15歳のテロリスト (メディアワークス文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 論点はぼやけるが読みやすい
    評価3.9
    audible 6時間59分
    kindle 202ページ
     15歳高一の男の子が新宿駅に爆弾を仕掛ける。彼自身も幼い頃に両親を事故でなくし、その後少年犯罪による火事で祖母と妹を亡くしている。この事件を少年犯罪を追うジャーナリストの安藤が追う。
     15歳の渡辺篤人は少年法の厳罰化を訴え議員にも食って掛かるし、過去の復讐にも囚われている。また、物語序盤ではなんやかんやで少年法の現状についての説明のような記載も多く、少し勉強になる。
     爆弾テロに対する篤人の作戦には驚かされたが、黒幕の動機が少年法の厳罰化だというのはちょっとピンと来ない。こんな動機でとも思うし、確実性にも乏しい。しかも現役の国会議員が票欲しさにこの黒幕だというのはいくらなんでも安直すぎる。
     最後の篤人の訴えは心打たれるものであるが、ポイントが少年法の問題点にあるのか議員が黒幕であるのかを主張したいのかがぼやけてくる。もちろん後者なのであろうがこの場にいることも含めて議員の頭が悪すぎる。 
     ただ自らの身を明かしてテロを防ぎ、命をかけて真実を主張した篤人と常に前向きなあずさには敬意を評したい。少年法の妥当な着地点は僕には分からなはいが、最後の再会にも素直に感動。死んでなくてよかった。

  • 憎悪と赦し、加害者家族と被害者家族、法と報復、少年と重罪… 様々な相反する価値の中で悶え悩む少年少女を通して、とても考えさせられます。。

    まだ頭の中も心の中も整理し切れていませんが、読んで本当に良かったです。

  • 特に期待せずに読みはじめたけれど引き込まれた。
    少年犯罪について考えさせられる良い作品。先が面白い作家さんに出会えたなと思うと嬉しい。
    特に残虐な描写もなく、中高生にもお勧めな作品。

  •  へぇ。松村涼哉は名古屋大学在学中に作家デビューした人なんですね。日本では、元首相がテロリストに銃殺されたり、現首相が漁港で狙われるという事件が起きている。テロリストの心境は、どんなものか。正義や宗教に左右されるのか。15歳のテロリストって、実に先鋭的な題名に惹かれる。少年法の持つ特殊性が、ここでは取り上げられる。本書は随分と社会性のある作品になっている。著者は少年犯罪に関しての著作が多い。
    「新宿駅に爆弾を仕掛けました。これは嘘ではありません」という爆破予告の動画がアップされたことから始まる。うそ、フェイクと思われていたことが、1時間後。1月15日8時17分に、JR新宿駅中央線ホームでスーツケースが爆発した。その予告した動画の少年は通信制高校に通う少年の渡辺篤人で15歳だった。渡辺篤人は、なぜテロリストになったか。それを掘り下げていく。
    15歳の渡辺篤人は、何故、自分の顔を晒して、爆破宣言を動画で流したのか。
     15歳以下の犯罪の実例が出される。自分の息子が、呼び出されてリンチを受け殺されたが、加害者の年齢は13歳。14歳未満なので刑事罰に問えない年齢。加害者は少年院送致の決定。そのやるせなさとふがいさ。なぜ悪いことをしたのに、罰せられないか。
     国会議員比津修二は与党で活躍する。少年法の適用年齢の引き下げを主張している。「未成年は、凶悪犯罪とみなされない限り、非公開のおだやかな少年審判で処され、前科さえ残らない。実名報道もされず、少年院送致が決まっても、長期処置でも原則2年以内で社会に戻ってくる。18歳未満は死刑執行が出来ない。14歳未満に至っては、どんな悪行でも罪問うことすら難しい」
     渡辺篤人は、5歳で両親を交通事故で亡くし、放火事件で祖母と妹の実夕を殺された過去があった。
    逮捕されたのは、富田ヒイロ。13歳だった。タバコを吸って、吸い殻を捨てたのが火災となり、祖母と妹を失った。渡辺篤人は「少年犯罪被害者の会」に顔を出していた。
     新宿駅での爆破が行われた後に、渡辺篤人は「テロを続けます。僕が逮捕されるまで」と動画をSNSに流す。マスコミが、その情報から拡大された情報を垂れ流す。篤人と実夕は、美形だった。死んだ実夕の画像まで拡散される。篤人は、富田ヒイロから、放火事件の真犯人を知る。それが灰谷ユズル。
     少年犯罪を追いかけている記者の安藤は井口美智子というガールフレンドがいた。中学生のいじめの現場に遭遇し、助けようとして殴り殺された。犯人は、灰谷ユズル。14歳。灰谷ユズルを起点として、親しい人が殺されたということで皆つながっている。
     渡辺篤人は、行方不明の灰谷ユズルを追いかけて、妹の灰谷アズサに接近していた。
    一体、灰谷ユズルは、何故、富田ヒイロに放火させるように指示したのか?
    いずれも、14歳という年齢で、罰せられない。が、社会に復帰したときには周囲から白い目で見られる。「少年犯罪」の持つ悍ましさをこれでもかと書き綴る。たいした筆力だ。そして、灰谷ユズルに指示していた男が、明らかになる。なるほど、マッチポンプだ。
     そして、いつの間にか、渡辺篤人は、灰谷アズサを好きになってしまうのだ。少年なのだ。
     少年犯罪の持つ重さとかるさ。それを道具にして利用する国会議員、小説の新しい地平を切り開いている。イジメ、から殺人。そしてテロリストに変身していく。
    日本の底辺での闇は深く、少年たちは傷ついている。どうにもならない感情と復讐。復讐が正義ではないことを知りながら、テロでは解決できないことを知りながら。

