問題解決力を高める「推論」の技術 [Kindle]

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  • 今の時代は、正解がない。ただし未来の可能性がある。その可能性をどう推論するかが重要であり、推論力をつけるべきだという。将来に起きることを予測し、推論する。困難に直面した時に『推論力』をいかす。ビジネスの思考法、分析力、ビジネスコミュニケーション、生産性と提案力を向上させるには、推論力が必要だという。
    結局、顧客が何を求めているのかということさえも、推論する必要があるという。そうでないと提案は受け入れられない。提案とは形のないものであり正しく推論することが必要なのだ。
    なぜ推論力が必要なのか?何をどう考えるかにあっる。①事実を確認する。②問題意識を持つ。③推論する。④仮説を導き出す。⑤仮説を検証する。⑥結論を出す。
    そこの中で、見えない前提、見えない原因、そして見えない未来を洞察で推論していくことが必要なのだ。前提から導かれる結論というビジネスのプロセスにもとづいて、推論を生かすのだ。
    分析とは、事実とは様々な関係性で成り立っているのであって、関係性を読み解く方法論なのだ。
    例えば、100億円投資する案件の場合には、そもそもなぜその投資がいるのか?という前提を吟味する。そして、なぜ100億円がいるのかの根拠を指し示すことが必要なのだ。また、その事業が同のようにうまくいくのかが説明されなければならない。それを予測するための推論がきちんとできていなければ、受け入れられることはない。なぜならば、投資をするには説明責任があるからだ。結局は、相手の期待に応えているのかが重要なのである。
    なぜ推論がいるのか?①モノや情報が洪水していて、差別化がしにくい。②情報の更新のスピードが早い。そしてその情報が解釈できないまますぎていってしまう。③仮説検証がたくさん生まれて、現場が疲弊してしまうからだ。
    著者は、帰納法における推論、演繹法における推論を実例を挙げて説明する。仮説思考ではなく、推論力ということを提唱しているのは、おもしろい。ロジカルシンキング、分析力、問題解決力、提案力、コミュニケーション力を推論力と掛け合わせて取り組むことだ。
    広告代理店の人が真面目だという事例が多く、微笑ましい。
    新たな市場を切り開いたトップブランドは、収益性が高いから、どう展開するかだ。
    推論力を高めて、ビジネスに必要なイシュー思考、クリティカルシンキング、抽象化思考、概念化思考、ラテラルシンキング、コンテキスト思考、アナロジー思考、問題解決思考などを習得することで、さらに「あるべき未来、理想の姿」がわかる。問題解決は「理想の状態と現実の状況とのギャップ」であり、今ある問題の解決ではなく、理想の姿を実現することにあるのだから。
    ふーむ。なるほど。

  • ロジックツリー等、問題解決の技法を推論という切り口で整理し直した本。新しい味方として面白いものの、却って分かりにくくなっているのでは?と感じる部分もあった(特にアブダクションの章)。

  • 広告代理店、外資系コンサル出身の著者による問題解決本。

    生成AIの進化・普及にも負けないヒトの能力として、今後一層、「推論」の技術が大切になるよ~との内容。

    限りある情報から推論を使って確からしい仮説が出来れば、いち早く問題解決に至る事ができる。

    推論を行う大切な考え方としては3つ!①帰納法、②演繹法、③アブダクション。

    アブダクションが一番むずい。。。著者の定義では、「『起こった事象』に対して、『法則』を当てはめ、起こった事象をうまく説明できる仮説を導き出す推論法」。もっと簡単に言えば、「物事・事象の背景を見抜く力」。分かったような、分からないような(笑)。

    例えば・・・
    1.現象:売上が落ちた
    2.これかも?との一般法則:買う人が減れば売上は落ちる
    3.仮説:売上が落ちたのは買う人が減ったからに違いない・・・

    ご覧の通り、限られた情報から推論することになるので、「あ~こういう事象のメカニズムは、過去にもあった、きっとあれだよ、あれ!」との要領で、「決めつけ」「思い込み」になっちゃうリスクも。

    確からしい推論を導く力をつけるためには、「常になんでだろう?と考えることを続けること」「実践の積み重ねでしか身につかない」、つまりこれさえやれば!とのウルトラCは無いとの主張でした!そりゃそうだ(笑)

