スクラップ・アンド・ビルド (文春文庫) [Kindle]

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  • 2018年(発出2015年) 93 ページ

    第153回芥川賞受賞作。又吉直樹さんの『火花』と一緒に受賞した作品です。

    介護問題がテーマでもあるこの作品、私自身が介護福祉士、ケアマネージャーの資格があり、実父、実母と同居しているので、とても身近で登場人物の気持ちもなんとなくわかるようなお話でした。

    実は作品紹介を見ずに読み始めたので、このタイトルからこの内容だとは全く思いもせずに、とても意外な感じでした。
    物語は同じような場面が多く、浮き沈みのない平坦なお話という印象ですが、なんとなく最後まで読ませられました。

    健康なのだが身体能力の衰えから無気力で「早く死にたい」が口ぐせの祖父。この祖父に穏やかな死を迎えさせてあげようと、祖父の機能を奪って弱らせていくために『過剰な足し算の介護』を行おう考える主人公・健斗。
    一方、健斗自身は筋トレに打ち込んで次第に気力・精力が充実し、行政書士の勉強や英語学習など、脳も含めた己の全身改造に励み、あらゆることを再構築中である。
    この両者の対比を『スクラップ』と『ビルド』で表しているのかな。筋トレも、筋繊維を破壊して新たな筋肉を再構築するスクラップ・アンド・ビルドなのかな。健斗は祖父の姿を見て反面教師にしているのでしょうか。
    健斗と祖父の結末は果たしてどうなるのか? 

    芥川賞作品の解釈って難しい。最近読んだ芥川賞受賞作これで3冊目となりますが、3冊ともに味のある作品でした。

  • 要介護の祖父と同居する失業中の健斗、28歳。祖父は、体の節々の痛みからか、甘えるように「早く死にたい」を繰り返す。「苦痛や恐怖心さえない穏やかな死。健斗は、そんな究極の自発的尊厳死を追い求める老人の手助け」をしようと、必要以上に祖父の身の回りの世話を焼き、体を衰えさせようと画策する。その反動からか、自身は体を鍛え続ける。特に事件が起こるわけでない、何気ない日常が描かれている。

    こういう年寄りと同居したら、確かにイラッとするだろうなあ。こんな年寄りにはなりたくないなあ。

  • 30歳手前の健斗と80代の祖父がマンションの一室という広がりの無い世界で繰り広げる物語の中に、介護、高齢者の生と死の問題、既存の社会システムへの疑問など様々な問題意識がちりばめられていて、深く考えさせられた。

    タイトルにもある「スクラップ・アンド・ビルド」とは「破壊と再生」という意味を持つ。
    作品を読んでいる途中は筋トレによる肉体の破壊と再生に目が行きがちだが、読み終わってみると健斗という一人の若者のビルドには祖父の存在が必要であったこと、そして社会というものもまたスクラップ・アンド・ビルド構造によって成り立っているということに気づかされる。
    ラストシーンで希望めいたものが感じられたのは、若者が新たな境地に巣立っていくという単純な理由だけではなく、スクラップ・アンド・ビルドのサイクルにおいて意味のないものなどない(祖父の人生、介護状態の祖父すらも意味がある)という確信を得られたからだろう。
    個人的には面白かった。

  • 特に何かが起きる訳ではないのに退屈することなく読んだ。
    「死にたい」と口にする祖父。自殺未遂するも、実際には生に執着している。現実はきっとこんな感じ。(自殺未遂が未遂じゃなくなった例も知っているが)
    両親の将来、自分の将来を考える。
    『あらゆることが不安だ』

  • 淡々と自分が嫌な人間であることに無自覚な男の日常が男の目線で描かれている。特に目立ったドラマがないのに先を読ませる力はすごいと思った。

  • 祖父と私の対比が表面に出過ぎており、話がわかりやす過ぎた。故に面白みを感じなかった。

  • かなり前の話題作を今更ながら読了。文学作品としては躍動的でテンポが良く読みやすい。多くの人に共感できるプロットにも関わらず、人物を俯瞰的にしか見れず感情移入が惜しい。

  • 筋トレの描写アツイ

  • 限りなく尊厳死を尊重する家族と葛藤、そして優しさ。

  • 気が滅入る。そんな状況の人もいるのだろうけど、あまりにも先の見込みが明るくないので、読んで疲れてしまった。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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