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感想・レビュー・書評
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仲村 渠(なかむら・かれ:1905-1951)。沖縄の詩人。琉球新報による「沖縄コンパクト事典」によれば、
本名・仲村渠致良。那覇生まれ。北原白秋主宰の『近代風景』に参加。詩作を行う。1932年ごろ詩人グループ、榕樹派を結成。戦後は『うるま新報』記者。
とのこと。榕樹とはガジュマルのことである。
仲村渠(読みは「なかんだかり」「なかんだかれ」など)というのは、沖縄に時々ある苗字である。
「村渠」は「村分かれ」の意味で本村から分かれた分村を指すという。読みが難しいため、戦後、仲村や中村に改姓した人も多いようだ。
著者は本名の苗字を分けてペンネームとして使っている。何だか、作家、石田衣良(本名は石平庄一)を思い出す。
青空文庫には35編採られている。
いくつか読むと、何だか生々しい感じのものもあるが、本作はちょっとユーモラス。
銭湯から家に帰るまでを描くごく短い詩だ。
湯の中で、裸で楽しく過ごしたものが、シャツを着て服をまとい、頭髪や髯を整え、眼鏡をかけて、タバコなんかを銜え、いっちょ前の顔をして、帰途に着く。
「祖先が穴居時代なしたやうに」、苗字やところ番地の記された家に帰っていく。
シマウマや豹のような美しい毛皮があるでもない。
仕方なく、さまざまなものをすぽっすぽっと装着して、決められた家に落ち着く。
淡々として、どこかおかしく、読みようによっては文明批評も孕むようでもある。
「沖縄らしさ」を感じるかといえばそうでもないが、視点が鮮烈で「詩人の目」を感じる。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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