    演繹法・帰納法・アブダクションの3つの違いは、図や表を使って、もう少し視覚的に説明できる気がする。これは別の著者の別の本に期待^^

  • 社会人として生き抜くのに必要な推論力。

    ・この世のどこかに正解があると思うのは幻想。
    巷に溢れる「正解とされる知識」は全て先人が作り出した「知恵」であり、自分から見れば「単なる先人からの借り物」にすぎない。
    「推論力」で「先人からの借り物」を「未来に向けた知恵」に変えることができる。

    ・「帰納法」「演繹法」「アブダクション」を使いこなせば、「推論力」を手に入れ、自分に自信を持ち新たな可能性を切り拓ける。

    ・「推論力」は困難に直面した際に必要
    ー何かを考えなければならないことは解るが、それが何かわからない
    ー分析せよと言われたが、浅い分析しかできない
    ー伝えたいことが伝わらない
     →相手が何を聞きたがっているかに対し推論が働いていない
    ー締め切りが納期ギリギリになる
     →早い段階できっとこうなるという推論ができていない
    ーなかなか自分の提案が通らない

    ・雲雨傘フレームワーク
    雲が出ている(前提)
    雨が降りそうだ(推論)
    傘を持っていくべき(結論)

    ・帰納法は複数の事実から共通点を見つけて結論を導く推論法

    ・観察力を身につける。
     フォーカスを絞る:テーマを絞り、行動する。例えばSDGsという観点に絞り毎日新聞を読むなど
     視点を持つ:比較の視点、変化の視点。4Pフレームワークの視点
     当たり前を疑う:経験や慣れ、常識や概念、権威や社会的証明を疑う

    ・何をやらせても優秀な人の共通項は、どんな些細な事実からも見えないものを見抜き、それらを帰納法で法則化し、どんな分野にも適用する

    ・成功しやすいビジネスは、市場の拡大が見込め、強い競合が存在せず、自社の強みが発揮できるもの。

    ・確実性の高さは、結論に対する根拠の多さ。複数の事実が一つの結論に向かっている時。

    ・演繹法はビジネスでは予測に使う。

    ・ビジネスの世界で正しいこと
     ー目的、目標、方針、セオリー、価値観・カルチャー、法則

    ・起こった事象に自覚的になれ。同じ生活をしていても、疑問の持ち方や調査など、学びの量に差が出る。

  • - 基礎から丁寧に書いているとも言えるが、論説というより教科書的。
    - 概念や定義の細かい単語で知らないものはあるものの、考え方などは特に新しく感じないというか、まあまあ普通にできてる範囲内じゃない?という感じがして新鮮な発見生えられなかった。
    - ***
    - 「帰納法」「演繹法」「アブダクション」
    - 帰納法は「例外」に着目すると、時代をアップデートし、新たな発想を生み出す種になる。
    - 演繹法は前提の置き方次第で「推論」や「結論」が大きく変わる。/// 前提に対して、 ・True ?(本当か?) ・Anything else ?(他には?)  という二つの視点を持ち合わせておこう。
    - アブダクションで多様な仮説を立てられるかどうかは、あなたの頭の中にある「法則の多さ」にかかっているともいえる。

  • ポイントは、事実と情報量、フレームワークとルール、WHYと深掘りを訓練するのみ

  •  VUCAの時代に必要なのは「推論の『技術』」である。「技術」と呼ぶのは、推論はスキルであり身に付けることができる、というのが中核的なメッセージである本書。

     筆者は、その推論の技術を習得するための思考方法として、帰納法、演繹法、そしてアブダクションという3つの基本的な論理学の概念を持ち出す。

     類書を読むと帰納法や演繹法にはよく出会う一方で、アブダクションを具体例とともに記述する本は少し珍しいように思える。その意味では結構な良書かもしれない。

     個人的には、少なくない部分が学生時代に自分でたどり着いた概念で、そこまで得ることが少なかった。が、頭の整理にはなったし、何よりアブダクションをそれなりに扱っている点は評価できる。

