サッカー界における名将の一人、カルロ・アンチェロッティ。彼の功績についてはことさらあ取り上げる必要もないだろう。
今まで片野さんの著書を読んでいたことやイタリア出身からも巧みな戦術家というイメージを持っていたが、本人が監督という役回り、戦術に関して言及していることで、また新たな印象を持った。
それはまさに人間力というともいうべきマネジメント力だ。
あとでカルロは多くの偉大なクラブで偉大な選手たちをマネジメントしてきた。しかし、特に不和は生まれていない。それは彼のやり方が功を奏しているからだ。
後半にあるインタビューにおいて、他者が語る内容を見てもそうだ。ロナウドやズラタン、マルディーニ、ネスタなど錚々たる人物たちだ。
一方で、チェルシー時代などはやや難しい時期だったかもしれない。それは組織構成上やクラブの文化、オーナーのところでもそうだ。
フットボールを構成する要素をそれぞれ言及している点でも興味深い。特にデータの活用に関しては今後の伸び代があるという点。まだまだ活用しきれていないのは彼のこれまでの結果の積み重ねがデータよりも圧倒的に優れているからに他ならない。
現役時代の話をあまり知らなかったが、彼は稀代の戦術家アリゴ・サッキの中心ピースとして振舞っていたらしい。なるほどそれか。ペップといい、最近の名称は中盤でタクトを握ることが多いものだ。彼の元レジスタのトップとなったピルロもいずれ同じ道をたどるのだろうかとワクワクする妄想を掻き立てるほどに。
本書はとにかく色々な観点でよかった。各章毎にまとめもついているので、さっと見直したい時も良い。
おすすめである
■目次
はじめに
序論
Part1 リーダーシップ・アーク――経験
Part2 本業――文化、階級、人材、仕事場、責任、プロダクト、データ
Part3 始動するための学習――成長、価値
結論
静かなるリーダーシップ:結果
謝辞
選手の語るカルロ――クリスティアーノ・ロナウド
選手の語るカルロ――ズラタン・イブラヒモビッチ
上司の語るカルロ――アドリアーノ・ガリアーニ
選手の語るカルロ――デビッド・ベッカム
選手の語るカルロ――ジョン・テリー
補佐の語るカルロ――ポール・クレメント
対戦相手の語るカルロ――サー・アレックス・ファーガソン
対戦相手の語るカルロ――ロベルト・マルティネス
選手の語るカルロ――パオロ・マルディーニ
選手の語るアルロ――アレッサンドロ・ネスタ