- Amazon.co.jp ・電子書籍 (182ページ)
感想・レビュー・書評
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直近のドイツ政治情勢がわかると思うのだけど、わりと筆者の主観が強く見えるので読みづらい点があるかもしれない
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ドイツが脱原発や移民政策を強く押し出すのはなぜか。そして、ドイツの現状はどのように作られたのかを解説する本。
ドイツが現在の人道や省エネを強く押し出す理想国家となったのは、WW2のナチスという過去があったから。その過去によって、ボロボロになったドイツという国は、再び国際社会へ出て行くために、自らの過去を徹底的に否定した。その手段が国際協調などの価値観に重心をおく理想国家というスタイル。この系譜が、現在の観念的な理想論を前面に出すメルケル政権下のドイツにつながっている。
しかし、理想は難民の流入によって現実と向き合うことを強要される。人道という価値観から難民を受け入れるが、受け入れ数は社会インフラの限界付近へと迫った。その結果、社会に歪みが生じる。理想と現実の溝からAfDの台頭という動きが始まるが、メディアと政府の接近やSNS規制法により、既存の政策・・・特に難民政策や脱原発政策への反発を押し進める、AfDの発言の自由が奪われていく。
そこには、理想を追い求めるあまり「理想を否定するものを否定する」という姿が浮かび上がる。言論の自由というのも人類が求めた理想の1つだが、1つの目的の前では違う理想を求める者をコテンパンに打ちのめしても良いという、意見の統合。反対する者がいない社会を目指すメルケル政権が率いるドイツの全体主義的な性向を筆者は指摘する。
社会が1つの方向へ向かっている、という言葉は時に美しくも聞こえるが、このドイツの例を読んだ後では、この状態がある種の危険性を持っていることが理解できる。社会が1つにまとまっているということは、違う意見への封殺であり、その社会が是とする意見から外れる発言が許されない状態でもある。
中庸が一番。理想に燃えているだけだった時のドイツが。2000年代が一番ドイツにとってバランスが取れていた時期だったかもしれないが、難民問題がドイツの理想主義を殺してしまったのだろう。誤魔化しや方針の転換をしない場合、理想と現実の乖離はいっそう酷くなるという現代の寓話。
社会をよくする理想に燃えれば全体主義に、社会の自由を求めれば小さな政府に。ドイツとアメリカが犬猿の仲になっているのもその意味では納得できるかな。 -
この著者はドイツのマスコミにかなり不信感でいっぱいになってる。曰くドイツのメディアはメルケルマンセーで批判的な記事を書かないと。再生エネルギー大成功の話もその文脈での宣伝のようだ。うーん、そうなのかなあ。もちろんこの本に書かれた内容を全て鵜呑みにするというのもちょっと問題がありそうだ。
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