ケーキの切れない非行少年たち(新潮新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  非行少年が絵をうまく模写できない可能性として、ゆがんだ形で認知している可能性があるとした仮説に衝撃を受けた。皆と同じことを見たり、聞いたりしても理解できないと学校や社会で劣等感を感じていくのだろう思う。
     いわゆるグレーゾーンと呼ばれる人たちは、診断の有無に限らず今も昔も同じくらいいたのだろう。人口が増え、大量生産・大量消費の時代だと、それらの人が社会に埋もれても、”ただの”と言っていいのか分からないが犯罪として明るみに出るだけだったのだろう。だが、今後は人口減少で、働き手が不足していく時代。社会の働き手として個人の存在意義が大きくなる中、治療や特別なトレーニングを受けることで活躍できる人が増える可能性があるのであれば、この本の内容がもっと世の中に広がってほしいと思う。子供の異変に気付ける、病院に通うなどして支えることは、家庭内でのウエイトが大きいので。

  • 軽度な(知的)障害に対する社会の取り扱いについて考えさせられた。
    脳の機能の一部が通常の想定している7~8割のレンジに入っていないことで生じる言動が異質ととられ社会から弾かれる。
    この行く先が非行や反社会的な行為に繋がり、更に社会的に抹殺されることになる。

    人はそれぞれが多様でありそれを認めていくべきとの流れがある一方で、ルールや常識を外れた人に対して厳しい社会的制裁も課す世の中。これは必ずしも皆にとってよい方向になっているわけではないだろう。

    7割レンジから外れた人への目線や取り扱い。様々な社会現場において、その存在をしっかり認識して、受入れ・教育に配慮をしていくことの大事さを感じた。

  •  非行にはしる子どもは障害があるケースが多い。空間認識能力に問題があると、正しく面積を捉えることができず、ケーキをうまく等分することができない。

     この本は大ヒットした理由の一つとして、タイトルの秀逸さがあげられると思う。非行少年を上から批評・分析する立場にたたせてくれる点が、ビジネス書購買層のボリュームゾーンである40代〜に刺さったのだろう。

     著者は「コグトレ」という、認知機能を強化するプログラムの運営を行っているようである。

     この本を読み、認知機能とメンタル面には強い繋がりがあると、確信を深めた。教室の生徒さんのアンケートに、精神的に安定するようになった、という旨のコメントが多いのも納得である。

  • 家庭環境によって非行の道の有無が決まることが多いと思っていたのですが、実際は、家庭環境にも左右されることもあるけれど、発達障害、知的障害、それもボーダーのグレーゾーンにいて支援を受けられないまま育った人がそれなりに多いという事実に驚きました。
    IQ検査など様々な検査がありますが、それが高いから問題ないかというとそうでもないらしいのです。
    グレーゾーンの人たちにいかに早く周囲が気づき、支援を差しのべられるかが課題とのこと。
    実例などについても書かれていて中々知ることのできない世界、そして自分の勝手な犯罪者に対するイメージが覆され、内容はすべて興味深かったです。
    やみくもにとにかく矯正!では駄目なのですね。
    再犯を防ぐため、また支援を受けながらも社会に出て暮らせるよう、このような取り組みが全国で広がればよいな、と思いました。

  •  本書によると、認知機能に問題がある子が非行を繰り返すようです。
     文字通り、ケーキを等分に分割することができない子がいるらしい。
     もしかして政治家にもケーキを切れない人がいるかもしれません。
     だいたいやね、税金の使い方が間違っとるんや。
     必要なところに税金がいかず、無駄なところにばかり回っとる。
     意図的なのか本当に分からないのかしらんけど、「ケーキの切れない悪徳政治家たち」やね。
     
    OLDIES 三丁目のブログ
     ケーキの切れない面倒くさい政治家たち 日本亡国論 -
      https://diletanto.hateblo.jp/entry/2022/05/02/200552

  • 少年犯罪の原因の多くは「見る」「聞く」などの認知能力の欠如であるということはとても意外だった。

    事件の報道では加害者を「生まれながらのサイコパス」のように糾弾する論調が多いように思う。
    しかし大切なことは、第二の加害者・被害者を生まないための教育体制を議論することだと痛感した。

  • ・思っているよりも軽度知的障害の人はずっと多い(1クラスに5人くらい)
    ・文字を認識するのが苦手、数を量として捉えられない、体の使い方が下手で運動ができない、コミュニケーションがとれない
    ・学校生活に馴染めずイジメにあう、あるいは虐待を受ける→ストレスから性犯罪、主体性がないので流されて非行に走る
    ・現在の基準ではテストを受けても知的に問題はないとされてしまうことが多い
    ・少年院でも、反省以前に自分のしたことが犯罪であると認識できない

