自転車泥棒 (文春e-book) [Kindle]

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  • 主旋律は、タイトルにもある自転車を巡る家族の歴史の物語。
    主人公の、古い自転車に対する愛、熱意は、そのまま著者のものとして強く伝わってくる。
    そして、主人公が自転車を探す過程で知り合う人々の記憶や言葉を通じて、台湾に住む人たちが過ごした20世紀の民族史・民俗史が立ち上がってくる。

    貧しくも逞しかった台湾、日本に統治され太平洋戦争に巻き込まれた台湾、そして、日本を追うように経済成長して豊かになった台湾。
    そして、現住民、自然、動物。
    中でも、蝶の翅を加工した工芸品の挿話や、戦争に利用されたり犠牲となった象たちの数奇な運命は非常に印象深い。

    ここで描かれる百年史には悲哀や辛苦がたくさん詰まっている。
    だが、読後感は優しく、幸福感さえ味合うことができる。
    不思議な小説である。

  • 【台湾からの新風、二〇一八年ブッカー国際賞候補作!】父の失踪とともに消えた自転車は何処へ――。行方を追い、台湾から戦時下の東南アジアをさまよう。壮大なスケールで描かれる大長編。

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著者プロフィール

1971年台北生まれ、小説家、エッセイスト。輔仁大学マスメディア学部卒業、国立中央大学中国文学部で博士号取得後、現在、国立東華大学華語文学部教授。90年代初頭から創作を行い、短篇小説集『本日公休』(97年)で作家デビュー。2007年、初の長篇小説『睡眠的航線』(本書)を発表し、『亜州週刊』年間十大小説に選出された。以降、80年代の台北の中華商場を舞台とした短篇小説集『歩道橋の魔術師』(白水社)やSF長篇小説『複眼人』(KADOKAWA)、激動の台湾百年史を一台の自転車をめぐる記憶に凝縮した長篇小説『自転車泥棒』(文藝春秋)など、歴史とファンタジーを融合させたユニークな作品を次々と発表している。国内では全国学生文学賞、聯合報文学小説新人賞、梁実秋文学賞、中央日報文学賞、台北文学賞、台湾文学長篇小説賞、台北国際ブックフェア大賞などを相次いで受賞、海外では『複眼人』がフランスの島嶼文学賞を獲得、『自転車泥棒』が国際ブッカー賞の候補にノミネートされるなど、その作品は世界的に評価され、日本語、英語、フランス語、チェコ語、トルコ語など、数ヶ国語に翻訳されている。

「2021年 『眠りの航路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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