  • audibleにて

  • 2021/01/21 14:48
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    「帰納法」や「演繹法」といえば、哲学や論理学の授業で聞き覚えがあるものの、具体的にはどのように使えば良いのかわからないという人も多いのではないだろうか。哲学や論理学の文脈では、抽象的な方法論として扱われるので、具体的にどんな場面でこれらの方法が役立つのか、なかなかイメージしづらいところもあるだろう。だが、いわゆる「頭の良い人」は、推論の習慣を自然に身につけ、実践している。その思考法を誰でも身につけられる方法論に置き換えたのが、著者が紹介する「推論法」である。
    注目したいのは、帰納法と演繹法に加えて、プラグマティズムの哲学における仮説的思考法である「アブダクション」についても説明されている点だ。いずれも豊富な具体例を示しながら、どのようにビジネスに活かせばよいのか、活用の手順が実にわかりやすく解説されている。しかも、3つの推論法を組み合わせた合わせ技の活用方法まで示されている点は独創的といえるだろう。
    AIの普及により、これから多くの職種が淘汰されていく見込みだ。これまで重宝された、大量の知識を覚え、決められた手順を効率的に行う能力は、これからの時代にはあまり役に立たなくなるかもしれない。しかし、著者が提唱するような、自らの頭で推論し、問題解決に活かしていく力は、古びることない。いつの時代も、新しい価値を創造するうえで欠かせない武器になってくれるのではないだろうか。

    要点1:現在、不確実性の高い環境変化を読み解いた上で、確実性の高い結論を生み出す「推論力」が求められている。この推論力は、ビジネスにおける中核能力となるため、希少価値となりえる。
    要点2:帰納法は、事実から共通点を見出し、結論を導き出す方法である。演繹法は、前提に物事を当てはめ結論を導き出す方法だ。そして、アブダクションは、起こった現象に対して法則を当てはめ仮説を導き出す方法である。
    要点3:これら3つの推論法の合わせ技によって、新たな法則、仮説を発見し、未来を予測できるようになる。

    推論力とは何か希少価値となる「推論力」
    現在は一寸先の未来すら読みにくい時代だ。こうした時代には「今、目の前に見えるもの」から物事を考えるのではなく、「その背景には何があって」「どのような法則が働いて」「どのような未来になりうるのか?」を見抜かなければならない。そのために必要なのは、不確実性の高い環境変化を読み解いた上で確実性の高い結論を生み出す「推論力」だ。
    著者は、推論力を「未知の事柄に対して筋道を立てて推測し、論理的に妥当な結論を導き出す力」と定義し、ビジネスに欠かせない能力だという。
    多くのビジネス活動は、動かせない周辺環境を「前提」に置き、その前提を元に「推論」を働かせ、その推論に基づいて「結論」を生み出すというプロセスで成り立っている。このことから、前提から結論へとつなぐ推論力は、ビジネス思考力の要になるといえる。
    また、推論力は分析力の向上に必須といえる。世の中のあらゆる物事は、目に見える「事実」と、推論でしか捉えられない「関係性」で成り立っている。そのため、何かを分析する際には、事実と事実同士の関係性を、推論で解き明かす必要があるのだ。
    さらには、推論力はビジネス上のコミュニケーションでも求められる。論理に一貫性を持たせることで「伝えたいことが伝わらない」状態を回避できる。くわえて、推論力は生産性の向上や、優れた提案を生み出す際にも必要となる。
    このように、見えないものを推測し、適切な結論を導き出す推論力は、ビジネスで必須とされる主要なスキルを支える中核能力である。洪水のように情報が氾濫する時代において、重要な情報を見抜き、精度の高い解釈をして推論を働かせる力は、希少価値となりえる。