    自分が子供時代にもこういう子は少なからずいた。
    不真面目が原因ではなく、障害のせいだったのかもしれない。
    誰にも気付かれず、1人悩んでいたのかもしれない。

    本来なら守られるべき子達がそのまま社会に出て、不適合になっていき、刑務所へ、というのは本人にとっても社会にとっても不合理。
    受刑者1人に300万の運営費。

    著者の経験では、少年院に入ってきた子が変わるきっかけは、「自己への気付き」と「自己評価の向上」。
    本来なら小学生からサポートしていくべき。
    そのためには学校教育の変化と、大人の理解が必要。
    改めて無知は罪だと感じてしまった。

  • ★「褒める」「話を聞いてあげる」は,その場を繕うのにはいいが,長い目で見た場合,根本的な解決策ではないので逆に子どもの問題を先送りにしているだけになる
    ★変わるためには,「自分への気づきがあること」と「自己評価が向上すること」が必要
    ★子どもの心に扉があるとすれば,その取手は内側にしかついていない

  • 【結論】
    非行少年たちの中には、認知機能に問題がある人がいる。
    読む、聞く、想像するなどの機能が他の人より劣っているため、生きにくさを感じ犯罪に手を染めてしまうパターンである。
    本書は、この現状を伝えると共に解決策の提案を行なっている。

    【詳細】
    前半は犯罪をした少年たちの原因を認知機能の面、知能の面からアプローチしている。
    後半は認知機能をどのようにして向上させていくのか、また非行少年たちの「自己への気づき」「自己評価の向上」をどのように行なっていくのかについて書かれている。

    タイトルの通り、一部の非行少年たちはケーキを等分に切ることができない。それは認知機能(この場合、適切に物体を捉える能力)が他人よりも劣っているからだ。認知機能にはこれ以外にも読む・聞くなどが挙げられる。この認知機能が正常で無い場合、学校では先生から勉強のできない子と烙印を押される、または子どもたちの間でいじめの対象となるケースが多々ある。このようなケースに当てはまる子どもは、あからさまに知能が低いわけでないので、周りから適切サポートを受けにくい。さらにこのような経験をした子どもは社会への生きづらさを感じ、助けを求めるたくても、難しい場合が多い。そして自分より弱い立場にあるものへの犯罪を行なったり、犯罪者グループから利用されるなどで逮捕される。
    このような少年たちは、鑑別所で更生プログラムなどに参加させられるが、そもそも「読む」「聞く」「想像する」などの機能が劣っているため、プログラムの内容を理解できない。
    正確な診断を行なった上で適切な処置を施さないことには、少年たちの更生は望めない。

    【印象に残った点】
    犯罪の一因が認知機能の劣りであること。一般の人が普通に生活している社会でも、彼らからすれば歪んで見えているのかもしれないという点。
    この本では鑑別所の少年たちに焦点を当てているが、「非行少年たちがやる気に目覚める時」が紹介されているところはビジネスにもつながるのではと思った。

  • 知的障害と犯罪の因果関係について、また、知的障害者に対する教育方法と犯罪抑止について、一般的に誤解されていることをわかりやすく説明しています。全体の16%という数字は、我々が生活していくなかで、すごく身近な人もそれに当てはまり、他人事ではないと認識しなければならない、と感じた。

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著者プロフィール

立命館大学教授、児童精神科医。一社)日本COG-TR学会代表理事、一社)日本授業UD学会理事。医学博士、日本精神神経学会専門医、子どものこころ専門医、臨床心理士、公認心理師。京都大学工学部卒業、建設コンサルタント会社勤務の後、神戸大学医学部医学科卒業。大阪府立精神医療センターなどに勤務の後、法務省宮川医療少年院、交野女子学院医務課長を経て、2016年より現職。児童精神科医として、困っている子どもたちの支援を教育・医療・心理・福祉の観点で行う「日本COG-TR学会」を主宰し、全国で教員向けに研修を行っている。著書に『教室の困っている発達障害をもつ子どもの理解と認知的アプローチ』『性の問題行動をもつ子どものためのワークブック』『教室の「困っている子ども」を支える7つの手がかり』『NGから学ぶ 本気の伝え方』(以上、明石書店)、『身体面のコグトレ 不器用な子どもたちへの認知作業トレーニング【増補改訂版】』『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング』(以上、三輪書店)、『1日5分! 教室で使えるコグトレ』(東洋館出版社)、『ケーキの切れない非行少年たち』『どうしても頑張れない人たち』(以上、新潮社)、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社)、『境界知能の子どもたち』(SB新書)などがある。

「2024年 『身体をうまく使えるためのワークブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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