ニコマコス倫理学(上) (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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  • いかに幸福に、いかに心乱されず平穏に生きることができるか、多くのヒントをもらえた、まさに「人としての生き方の問題の書」。

    本を開くたび、フリーズドライで保存されていたアリストテレスの肉体が水分を含んでたちまち蘇り、目の前で倫理学の講義をしてくれるかのよう。
    (偉大な哲人を乾燥食品扱いするのもなんだが…)
    新約聖書よりも古い、二千三百年も前に書かれた講義ノートがいまだに生き残っていることのすさまじさは、まさにこの"ライブ感"だと思う。

    さまざまな時代のさまざまな価値観を持つ人たちに読まれ続け、人間の悩み苦しみに答え続けてきた本だから、鍛え抜かれている。
    古いのに新しい。古いはずなのに洗練されている。
    たった二千円弱の本代を払うだけで、人類史上トップクラスの学者による最高品質の講義を受けることができるのだ。
    どっしりとした、大船に乗ったような安定感が半端ではない。

    もちろん現代の人間は古代ギリシャの人とは社会規範や感覚が違うので、たとえ話にやたらと健康や戦争の話が出てくるところは共感しづらかったり、その結論はどうなのか? と思うところも出てくる。
    しかしそれは目の前にいるアリストテレスに疑問をぶつけて、本の上で彼と議論することができるということだ。
    議論を繰り返すことで、現代を幸福に生きるヒントをみずから見つけていくことができる。

    一番心に残ったのは、勇気、知恵、節制、正義、敬虔それぞれの徳(アレテー)の「中間性」を目指す考え方。
    例えば勇気の徳では「向こう見ず」と「臆病」のちょうど中間を目指すことになる。
    勇気の場合は丁度真ん中ではなく、やや「向こう見ず」寄りに勇気が配置される。
    図で言うとこんな感じ。

    [向こう見ず]←←←[勇気]→→→→→[臆病]

    中間というと高くも低くもない真ん中のレベルを目指す意味にも思える。
    それでは何か凡庸な理論に思え、RPGのパラメータのように単純すぎはしまいかと思っていたが、そうではなかった。
    余分につけ加えるものがなく、取り除くべきものもないという完成された意味だった。
    またそれぞれの徳は独立しているわけではなく「思慮深さ」と共に育っていく。
    (下巻に出てくる)

    そして徳にしても悪徳にしても、すべての行為はみずから「選択」した上で行っているというのも印象に残った。
    そして「選択」は場数を踏んでこそ成長していくということ。
    行為を積み重ねることの大事さを語っている。
    この本を読んだまではいいが、知識としてたくわえるだけで実社会で使っていかないことには中間の徳をそなえた善き人にはなれないのだ。
    間違えることもあるが、その失敗は必ず糧になり、次はよりよく行動できるということを言っているのだろう。

    怒りの超過についての実践が難しい!
    怒るべき相手に、怒るべき仕方で、怒るべきタイミングで、しかるべき程度に、しかるべき時間だけ怒るのが善き人のすることだというが、実際、突発的に発生する何かへの怒りに対して、そんなふうに咄嗟にコントロールすることなど至難の業である。
    そして温和すぎるあまり、怒るべきことに怒らないのも「愚か者」なのだ。

    最善なのは、徳を自分に対して使うのではなく他人に対して使う人。
    正義の徳こそがそれで、正義こそ他人との関係における徳であり、「他人に対して有益をもたらす善」であること。
    正義の徳は、ほかの徳すべてを使用することに相当する。
    節制や勇気は個人の修養の問題だが、正義は他人や社会との間で、優れたふるまいができるかということ。(最低二人につき二項、四つの変数を持つ)

    自己犠牲的にふるまう高潔な人は、独裁者が見せる表面的な優しさのように、裏に何かあるかもしれず、不正の可能性を予測しなければならないこと。
    身を護るために大事なことだなと思った。

  • 幸福(エウダイモニア)とは何か、より深く理解することで善き人になり、この結果として幸福になるためのアリストテレスによる指南書。

  • まだ1/4読んだが、むずいなー

  • 光文社文庫で新訳なのですんなりと理解して面白いという予想であったが、やはりすぐにはわかりづらかった。それは実例が日本のものでないことが大きいように思われる。

  • アリストテレスが教鞭を取ったアテナイのリュケイオンでの講義ノートを基にしたもの。ニコマコスとはアリストテレスの息子の名前。幸福とは何かという考察から徳(アレテー)論について記載されており解説なしでは理解するのが難しい。

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著者プロフィール

なし

「1997年 『天について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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