後の方に、日銀の最終目的は、「国民経済の健全な発展に資すること」であって、物価安定は中間的な目標に過ぎない。と記述があって、確かに物価上昇率の目標ばかりフォーカスが当たっていた感があったので、灯台下暗し的な暗示に思えました。