- Amazon.co.jp ・電子書籍 (606ページ)
感想・レビュー・書評
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視点が人じゃないだけに、正直出だしで挫けそうになる。。逆に言うと、人ではない者を主体にこれだけ色鮮やかに、そして、きめ細かく情景や挙動を表現できるものなのかと後になって感心してしまう。。何というか、アートとしての完成度はずば抜けてるな、、という印象を受けた。
かといって、いつまでも小難しい繊細な書き方で進んでいくわけではなく、途中から徐々に読みやすさも増して、また、なぜか情景もイメージしやすくなる。
それに伴って、ストーリーもすっと頭に入ってきて、主人公マガンダラの生活や変化、その後の展開がどうなるのだろう?と、素直に楽しめた物語だった。
ただ、最後があまりにも急展開すぎたせいか、真実が明かされるところも理解が追いつかず、そうなると収束の仕方も、?となってしまうところが少し残念だと思った。
おそらく人によって好き嫌いが別れやすいスタイルかな、と思うが個人的にはこんな話の作り方もあるのか、と新たな発見ができた作品だった。 -
素晴らしい作品だった。
冒頭で用語の難しさに面食らったものの、すぐ世界観に入ることができ、最後まで一気にページをめくることができた。
異星系に異なる生態系と文化系を構築してしまうことの手法、しかもそれが文学的な(つまり文字ならではの効果を用いて)方法で行われていることに舌を巻く。とともに、単語の選び方とかにも可笑しみがあり、親しみやすい。
やくざ組織的なモチーフなのも、しかしそれは社会集団の本質であることから、むしろこれこそが正解と思わされた。
昆虫的というか、ある種グロテスクな種蘇具たちの描写が続き、人間世界とは決定的に異なる価値観体系であることがこれでもかと描写されつつ、過去に人間との構想があったことが描かれ、「人間はどうなってしまったのか?」という興味を惹かれる。
その上で、種蘇具たちの世界が人間的文化、人間的常識に知らず侵食されていく様子は、冒頭の文化的差異があったからこそ、描写描写のリアリティを際立てていた。この描写が素晴らしかった。
それは外形的な世界観描写に留まらず、自由意志や自己の成立性への自問自答も含めて、『るん(笑)』の著者ならではの深みがあった。
中盤に挿入される「海」で、深海から気の遠くなるような生態系の連鎖を経てついに種蘇具にたどり着く様子も、長い進化を思わせるような壮大さがあり、かつ、それが過去の歴史と重畳して語られていて圧巻だった。この「海」だけでもものすごい読みごたえがある。
こうしてみると相対的には、物語のプロットや「謎」はそこまで起伏のある者、スピード感のあるものではなかったかもしれないが、世界観描写だけで十分に最後まで楽しませてくれる一冊だった。
最終版で惑星の秘密が明らかになるところは一気に宇宙SFになり、若干駆け足感はあったものの、圧倒的スケールがあり悪くはなかったと思う。
ここまで圧倒的な「世界」を作れるのか、ということの参考になった。 -
むちゃくちゃおもしろかった…!節足動物に似た(?)異質な系統樹の生物を視点に展開するアウトロー小説とでも言ったらいいのか、極彩色の生態系と文明の描写に目を奪われているうちに読み終わっていた。ファンタジーを読んでいる時の楽しみに近かった(無理にジャンル分けする必要もないんだろうけど)