    帰納法事実から共通点を発見し結論を導き出す
    ここからは、推論力の具体的な方法論である「帰納法」「演繹法」「アブダクション」の3つをそれぞれ紹介していく。
    まず帰納法とは、「複数の事実から共通点を発見して結論を導き出す推論法」である。例えば、A社の社員三人は真面目な性格であるという事実を見つけたとする。すると、社員三人とも真面目な性格であるという「共通点」から、A社は真面目な社風だという結論を導くことができる。
    帰納法は、複数の事実から共通点を発見し、全体に当てはめて結論づける推論法である以上、3つの点に留意しなければならない。それは、事実に偏りがある場合、共通点の発見に飛躍がある場合、結論部分に飛躍がある場合だ。
    先ほどの例で、もしもA社にアバウトな性格の社員が複数いることがわかれば、事実の選び方に偏りがあったこととなる。よって、帰納法を扱う際には、常に「選び取った事実に偏りはないか?」「代表性はあるか?」について注意を払わなければならない。
    また、真面目な性格の三人がいるという事実から、「官僚気質な性格」という共通点を見出したとしよう。これは共通点の発見に至るプロセスに飛躍がある。それゆえ、偏った評価となっており、推論に恣意性が入っていると疑われてしまうので注意したい。さらには、真面目な性格という共通点から、「A社の業績は安泰だ」と結論づけたとしたら、結論が飛躍し過ぎだといえるだろう。
    帰納法は、「限られたサンプルから共通点を発見して、それを全体に当てはめて結論を出す推論法」でもある。そのため、推論が飛躍する可能性をゼロにすることはできない。100%論理的に正しい結論ではなく、論理的に確からしさが高い結論という位置づけにとどまらざるをえない。
    しかし、ビジネスの実務で重要なのは、顧客や意思決定者の「期待と納得を追いかける」ことである。帰納法を、複数の事実を元に共通点を「洞察」し、推論プロセスを相手と共有する「コミュニケーションツール」として捉えることで、活用の幅が格段に広がるだろう。

    帰納法の頭の使い方4ステップ
    帰納法を用いる際には、どのような「頭の使い方の手順」が必要となるのだろうか。最初のステップは、「観察力」を働かせて、さまざまな事実に気づくことである。観察力を身につけるためには、関心のフォーカスを絞り、事実を捉える際に変化や比較、フレームワークの視点を持ち、当たり前を疑うことが有効だ。
    次にステップ2では、複数の事実の共通点を発見する。これには2つの方法がある。シンプルに直接的に共通点を見つける「観察的帰納法」と、物事を抽象化して多角的な視点を持つことで、洞察的に共通点を見つける「洞察的帰納法」である。
    ステップ3では、いよいよ結論や法則を見出していく。
    最後のステップ4では、帰納法で得た法則を、アナロジーによって他の分野へ応用する。この法則が他の分野にも当てはまれば、その「法則」は確からしさが高く、かつ応用範囲が広いものになる。
    ビジネスの世界では、「何をやらせても優秀な人」がいるだろう。その共通点は、どんな些細な事実からも「見えないもの」を見抜き、洞察的帰納法によって「法則化」し、さまざまな分野に応用する習慣を持っていることなのだ。

    演繹法前提に物事を当てはめ結論を出す
    演繹法とは、「前提となるルールに物事を当てはめて、結論を出す」推論法を意味する。「演繹的推論」や「三段論法」とも呼ばれる。帰納法は推論の立脚点を「複数の事実」に置く。そのため、例外が存在すれば推論の前提が崩れてしまう。だが、演繹法の場合は「前提となるルール」さえ正しければ、そのルールに対して「当てはまるか?」「当てはまらないか?」の二者択一しかないため、誰もが同じ結論にたどり着きやすいのが特徴だ。ここで、演繹法の典型例を紹介しよう。
    前提となるルール:身長が伸びれば体重は増える。
    当てはめる物事:来年は身長が伸びるはずだ。
    導かれる結論:よって、来年は体重も増えるはずだ。
    この例から、誰もが確かにそうだと思える「前提となるルール」を持ち出し、それに目の前の物事が当てはまるかどうかで結論を出すというロジックで、演繹法が成り立っていることがわかるだろう。
    演繹法を扱う際に留意すべき点が2つある。1つ目は、前提となるルールに誤りがある場合だ。前提が明らかに間違っている場合や、正しいといいきれない場合、導き出す結論にも疑いの余地ができてしまう。
    2つ目は、過度に推論形式にとらわれてしまう場合だ。演繹法は、目の前の物事をルールに当てはめれば、必然的に結論が導かれるという性質を持つ。そのため、ややもすれば「意味」や「内容」を吟味しないまま「ただ当てはめる」という思考になりやすい。よって思考停止に陥らないよう注意が必要だ。

