僕らはそれに抵抗できない [Kindle]

  • ダイヤモンド社
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感想・レビュー・書評

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  • キャサリン・プライス『スマホ断ち』にて本書が引用されていたので読んでみた。一般的にアルコールや薬物などの物質依存症の方が重大視されがちだが、ある特定の行為に依存する行動嗜癖も脳や体、社会生活に害を及ぼす意味では同じくらい危険なもの。価値観や社会環境、利益追求に邁進する大企業、テクノロジーの進歩などが人々を行動嗜癖へ促しているような現代社会では老若男女関係なく他人事ではない。「依存症になるヤツは心が弱いダメ人間」などと思っている人が読めば目からウロコの内容だろう。その仕組みと実態がずらずら並べられていて、覚えのあることばかり、ためになる情報ばかりで面白かった。研究論文の紹介も多いので依存症全体への理解もより深まったように思う。

    世の中思っていた以上に依存症まみれなのだなと。スマートウォッチをして毎日ジョギングに勤しむ人たちは一見健康そうにみえるが、その中には帝王切開の手術を受ける日ですら走ることがやめられないような運動依存症の人も混じっているという。台風が来ても走らずにはいられないのだそう。側からみると滑稽だが当人大真面目なのはスマホ依存も同じか。

    社会の健全な運営そっちのけで使いきれない金を儲けたがる人たちも「金儲け依存症」なのでは?と常日頃疑っていたのが本書によって確信になった。依存症の人にやめろと言ってもやめられる訳がなく、新自由主義が大手をふって金儲けの自由を喧伝する世の中ますます先行き暗い。アル中の父親に破壊される家のような地球だ。

    とは言え個人が行動嗜癖に対処する方法もないわけではないので、本書を参考にコツコツがんばりたい。目標達成志向ではなく、健全なシステムに自分を慣れさせるやり方。これは確かに効きそうだ。自分の意志で物事をなしとげるのではなく、形に自分を合わせてゆくのが治療薬となるところに現代を感じる。これは世間と個人の在り方にも通じてくる。とすれば現代的な依存症は行きすぎた個人主義の産物とも言える。

    ドーパミン中毒にされた猿の実験には色々考えるものがあった。やはり檻に入れられた動物達は苦痛を感じているのだ。ハムスターの檻にある走り車も小動物たちを行動ジャンキーにする話を読んだことがある。動物園で延々と回り続けるクマや象に狂気を感じたのも気のせいではなかった。生き物としての共感を失って、生き物を「もの」扱いすれば当然彼らに苦しみをもたらす。その延長に人間の疎外もある。

    依存症に悩む人間も疎外されている動物と同じく檻に入れられており、生き物として不幸なのであろう。その檻こそが抽象・デジタル思考の優先した不健康な個人主義とすれば辻褄が合う。孤独、依存症、現代テクノロジー、過度な資本主義、みな地続きだなと本書を読んであらためて思う。

  • 行動嗜癖とは何らかの悪癖を常習的に行う行為である。いわゆる依存症とは本書に戻って定義を確認したいが今は手元にない。

    行動嗜癖を構成する6つの要素
    1. ちょっと手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標がある
    2. 抵抗しづらく、予想できないランダムな頻度で報われる感覚(正のフィードバック)がある
    3. 段階的に進歩、向上していく感覚がある
    4. 徐々に難易度がましていくタスクがある
    5. 解消したいが消されていない緊張感がある
    6. 強い社会的なつながりがある

    SNSではいいねがあることで、目標、フィードバック、社会的なつながりがありなかなかやめることが出来ない。

    ゲームは、既視感・既プレイ感のある要素を組み込んだり、ロードを早くして集中させる。徐々に高難易度になることでプレイヤーを限界の状態でプレイさせるような緊張感など様々な要因が相まってやめられないような状態が形成される。

    よりスマホの依存性が高くある現代だが、ワールドオブワークラフト、テトリス、Hotornot(今のマッチングアプリの原型)など古くからこのような問題は起こっている。
    それを防ぐためには何を必要かも最後に記載されているため、それらの依存症に関心がある方なら一度読むことをおすすめする。事前知識は必要なし。

  • SNSなどのテクノロジー関連を中心とした行動嗜癖について解説した本。薬物以外でも人は「やりたくないのに止められない」状態に陥る。なぜ人はハマってしまい、どうしたら抜けられるのか。

    結局のところ、世に出回っている様々なサービスや製品というものは「人がハマるように作られている」わけで、きっかけさえあれば誰もが依存症になると思ったほうがいいのだろう。

    本書では様々な依存症が出てくるが、意外だったのがウェアラブル端末による運動をやり過ぎる人。たいていは運動しなかった人がゲーミフィケーションによって運動し、健康になると肯定的に捉えられがちだ。それがハマりすぎて問題になる人もいるとは。両腕に端末をつけている俺はどうなのか。

    こうやって様々な依存症を見ていると『不道徳な経済学』の「ヤクの売人」の話は納得のいくものではないと言える。あれでは薬物が問題となるのは「法律で禁止することで入手が困難になるため」と書いてあった。しかし現実では入手・使用が容易なものにハマり、生活に支障をきたして不幸になる人々が大勢いる。やはり酒を含む薬物は規制すべきでは。

