アパシー 学校であった怖い話1995 vol.7(完) [Kindle]

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  • 2017年4月23日発売
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  • 信頼できない語り部……誰?

    いよいよ最終話。
    冒頭で不穏な空気を感じつつ、六人連続の圧迫面接に黙って耐えてきた主人公「坂上修一」の手番が回ってきました。

    七話目はこれまでの話の集大成、なんですがそう言い張るには何もかも歪な話なのかもしれません。話が収束するのではなく、凝縮しているとでも言いましょうか。
    ホラーとは投げっぱなしでなんぼとはどなたから聞いた話ですが、この話でただひとつ言い切れること。
    坂上修一は自分自身の言葉では何も語っていません。発言と思考が全く地に足がついていなくて支離滅裂です。
    すべて六人の受け売りで、壊れた人形のように踊らされているだけ、そうやって狂っていく様が憐れで滑稽で、恐ろしい……。

    聞き手だった主人公が語り部の影響か狂気に駆られて信頼できない語り手に転じているので、妄想オチ(+並行世界説)で納得できるサイコホラーとして読むのが一番楽っちゃ楽なんですが……。
    これまで影も形もなかった七人目「大本真美」の存在が解釈を難しくしています。むしろミステリー要素? って思わせるのが結構嫌らしい構図ですね。

    明確な形で種明かしをしてくれた方が作品としての完成度はおそらく上がったとは思うんですが、あえて作者が隠したことで人の口に上がる機会は増えただろうと思うと、痛し痒しかもしれません。
    むしろ真実につながるラインを作ってからそれを寸断してミスリードをばらまいているので、ホラーとしては不明瞭でありながら理詰めな作品として仕上がったと思っています。

    飯島多紀哉(飯島健男)という作家は結末を委ねるもしくは投げる癖があるのですが、読み返してみるに時間を経てこの作品は完成しないことでようやく完成した気がします。
    本人の口からそれっぽい狙いを聞いて材料が揃ってきたのと、答えとして外部に出力せず己のうちに留めていくのを趣としたのと――はっきり言って慣れたので。

    もやもやと夢の中に還っていくような終わり方は、万人に勧められるものではありませんし、もちろん読み方を無理強いするものでもありませんが、ここまで読む方は読み終わった後に考えるか、感じていただければ幸いです。

    ところで最後にKindle配信で気になった点として。
    この作品が小説をPCゲーム化したものを下敷きにしているということは最初に触れたと思いますが、立ち絵が収録されていない登場人物が一人だけいます。

    ある意味最重要の「大本真美」です。
    これが彼女が「人の形」を失ったことの当てつけなのか、姿形に囚われず考えてほしいのか、単に収録忘れなのか、それはわかりません。
    ある意味考えが堂々巡りですね。些細な考えに思い煩わされて、本質が見えなくなっているのは「私」も同じ。
    精々、次の犠牲者に期待することにしましょう。

    さぁ、次に読むのは「誰」?

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