アパシー 学校であった怖い話1995 vol.6 [Kindle]

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  • 2017年4月23日発売
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  • にじり寄ってくる恐怖。

    六人目は細田。
    なぜか六人しか呼ばれていない七不思議の集会においては実質的にトリを飾りますが、七話目に繋げなければいけないという制約もそこそこに効いてくる難しいポジションだったりします。
    そんな事情もあって一~五話は単独でも読めますが、七話は六話あってこそ、その逆も然りというセットになっているパターンは意外と多い。

    で、細田友晴。
    本家ではトイレの怪談を一手に引き受ける形になりましたが、失礼ながら見ての通りの冴えない人です。
    一応二年生に関わらず、人懐っこさと馴れ馴れしさを兼ね揃え一方的に友情を抱いていることさえあるので実のところ一番対応に困る人かもしれません。
    コミックリリーフ的なイメージも強いんですが、一応外見通りに懐の広さや深い知見を見せてくれることもあったりで、他の五人に比べると華が無い分書くのに工夫がいる玄人好みのキャラだと思います。

    反面、独特の距離感が厭らしいのも確かなんですけどね。彼の場合、敵意や悪意をぶつけてくることは稀なんですが、対人距離を一方的に詰めて精神をじわりと削り取っていく無自覚さが怖い。

    で、この話『魅惑のトイレ』。
    「パラレル・ワールド」というシリーズの世界観の中核を占める概念のひとつを前面に押し出した、多分に自己言及的な話です。

    「持てる者」と「持たざる者」。
    「持たざる者」はどこに行こうが「持たざる者」だったという弱者の悲哀が自己嫌悪と、強烈ないじめと共に語られる、人によってはかなり心にクル凶悪な話だと思います。実際、私も再読には苦労しました。

    良くも悪くもぶっ飛びまくった今までの話に比べると、普通の話であることも確かなんですけどね。
    このシリーズが「弱者」に厳しいか、そうでないのかってのは一概に決められませんが、独特のスタンスを取っているようです。
    口が悪いようですが、志を世に残した落伍者を仮に「霊」と呼ぶとするなら彼らについて語ることは冒涜なのか鎮魂なのか? さしずめ答えのでないジレンマなのですから。

    少々脇道でしたが、この話って寄り添われ過ぎて嫌になるくらいには「弱者」の「弱者」による「弱者」のための目線です。嫌でも同じものを見る羽目になります。
    ついでに七話目の舞台を整備して、今までの別次元に吹っ飛んでるような話を同じ土俵に並び立ててきてます。
    目線、距離感、立場の違い、そういったものがすべて勝手に決められていく、わけがわからないけれど不気味な感覚、恐怖の予感を示唆する最後の休憩所。

    だけど、恐怖そのものよりその予感の方が恐ろしいことも、あるのかもしれません。

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