身体醜形障害 なぜ美醜にとらわれてしまうのか (こころライブラリー) [Kindle]

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  • 自身の姿形が醜いことに悩む身体醜形障害を診てきた臨床経験豊富な著者による,症状の背景にある心理面の分析と,治療アプローチの解説.

    人間関係を避けて引きこもるわけではなくても,他人に見られた評価というより,自身の理想とする姿との相違に苦しみ,異常に低く姿形を評価しているパターンが,身体醜形障害に分類されうるものであるとする一方,被害妄想的になっている場合は統合失調症,他の要因により自身に対する評価が低下していることに伴う副次的なものであればうつ病の可能性が高い点も強調している.

    原因としては生理学的な要因もありうるものの未解明であり,著者は幼少期の生育環境,とりわけ母親との関係に問題があるケースが多いとする.また,完璧主義や負けず嫌いなど,一つのことに専心して打ち込んだり,全体が見えなくなったりする気質的側面も強く,これはShapiroの強迫性スタイルのものの見方とマッチするところがあると述べる.

    こうした心理面の背景を踏まえ,治療としてはSSRIの投薬のほか,ものの見方の偏りを丁寧に解決していくことで,問題が美醜から,その背後にある自身の心理面の問題にシフトすることで,少なくとも身体醜形障害としての問題は寛解に向かうとのことである.

    男性ではボディビルダーなどの間で,自身は筋肉が足りないと思い込み,強迫的にトレーニングを行うような身体醜形障害も存在するとのことだが,身体醜形障害では幼少期にかわいさやかっこよさを中心とした評価ばかりを受けたり,それで気を引くことでしか他者からの愛情を確認できなかったりする,という話を知ると,こうしたことは学力や,芸術的才能といった分野でもあるのではないかと思った.そうしたものを尺度に幼少期の評価を受け続けた人は,成長とともに自身の能力の不十分さを認識することで,「学力劣等障害」や「演奏能力劣等障害」とでも表現しうるものに苛まれているケースが少なくないように思え,本著で紹介されている治療アプローチはこうしたものにも一定の効果を発揮しうるように思う.

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著者プロフィール

青山渋谷メディカルクリニック名誉院長

「2019年 『悩む子どもを育てる親 子どもの才能を伸ばす親』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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