シナリオのためのファンタジー事典 知っておきたい歴史・文化・お約束121 [Kindle]
- SBクリエイティブ (2019年7月19日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (466ページ)
感想・レビュー・書評
-
ファンタジー作品のベースに使われることが多い「中世」という時代。
それは、実際にはどんな時代、どんな文化だったのかを解説する本。
感想としては、情報の質・量共に素晴らしいものになっていると思う。
取り扱う範囲は、時代背景、伝承、武器、宗教、地形、生活、職業……と実に幅広い。
質も「ちょっとネットで調べれば分かるレベルの情報」の羅列ではなく、きちんと金を取るのに値するものになっている。
個人的に面白いと思ったのは、「全てには理由がある」ということ。
・ルーン文字がほぼ直線で描かれているのは、金属などに彫り込むことが前提のため
・中東の人がプレートメイルを着ないのは、暑くて動けなくなるから
・当時の建物に柱がいっぱいあるのは、鉄筋がないから支え無しで大きな天井を作れないため
・修道院が薬学や料理に精通しているのは、自給自足の生活をしているから
などなど、言われてみると「なるほどなぁ」と思う事が多い。
いかに普段、考え無しで物事を見てるのかよく分かった。
実際の所、これらの知識が創作にどれだけ役に立つのかは分からない。
大半の娯楽作品では、このような「意外な事実」は、逆に没入感を阻害する可能性がある。
むしろテンプレート的な「ありがちな設定」を使ったほうが、すんなりシナリオの本筋に入り込めるのではないだろうか。
それではと言うと、こういった知識の価値は、インスピレーションのためにあるのではないかと思う。
世界設定とは「矛盾なく世界を説明できるようにすること」だと本書は言う。
それはつまり、世界の全てに「なぜ?」と問いかけていくことだ。
魔法の攻撃をかわすために必要な装備は何だろう?
人とモンスターが交流する世界では、どんな法律が生まれるだろうか?
冒険者が多いなら、それを支えるために、どのような職業があるだろうか?
こういった発想から、その作品独自の文化や設定が生まれてくるのではないかと思う。
本書は、創作の糧にしてもいいし、単純に中世のうんちく本としても十分楽しめる。
密度の濃い、良い一冊だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示