銀行はこれからどうなるのか [Kindle]

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  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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感想・レビュー・書評

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  •  タイトルから予想されるとおり、銀行という業態は今後なんらかの対策をうたないと経営が厳しくなるという説明が続く。日本の社会構造がそうなっているから仕方ないのだが、優良な貸し出し先が減っていることや、そもそも大企業であれば銀行から融資をうけなくても潤沢な資金があるという事情がある。そんな中では預金をたくさん持つ個人の顧客に地の利を生かして投資相談に乗るというのが生き残るひとつの道とされる。または企業相手であれば海外進出をサポートするようなあり方も考えられるが、小さい地銀ではそのような人材を抱えるには体力的に厳しいと予想される。

     一方旧来の銀行ではなくいわゆるテクノロジーカンパニーが金融の領域に入り込んでいることについてもそのトレンドを説明している。いくつかキーになる企業はあるのだが、Amazonがもっとも不気味な存在であると考えられる。AmazonはECで顧客の動向を既に握っていて、決済と密接に結びついた展開をしてきた。特に最近は在庫の管理だけではなく、配送業にも進出をねらっており、EC(小売り)、配送、そして金融を網羅する可能性がある。このとき、銀行が融資する先である旧来の配送業をなりわいとする企業の貸し出し利益を旧来の銀行が失っていくリスクが生まれる。筆者によると一気の展開は独占禁止法に抵触する可能性があるため、配送業界が全ての利益を失うことはないにしても徐々にその影響は出てくるものと予想される。

     最近のトレンドとしてAIが銀行業務を駆逐するというような切り口ではなく、テクノロジーカンパニーによる共食いによって貸し出し利益を失いかねないという分析はあまりにリアルで銀行がこれから数年以内にさらなる合併と淘汰にさらされる可能性を示唆している。

    業務に踏み込んだ分析がとてもわかりやすかった。

  • 財務諸表から銀行の収益構造を、分かりやすく説明しているパートが中々良い。
    全体的に平易な表現で書かれていて、読み進めるのが苦ではない文章運びな点が好印象。

    外銀と日系の銀行の収益構造の違いも分かり易く説明されていた。諸外国の金融を取り巻く動きの部分を読んでいると、本当に日本はこの四半世紀ただ停滞のみで、どんどん各国に追い抜かれて行っているのがよく分かる。
    特に、Ali payの仕組みは凄い!と思った。名前は知っていたけれども、仕組み迄は全く知らなかったので。

    また、AmazonのCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の考察が面白かった。

    VISAは、実は自社でCCを発行していない。という記述も新鮮だった。金融機関がVISAのインフラを利用しているだけであると。
    AMEX,JCBは、自社発行しているので、VISAとは異なるという事は知らなかった。VISAは決済の会社というよりも、テクノロジーの会社であると。

    ふむふむ。イノベーションと規制業種は、相容れないとつくづくこの本を読んで思いました…

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著者プロフィール

泉田良輔(いずみだ・りょうすけ)証券アナリスト慶應義塾大学商学部を卒業後、日本生命・国際投資部、フィデリティ投信・調査部や運用部でポートフォリオ・マネジャーや証券アナリストとして勤務。米国株と日本株の調査と運用に携わる。その後、GFリサーチを起業し、ナビゲータープラットフォームやOneMile Partnersを共同創業。現在はLIMO(リーモ)などの金融に関するネットメディアを立ち上げ、資産運用に関する情報発信を続ける。日経BizGate「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」の連載をはじめ、『日本の電機産業』(日本経済新聞出版社)、『Google vs トヨタ』(KADOKAWA)、『銀行はこれからどうなるのか』『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)の著書がある。メディアでコメントすることも多く、英国のFTやThe Economist、米国のBloombergなどで産業動向分析が世界に発信されている。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。

「2021年 『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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