シナリオのためのファンタジー事典 知っておきたい歴史・文化・お約束121 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ファンタジー作品のベースに使われることが多い「中世」という時代。
    それは、実際にはどんな時代、どんな文化だったのかを解説する本。

    感想としては、情報の質・量共に素晴らしいものになっていると思う。

    取り扱う範囲は、時代背景、伝承、武器、宗教、地形、生活、職業……と実に幅広い。
    質も「ちょっとネットで調べれば分かるレベルの情報」の羅列ではなく、きちんと金を取るのに値するものになっている。


    個人的に面白いと思ったのは、「全てには理由がある」ということ。

    ・ルーン文字がほぼ直線で描かれているのは、金属などに彫り込むことが前提のため
    ・中東の人がプレートメイルを着ないのは、暑くて動けなくなるから
    ・当時の建物に柱がいっぱいあるのは、鉄筋がないから支え無しで大きな天井を作れないため
    ・修道院が薬学や料理に精通しているのは、自給自足の生活をしているから

    などなど、言われてみると「なるほどなぁ」と思う事が多い。
    いかに普段、考え無しで物事を見てるのかよく分かった。


    実際の所、これらの知識が創作にどれだけ役に立つのかは分からない。

    大半の娯楽作品では、このような「意外な事実」は、逆に没入感を阻害する可能性がある。
    むしろテンプレート的な「ありがちな設定」を使ったほうが、すんなりシナリオの本筋に入り込めるのではないだろうか。

    それではと言うと、こういった知識の価値は、インスピレーションのためにあるのではないかと思う。

    世界設定とは「矛盾なく世界を説明できるようにすること」だと本書は言う。
    それはつまり、世界の全てに「なぜ?」と問いかけていくことだ。

    魔法の攻撃をかわすために必要な装備は何だろう?
    人とモンスターが交流する世界では、どんな法律が生まれるだろうか?
    冒険者が多いなら、それを支えるために、どのような職業があるだろうか?

    こういった発想から、その作品独自の文化や設定が生まれてくるのではないかと思う。


    本書は、創作の糧にしてもいいし、単純に中世のうんちく本としても十分楽しめる。
    密度の濃い、良い一冊だった。

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著者プロフィール

ソフトウェアエンジニアからゲームライターへ転じ、ゲーム作成に必要な様々な知識を元に、数多くの著作を持つ。主な著書に、『現代知識チートマニュアル』『ゲームシナリオのための戦闘・戦略事典』『図解 組織・結社』『魔導具事典』『幻想生物 西洋編』などがある。

「2019年 『シナリオのためのファンタジー事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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