月と珊瑚 (文学の扉) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 小学校高学年の課題図書に選ばれた本作。
    ジェンダー、遊郭、貧困、米軍基地、差別…切り込むべき視点がごろごろとある。
    これを小学生が読むのかと思うと、いいぞ、と思った。
    平和な世界しか知らないで生きている子たちが、こうやって日本に残されている課題に向き合ってみるのも、大切だと思うから。

  • 課題図書 高学年

    タイトルは「るなとさんご」

    舞台は沖縄、那覇、新都心小学校

    主人公は大城珊瑚(おおしろさんご)は小学校6年生
    ルリバーというおばあとダイヤという猫と暮らしている
    ルリバーは有名ではないが沖縄民謡歌手
    母れいは福岡で美容師として働いている

    最初の「六年生のゆめ」と題したさんごのひらがなだらけの作文
    さんごはクラスのバカ三人組のひとり
    自分の名前の珊瑚すら漢字で書けない
    でも歌手になるから構わないと思っている
    しかし歌の才能もないと半ば諦めの気持ちも~
    民謡はルリバーに教わっていて、今年の子ども民謡大会に出る予定「てぃんさぐぬ花」を歌う

    同じクラスの詩音は5年生の10月に東京から転校してきた
    まだ沖縄になじんでいるとはいえない
    むしろ、沖縄を受け入れていない?

    詩音の指摘で、漢字の勉強を始めるさんご

    そこからは日記形式、さんごの漢字の成長過程が一目瞭然

    そこにまた転校生泉月(いずみるな)という女の子が転入してくる
    月はオスカルのような女の子

    さんごは月に憧れるが、親しくは慣れないでいる

    沖縄の六月は「平和月間」
    6/23の沖縄慰霊の日
    6/21は平和集会 「月桃」の歌を歌う


    ここから一気に、沖縄の現状に迫る
    戦闘機の音を聞き分ける金城亮
    彼は普天間基地近くの小学校にいたときに、校長先生から戦闘機のエンジンの音を聞いておかしかったら逃げる意識を持つことを教えられた

    「沖縄の六月はきらい」という詩音
    「てぃんさぐぬ花」は、ホウセンカのことで昔はマニキュアのように花の汁で爪をピンクに染めていた
    そのように親のおしえも心に染めなさいという歌

    週に一度は、むかしの沖縄のことばで歌をきこうという日に珊瑚はみんなの前で練習中のこの歌を歌う
    特に月に六月の沖縄がきらいになってほしくないという祈りをこめて

    ジュリ、ゆうかくの女性

    沖縄のいろいろなところを子どもながらに受け止め、向かって行く姿勢がそれぞれの性格に合わせて描かれている

    最後はまた夢
    20歳になった自分を夢見て

  • あまりに内容が重い。これを小学生が文章をそのまま受け止めることができるのか。

  • 沖縄の小学六年生、大城珊瑚が主人公の物語。
    新学期に書いた「六年生のゆめ」の珊瑚の作文は、ひらがなばかり。それを学級委員の詩音に、あなた何年生?とバカにされる。親友のくるみには、「勉強すれば詩音くらいになれるよ、あんな難しい沖縄民謡歌えるだから」と、励まされ、珊瑚は、「かみさま、わたしはちかいます。わたしはべんきょうします。このはすがしさをわすれず、べんきょうします。」と誓う。
    そして、珊瑚は、辞書を引きながら日記を書き始める。

    ベルバラのオスカルのようで、見ると珊瑚のドキドキが止まらない転校生の泉月、優しいくるみ、詩音、一緒に暮らしているルリバーことおばあちゃんと、猫のダイヤなど、周りの人と珊瑚のやりとりが日記を通して綴られる。
    沖縄の文化を背景に勉強は苦手だが、歌が上手で真っ直ぐな少女の日常が描かれでいて読み易い。しかし、その一方で、沖縄の米軍基地問題、貧困、SN Sなど社会問題も描かれる。
    本の最後は、7月に書いた珊瑚の「二十歳の夢」の作文で、成長が実感できる。

  • 六年生の珊瑚は、夢をテーマに作文を書いた。
    ところが、クラスメートの詩音に「ほんとうに六年生?」と言われてしまう。
    詩音の作文を読んでみると、自分の作文との違いにショックを受ける。

    べんきょうをしよう。
    かん字をかけるようにしよう。
    日きをかこう。

    珊瑚は決意する。

    このお話は、珊瑚が書いた日記によって進んでいく。
    読みやすいけれど、沖縄の歴史、戦争、差別、貧困が、六年生の珊瑚の目を通して描かれている。

    授業中不意に聞こえてくる戦闘機の音。
    珊瑚のように昔から聞いている子たちにとっては日常的な音なのに対し、東京からこしてきた詩音には耐えがたい恐怖の音だ。
    六月の“平和月間“は、沖縄の子たちにとって、毎年恒例。米軍が沖縄に上陸して日本軍が全滅させられたのが六月二十三日だったために、慰霊の日として、毎年平和集会を学校で行うという。
    それに参加したくないという詩音に対して、クラスメートの亮が答える。

    「マジ、六月がイヤだった。戦争がきのうのことみたいでさ、わすれたいのにわすれられないから。でも、わすれちゃいけないんだって、気づいたんだ。だって、おれのじいちゃん、ばあちゃんの親せきもたくさん死んだから」

    フィクションだから、今の沖縄の子たちがこのようなことを話してるかはわからないけれど、おじいちゃんおばあちゃんたち身近な人たちから戦争のことを聞かされたり、日々戦闘機の音を聞いて授業をしてるというのはあるんだろうなと思う。

    そして、タイトルにもなっている、名前。

    珊瑚が自分の名前を漢字で書きたくてもなかなか書けなかった前半から、自分の名前に込められた想いを知り、ラストの文章までに行き着くまでを読んでいくと、月が学校に来たことが珊瑚にとってとても大きいことだったということが分かる。

    やはりこの年頃の子にとって、友だちの存在って大きい。この子たちが大人になってまた再開したらどんな感じなのかな、と思わず微笑んでしまうラストだった。

  • 児童向けで読みやすいけれど沖縄を舞台に、貧困、戦争、女性、地域と色々な問題が盛り込まれた作品だった。

    初めの方は平仮名ばっかりで、何故?読みづらいなと思ったけど、それも、演出の一つと気付いたら
    ちょっと本が好きになってくれるかも。

    主人公の日記形式で書かれているのでさくさく読める。
    普段から本を読んでいる子なら、1時間くらいで読み終わるのではないでしょうか。
    読書感想文を書くなら女の子の方が書きやすそう。
    最後に主人公が20歳の自分を想像して作文を書くので、同じように20歳の自分に向けて、今の思いなどを書くのがいいのではないでしょうか。

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著者プロフィール

『さんまマーチ』でデビュー以来『さんまラプソディー』(国土社)『コロッケ天使』(学研)『ぼくのおじいちゃん、ぼくの沖縄』(汐文社)『わすれたって、いいんだよ』(光村教育図書)、ホームレス同然の暮らしをした体験をつづった『10歳の放浪記』や、『月と珊瑚』(講談社)などたくさんの作品がある。作家活動と並行して児童館の館長を務めたほか、埼玉県教育委員会の教育委員、同委員長も務めた。現在、沖縄在住。

「2021年 『シェフでいこうぜ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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