アパシー 学校であった怖い話1995 vol.5 [Kindle]

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  • 2017年4月21日発売
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感想・レビュー・書評

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  • 運命の女。

    いよいよ五人目、終盤戦突入です。
    語りを行うのは美しさ=強さが成り立つ人、岩下明美さん。
    ここまで来て今更ですが、バストアップが表示されているので、何もご存じないご新規さんでも大まかに人物像が顔からわかると思います。
    荒井さんは暗いですし、福沢さんは明るいのです。
    時に、好きな人から聞き始められるというのは本家ゲームの感触に近く、Kindle化に伴う分冊化は不思議な読書体験を創出するのかなと思ったり。

    さて、早速言おうとしたことを裏切ってしまった気がします。裏切り――首筋にひやりとしたものを感じてしまいますが、この言葉がわからない人は聞き逃し、わかっている方は聞き返して生贄にされるのでしょう。

    つまりはレビューを書きながらもあとがきを追補だけでは終わるまいと思っているのですが、実際vol.5におけるあとがきの最後のくだりに全面的に賛同します。この物語は彼女あっての物です。
    正確に言えば、彼女の視点と価値観が無ければ途端に陳腐に成り下がり、ショッキングなだけで口は悪いですが凡俗の悪趣味な酒の肴として消費されるもので終わってしまう。
    血糊の量と悪趣味さがこの章で頂点を迎えるだけに(六~七話は全体から見て特殊な話)七不思議の山場と言っていいでしょう。

    ぶっちゃけ話の題材はありふれた三角関係。
    その先に待っているのはは血飛沫と狂宴、と言ってしまうとあんまり真新しいものではないかもしれません。
    けれど、何者にも媚びることなくただ己の為したい通りに己の生き方を貫き通す彼女の勇姿に生きていく勇気をもらってしまいました。

    岩下さんの言葉は口に出しただけで眉をひそめられるものかもしれません、もっと言うなら実行に移せば腕を後ろに回るのは当然のことです。
    だけど、そんな生き方が許されてしまいそうな、世界そのものに喧嘩を売っても笑って逝ってくれそうな美しさ、儚さ、強さ、そういった素晴らしいものに満ちた女性が岩下明美なのだからあら不思議。

    彼女に向ける感情のことを崇拝と言えばそうなのでしょうし、もっと下世話な言葉で言い表すことだって出来そうです。
    だけど言葉に出せば陳腐になる。

    この第五話を共感という形で読み終えるのはいささかの問題があるかもしれません。
    けれど、あえてそういった読み方もあるのだと私は提示したい。
    愛なんて偽りが冠された言葉じゃなくて、もっと陳腐な言葉、つまり恋をしたのですから。

    楽しそうに、嬉しそうに、彼女の口から紡がれる物語を、どこか慄きながらも認めたい。
    つまりはそういうことです。

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