都市5.0 アーバン・デジタルトランスフォーメーションが日本を再興する [Kindle]

  • 翔泳社
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感想・レビュー・書評

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  • 歴史を紐解いて、都市の成り立ちを見ていく本。都市の持続可能性を担保する上では、まず都市を人間の拡張の最大形態として捉えることが不可欠である。都市は、人間自らの拡張としてのテクノロジーによって構築される限りにおいては、人間が作り得る、人間拡張の最大形態。

    詳細は下記。
    https://note.com/t06901ky/n/n4aa3e707d765

  • テクノロジードリブンになりがちなスマートシティやSociety 5.0の取り組みに対して、改めて人間中心の社会が重要であることを、歴史を遡りながら都市の変化とともに語っている。都市は人間の機能の延長線上にあるということを心に留めておく事は大切だと感じた。

    サイドウォークラボはトロント市が利益を得られない限り報酬が貰えない成果連動型の報酬体系になっている。更地の開発時には参考になる開発投資の考え方。一方レトロフィット型では難しい。
    ソーシャルインパクトボンドの様に、資金提供者から調達する資金を元手に、サービス提供者がサービスを提供した事で
    事前に設定した成果目標に応じて、行政が資金提供者に資金を償還する成果連動の仕組みもあり、サイドウォークラボはそれに近い。

    グリーンインフラなどマネタイズが難しい領域の示唆として、トークンエコノミーを結びつけ、社会資本主義の経済価値的な仕組みから、自然資本主義の環境や公共的な成果に対する報酬の考え方も面白いと思った。

  • 将来に向けて私たちに求められることは、こうした高度情報技術を、ニーズ志向で、人間中心設計型へと常に改めていく姿勢である。
    (引用)都市5.0 アーバン・デジタルトランスフォーメーションが日本を再興する、東京都市大学 総合研究所 未来都市研究機構、株式会社翔泳社、2020年、207

    MaaS,CaaS,5G,IoT,AI,Society5.0、SDGsなど、近年、私たちの周りには、英数字で表現されたキーワードが並ぶ。これからの社会は、地球規模の視点で、持続可能な世界を構築していかなければならないが、その概念は、欧米諸国によってリーディングされている。我が国を始めとした先進諸国は、少子高齢化の波が押し寄せてきており、これからの都市づくりには、テクノロジー+コミュニティ+サービスを融合させるデザイン機能が求められくる。それらの機能を積み込んだアーバン・デジタルトランスフォーメーション(UDX)のあるべき都市の姿は、黒川紀章氏の言われる「神の都市」、「王の都市」、「商人の都市」、「法人の都市」を経て、いよいよ「個人の都市」へのフェーズに入ったといわれる。そのため、本書では、都市の持続可能性を担保するうえで、まず都市を「人間拡張の最大形態として捉える必要がある」と主張する。つまり、どんなにテクノロジーが進化しようとも、そこにある主役は、「人間」であるということだろう。

    本書を読みすすめていく上で、私は、佐久間象山の「東洋道徳、西洋芸」という言葉が頭に浮かんだ。「芸」とは、今で言う「技術」のことだ。つまり、西洋からの技術を積極的に取り入れるが、あくまでも技術を扱う人間は、東洋の儒教が説く道徳を持って使うべきということであろう。先ほど、近年のトレンドは、欧米諸国によるものと記したが、そのトレンドの核となる高度なテクノロジーを人間中心設計型へと常に改めていく姿勢が求められる。そのことは、少し話が逸れるが、アップルの製品が多くの市場に受け入れられたことにも通ずると思う。アップル創始者のスティーブ・ジョブズは、禅の心を重んじた。禅は、シンプルであり、人に対する思いやりや慈しみの心が宿る。アップル製品は、その東洋人の精神をベースとし、高度なテクノロジーが上塗りされる。その結果、顧客の創造につながり、アップル製品は、IphoneやIpadなど、ヒットを連発してきた。ヒット要因としては、まず、ユーザー(人間)第一主義とし、「便利で、人に優しい」製品の追求であったことにほかならないと思う。それは、都市づくりでも言えることだと思った。

    都市5.0は、「個人の都市」と位置づけられるが、なにも特別なものではない。少子高齢化時代を迎えても、今までより、スーパーや病院が近いなどの生活利便性に縛られない住まい方ができること、また通勤にも縛られない新しい働き方ができること、さらに地域の人々が交わり、精神的に豊かに暮らすことができることなどを目指す。そのためには、社会的課題を解決し、これからも持続可能な社会を構築してくため、高度なテクノロジーが必要不可欠だと説く。

    本書では、AIやIoTを駆使し、自動運転などの最新事例が紹介されている。都市5.0の時代到来に向け、参考になるのは、Sidewalk Labsによるトロントでの取り組みだ。この取組で感心したのは、再開発地であるトロント市に利益が出ない限り、Sidewalk Labsは利益を得られないという金融スキームを構築していることだ。そのため、雇用創出・経済発展や環境保護、住宅供給などの成果指標を設定し、利益を追求する。市の補助金をあてにしないまちづくりというのは、オガール紫波やアーツ千代田3111など、我が国でも主流になりつつある。政府や自治体の補助金に頼らない、民間のノウハウを生かし、民間主導による新たな都市づくりは、今後、プラットフォームの主流になっていくのではと感じた。もちろん、そのプラットフォームには、産学官の連携が欠かせない。様々な業種、横断的な組織、多様化する社会課題を解決するためには、都市づくりに参加するプレイヤーも複数存在することになる。

    都市5.0の時代は、新たな世界的課題を高度な情報技術を駆使して解決し、人間回帰を目指す。本書を読み、私は、もう、既に都市5.0へと着実に向かっている、未来の都市像を知ることができた。

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