    演繹法の頭の使い方3ステップ
    「演繹法の頭の使い方の手順」は、次の3ステップから成る。最初は、「前提となるルール」を正しく見極める。
    次に前提となるルールに「目の前の物事」を当てはめる。その際、単に機械的に当てはめるのではなく、「そもそも、前提は正しいのか?」「前提は十分に掘り下げられているか?」と疑うようにしたい。前提となるルールが必ずしも正しいとは限らないからだ。
    最後は結論を出すステップだ。演繹法では前提が極めて重要であり、前提が崩れれば、推論や結論がすべて崩れてしまう。そのため、「演繹法の論理が成り立っているか?」をしっかりチェックしなければならない。
    演繹法には、前提が誤っているとすべてを誤るという弱点がある。逆にいえば「前提の置き方次第で、結論はいかようにも変わる」ともいえる。この性質をうまく使用して「徹底的に前提を疑う」ようにしよう。そうすれば、これまでとは異なる発想を生み出せるようになるだろう。

    アブダクション
    新たな仮説を導き出す推論法
    アブダクションとは、「起こった現象」に対して「法則」を当てはめ、起こった現象をうまく説明できる仮説を導き出す推論法である。帰納法、演繹法と並ぶ第三の推論法として、近年クローズアップされている。ただし、帰納法、演繹法とは違って、「新たな仮説を発見する推論法」という特徴を持つ。「アブダクション」の典型例は次のようなものだ。
    起こった現象:売上が落ちた。
    法則の当てはめ:買う人が減れば、売上は落ちる。
    導かれる仮説:よって、売上が落ちたのは、買う人が減ったからに違いない。
    アブダクションには「演繹法」や「帰納法」とは違って、「仮説の可能性を広げたり、掘り下げたりできる」というメリットが存在する。例の「法則の当てはめ」の部分を「商品単価が落ちれば、売上は落ちる」とすれば、「売上が落ちたのは商品単価が落ちたからに違いない」という別の仮説を立てられるからだ。
    では多様な仮説を立てるには何が必要なのか。それは、洞察的帰納法によって、頭の中に「法則」をストックする習慣である。一(起こった現象)を聞いた際に、頭の中にあるさまざまな法則を当てはめ、瞬時に十(仮説)を導き出せるということが、仮説思考の正体だ。
    ビジネスでアブダクションを活用する局面は、大きく分けると、「問題発見と問題解決の局面」「物事の背景の価値を見抜く局面」「起こった現象から法則を発見して応用する局面」である。
    アブダクションにおける留意点は、「演繹法と混同しやすい」ことである。演繹法は「正しいとされる前提」に「目の前の物事」を当てはめることで、今後の予測や検証に使うものだ。演繹法が可能にするのは「今後の推測と妥当性の担保」である。
    一方アブダクションは、「起こった現象」に正しいとされる法則を当てはめて、原因となる仮説を導き出すために使う。アブダクションとは「結果から原因へと遡る推論」であり、「起こった現象に対する原因の把握」を可能にする。このように両者は、目的や使う局面が違うことに注意したい。アブダクションの頭の使い方5ステップ
    「アブダクションの頭の使い方の手順」を紹介する。ステップ1は「起こった現象」に自覚的になることだ。そうしなければ仮説を生み出すきっかけをつかめない。普段から、起こった現象における変化や差、共通点、矛盾、プロセスに気づけるようにしたい。
    物事の変化や差を発見したら、それらを適切な「疑問」に捉え直すのがステップ2だ。これにより、自分の思考をアブダクションへとつないでいくことができる。
    ステップ3では、さまざまな法、理論、フレームワークを「起きている現象」に当てはめて、適切な仮説を導き出す。法則や理論を知らなければ、仮説を導き出すきっかけが作りにくいため、思考停止に陥りやすいので注意が必要だ。
    つづいてステップ4では、「仮説を構造化」して、さらなる仮説を生み出していく。複数の仮説のすべてをツリー状に整理する「ロジックツリー」をつくろう。そうすれば、仮説を生み出す際のモレやダブリを回避でき、仮説検証の優先順位をつけやすくなる。さらには、情報共有やコミュニケーションがスムーズになるだろう。
    最後のステップ5では、「仮説」と「起こった現象」との間にある「因果関係」を検証する。仮説を生み出す目的が意思決定やアクションである以上、現象と原因との間にある「因果関係の強さ」にまで踏み込んで考えることが重要となる。

