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感想・レビュー・書評
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・他の研究者からどう思われるか、なんて小さなことを気にしない語りで真実に迫り自説を述べていて、面白いです。渡辺照宏先生、恐るべし!
渡辺昭宏先生(~1977)による『仏教』は1956年に刊行された。この第二版も第一刷が発行されたのは1974年と古いが、元々「専門学者の批判に耐え得る水準を保ち、学問的に責任を持てることしか書かない」という志のもと「原典の存在するものは、すべて第一資料から直接翻訳し、原典がないものについては、漢訳およびチベット語訳の両方を読んでから訳した」というものを、その後、主としてヨーロッパで著しく進歩した新しい研究に応じて、新しい構想をもとに起稿した、というだけあって、私にとっては、新しい発見が多く理解が深まった。
中でも、私の胸を打ち、真偽を確かめたいという衝動に駆られたのは、548年に南京に到着したインド人学僧パラマルータと、655年に長安に到着したインド人僧侶プニョーダヤの話しだった。
パラマルータが仕事に専念することを切望した頃は、智顗の絶頂期であり、中国人僧侶たちに拒否されたという。
また、プニョーダヤは、厳選した仏典の写本1500部を持参したが、当時は、玄奘の全盛期であり、まったく顧みられず、命ぜられた薬草の採取を果たして長安に戻った時、彼の写本は、既に玄奘によって王華宮に移され手の施しようがなかったという。
天台智顗も、三蔵法師玄奘も、偉人として尊敬されているわけですが、『仏教 第2版』によると、ある意味、釈迦牟尼が捨てよ、と説いた煩悩にかられたのか、自分の地位を脅かしかねない、重要な教義や仏典を携えたインド人僧侶たちを冷遇し、よりピュアな仏教の伝来を妨げた人物だったのかもしれません。