  • 依存の構造を知り、それが私生活に深く食い込んでいることを知る。
    なんともゾッとさせられる一冊である。

    デジタル依存症の話と同じくらい、薬物やアルコールなど我々が依存症として認識しやすい事例について紹介されている。これがまた恐ろしいのだ。
    その恐ろしいものより高い依存度をもったビジネスが、私達を取り囲んでいるのだ。

    依存してしまう性質を逆手に取って良い方向へ導くゲーミフィケーションの話からもわかるように、テクノロジーが悪いわけではない。
    我々が行動を選びとり、良い方向へ向かうよう意思をもつことが必要なのだ。

  • スマートフォンや SNS などをなぜやめられないのか。
    それら依存しやすいものについてのリスクが述べられています。
    しかし、じゃあどうすればいいの?みたいな部分は弱いように思いました。

  • 有害な行動を繰り返さずにいられない、新しい依存症「行動嗜癖」。スマホ、ゲームなど、身近にあるテクノロジーがもたらす現代病について説いた書籍。

    IT 業界の大物たちは、テクノロジーを広める一方、自分の子どもにはiPadなどを使わせない。その根拠は、次の通り。
    ・依存症は、特殊な人間だけがなるのではない。環境と状況によって、誰にでも起こる。
    ・自分たちが売っている製品は、ユーザーが夢中になることを意図的に狙ってデザインされていることを知っている。

    スマホは使わなくても、その向こうの世界が気になり、目の前の会話に集中できない。そこにあるだけで人間関係を損なう。

    ドラマを一気に何話分も観る、スマホを頻繁に覗のぞくなど、何らかの悪癖を常習的に行う行為を「行動嗜癖」という。これは、薬物などの物質依存症とよく似ている。
    脳の同じ領域を活性化させ、刺激が欲しいなど同じニーズによって深みにハマる。

    行動嗜癖には、6つの要素がある。
    ①手を伸ばせば届きそうな魅力的な目標がある。
    ②予測できない頻度で、報われる感覚がある。
    ③段階的に進歩・向上していく感覚がある。
    ④徐々に難易度を増していくタスクがある。
    ⑤解消したいが解消されていない緊張感がある。
    ⑥強い社会的な結びつきがある。

    行動嗜癖への対策としては、次の3つがある。
    ①子どもは大人よりも依存症になりやすい。よって、子どもを長時間、デジタルデバイスで遊ばせない。
    ②スマホやパソコンを、自分の手の届く範囲から遠ざける。
    ③行動嗜癖を逆手にとる。例えば、子どもが嫌がる歯磨きをゲーミフィケーション(ゲーム化)することで行動を促す。

  • 人が何かの行動に「ハマる」には、以下の要素が原因になるという。

    1. 達成できそうな目標がある
    2. ランダムで報酬がある
    3. 成長する感覚がある
    4. 適切な難易度が維持されている
    5. 未解決の要素がある
    6. 社会的な結びつきがある

    ギャンブルはもちろん、アプリゲームにハマる人も、これで説明ができる。

    自分はずっと前から不思議だったのは、
    「どうしてあんな単純でつまらないモバイルアプリが、大ヒットするんだろう」
    ということ。

    その答えがここにあった。


    本書は、人が依存症になる原因や、その対処法について書かれた本である。
    だがゲームデザインの教科書としても、大変興味深い一冊になっている。

    本来の趣旨とは逸れるが、人を「中毒にする」ゲームの作り方が色々と解説されており、これが面白い。

    例えば、良いゲーミフィケーションには、以下の3つの要素が必要だという。
    1. ポイント制
    2. バッジ
    3. ランキング表

    昨今ヒットするアプリは、これらの要素を非常にうまく取り込んでいることが分かる。

    そして人間は、こういった環境が整ったら、意志の力では抗えないという。
    依存症は、条件が揃えば、誰でもかかってしまうのだ。

    「面白くないけど、中毒のようにやってしまう」ようなゲームが登場することは、良いことだとは思わない。
    利用するにせよ、避けるせよ、このような「罠」を知っておくことはとても大事だと思った。

  • 批判的な意見ではなく、理解しどう扱えば便利になるか、という視点で書いている。
    ポジティブなので読みやすく、勉強になる。

  • 概要
    依存症をテーマとしている。
    依存症=人の持つ欲求への渇望であり、
    ある欲求が満たされない場合に代替えとして
    別な対象物に置き換え。
    欲求には、いくつかのパターンがあり、
    例えば、飽きる、タブーがあげられる。

    ビジネスとして依存症の切り口で考えるならば、
    依存を誘発させる仕組み作りが必要で、
    ゲームの場合は飽きさせないように難易度を上げる
    ドラマに場合ぬは、最後の最後まで謎を隠す等

    所感
    依存の本質を知るには有益ではあるが、
    中途半端感は否めず。
    事例として、ゲーム、ネットフリックス、
    インスタがあげられているが、
    つまりは、依存の度が過ぎる=依存症=悪
    ということではあるが、ビジネスにおいては、
    いかに依存させるか=没頭する=健康的な依存症
    の仕組みを作ることが求められる。

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