  • 先の読みやすい展開だったが面白かった
    小中学校の課題図書になって10代の子達が少年法の在り方について学んで論じてほしい

  • わたしはマニアではないので、ミステリとして優れているのかはわからんけれど、社会に対する閉塞感、それを打ち破る若いエネルギーを感じる作品だった。
    とにかく人物に対する描写が丁寧で、でもくどくはないかんじ。
    モチーフや象徴の使い方も真っ直ぐで、それでいて奥深くてよかった!(ネタバレになるので詳しくは書けんけど)
    ひさしぶりに「若者」をまっすぐに書いた作品に出会えたな〜と爽やかな気分になれましたありがとう!

  • Audibleで。
    加害者家族、被害者家族の感情の交錯が息を呑むストーリー。犯罪の裁きに正解はないけれど、少年犯罪はそれに輪をかけて、誰もが納得できない。
    アズサさんの高潔さが救いですが、、、このキャラクターだけは現実離れしているな、、が正直なところです。

  • 未成年の少年に家族を殺された少年が復讐をする話。登場人物がうまく絡み合っててフィクションとして綺麗にまとまっている話だったなという印象。途中で展開が読める要素が多かったので、先の読めないミステリーのハラハラ感はないけれど誰も報われないような終わり方でなくてよかった。

    星は3.5って印象

  • SNSで知って興味を持って購入した一冊。

    凄く衝撃的な内容。
    いろんなことを考える内容。

    15歳の男の子がなぜテロリストとして行動することになったのか…
    15歳の男の子が抱えているものが大きすぎて…

    読み進めていくとページをめくる手が止まらなくなると同時に切なさがこみあげてくる。

    全てが終わった後には少しホッとするシーンが。


    衝撃的な内容で、とても胸が痛くなるけど、嫌な感じが残らない、少し暖かさの残る一冊。

  • ミステリーかどうかはわからない。社会派。

    少年法、加害者、被害者、その家族と少年犯罪を追い続ける記者の話。

    どうして、テロリストにならなければならなかったのか。
    ページ数以上に中身が濃い、そして重いが一気に読み切れた。

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著者プロフィール

第22回電撃小説大賞で《大賞》を受賞した『ただ、それだけでよかったんです』(電撃文庫)でデビュー。『15歳のテロリスト』(メディアワークス文庫)が発売から反響が続き20万部を超える代表作に。以降、『僕が僕をやめる日』『監獄に生きる君たちへ』『犯人は僕だけが知っている』も発売即重版のヒット作となっている。

「2022年 『暗闇の非行少年たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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