    帰納法、演繹法、アブダクションの合わせ技新たな法則、仮説を発見し、未来を予測する力
    推論力をビジネスに活かすためには、「個々の推論法の頭の使い方を理解する」だけでなく、「組み合わせて運用する頭の使い方」も身につける必要がある。
    アブダクションは、現象に対して「なぜ?」と疑いを持つものである。洞察的帰納法との合わせ技を使うことで、新たな「法則」や「仮説」の発見につなげられる。また、アブダクションや洞察的帰納法で得られた「法則」に、演繹法を加えてみる。これにより、法則からどのような結論が導かれるか、予測できるようになる。
    このように、3つの推論法の合わせ技を通して、法則を数多く手に入れられれば、「法則の当てはめ」を通して多くの気付きを得られる。すると、あなたが見える世界は格段に広がるはずだ。

    一読のすすめ
    論理的な方法論は抽象的で、数学や幾何学などと同じく難解なイメージを持たれるかもしれない。しかし、本書はそうした意識を払しょくしてくれる良質な入門書であり、推論法をビジネスで使うための手順や、それを効果的に身につけるための方法まで指南してくれる。しっかりと読み込み、日頃から意識すれば、自然と独創的な思考を生み出すための土台をかためられるだろう。本書に紹介されている「合わせ技」の具体例も熟読し、推論という武器を身につけていただきたい。

  • ◆要約
    「推論力」とは、未知の事柄に対して筋道を立てて推測し、論理的な結論を導き出す力であり、帰納法、演繹法、アブダクションの3つがある。帰納法は複数の事実から共通点を発見して結論を導き出す方法で、洞察的帰納法が重要。演繹法は正しいとされているルールに物事を当てはめて結論を出す方法で、前提が正しいかを疑う習慣が必要。アブダクションは起こった現象に対して、法則を当てはめて説明できる仮説を導き出す方法で、自身にストックしている法則の多さによって多様な仮説を立てられるかどうかが決まる。

    ◆ダイジェスト・気になったポイント
    推論力
    ・「未知の事柄に対して筋道を立てて推測し、論理的に妥当な結論を導き出す力」のこと
    ・推論のプロセスは、①事実を認識する→②問題意識を持つ→③推論する→④仮設を導き出す→⑤仮設を検証する→⑥結論を出す
    ・推論の具体的方法には「帰納法」「演繹法」「アブダクション」の3つがある。

    帰納法
    ・「複数の事実から共通点を発見して結論を導き出す」推論法。観察を通して直接共通点を発見する観察的帰納法と、洞察を通して共通点を発見する洞察的帰納法がある。大事なのは洞察的帰納法を通して、見えないものを見抜いて法則化してさまざまな分野に応用すること。一を聞いて十を知る、というタイプはこれが上手い。
    ・帰納法の頭の使い方4ステップは、①さまざまな事実に気づく→②複数の事実の共通点に気づく→③法則や結論を見出す→④アナロジー(類推)を使って、法則を応用する

    演繹法
    ・「正しいとされているルールに物事を当てはめて結論を出す」推論法。そもそも前提は正しいか?を疑う習慣が必要。
    ・演繹法の頭の使い方3ステップは、①前提となるルールを見極める→②前提となるルールに目の前の物事を当てはめてみる→③結論を出してチェックする

    アブダクション
    ・「起こった現象に対して、法則を当てはめ、起こった現象について上手く説明できる仮説を導き出す」推論法。帰納法や演繹法にはない「仮説の可能性を広げることができる」のが特徴。ただし、アブダクションによって多様な仮説を立てられるかどうかは、自身にストックしている法則の多さにかかっている。
    ・アブダクションで仮説を考え、演繹法で検証する、ということができれば、再現性の高い法則を手に入れることができる。

    ◆所感
    ・この本を読む前に「推論の考え方が頭にあるか?」と問われた際に「帰納法・演繹法・アブダクション(のような論理法)がありますよね」と返せなかった。それが頭のなかで分類・整理された点は、この本を読んでよかったと感じる点。
    ・一方で、自分の思考レベルが及んでいないからか、これを読んで自分がこれらの推論方法を使い倒す・使い分けている姿が想像できなかった。もう少し勉強を深めたり、実務を積めば、ちがった解像度でとらえられるようになるのか?

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