スマートマシンはこうして思考する [Kindle]

  • みすず書房
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  • AIの仕組みを自動運転、囲碁、ビデオリコメンデーションの例で示す。
    認識、探索、評価。
    まず画像認識を行い分類する。その中で変化の可能性をツリー化して、探索していく。その深さは、選択肢の数によるが、評価の低いところを削除していって。評価は、常に行い、アップデートしていくビッグデータの使いどころ。評価関数は、いくらでもできるが、それぞれが独立敷いていると良い。

  • 一般向けに読みやすく書かれてはあるが、専門的な技術解説書なので、わかりやすいわけではない。
    ただ、抜群に面白く、この分野に少しでも興味があれば必読だと思うし、処理の過程で内部で生じた幻覚や悪夢、直観など、『息吹』のテッド・チャンが描きそうな題材にも溢れている。
    一見すればすでに人間より賢く見えるマシンも、人間のように外界を見ているわけではなく、近似値を拾っているすぎなかったり、クイズの問題文も人間のように意味を「理解」するよう設計されてなくて、それ無しで「解答」するように設計されている。

    すべては目的を実現するため、人間を打ち負かすために作られているのだから、IT開発の限界だと嗤うこともできるが、そうしたマシンが認識する世界観がこの後どのように発展していくかは、人間の思考法とここまで異なっていると、想像することさえ難しい。
    それとAI技術の発展を牽引しているのは、ハードウェアの進歩もさることながら、それ以上に設計思想の蓄積が大きい。
    自動運転車がハードウェアの問題というよりソフトウェアの問題だと言われる所以である。

    国防総省が軍事車両の自動運転化を目的に、賞金レースを始めたのが2004年。
    100万ドルをかけた最初のDARPAグランド・チャレンジから3年、自動運転車のハードウェアに目立った革新は見られなかったが、その間に車は、砂漠で10キロ強しか走行できないところから、交通量の多い交差点を巧みに操縦しながら、市街地で何時間も走行できるところまで進歩した。
    障害物を回避し、車線を外れないため、画像から道路を「見る」段階から、見た環境について「思考」する段階に到達し、他の車とぶつからず、交通渋滞を抜け、交差点や駐車場で停止するようになった。
    それもこれも、自律走行をソフトウェアの問題として扱う設計思考の転換があったが故だ。

    求められるのは、コンピュータの特性を活かした考え方で、その性質上、複雑な環境で自由に計画を立てることは不得意だが、関数を最小化するような数学的な処理は大得意なのだから、「最良経路を探す」→「なんらかの関数を最小化する(経路のコストを最小化する)」→「どこを通ればいちばん少ないコストで目的地へ到達できるか」というふうな「問題の置き換え」が必要だ。

    他にも大量のデータをただ闇雲に与えて力任せの探索をさせるのではなく、適度に「枝刈り」をしてやらないと、いくら高性能コンピューターでも時間がかかりすぎてしまう。

    カメラの画像から道路を見つけるのにも、独特のレシピが必要で、類似したい画素をグループ化する「クラスタリング」機械学習を説明するのに、著者は「洗濯を終えたばかりの吸血鬼」を例に出す。
    この他にも素早い対応が必要なリアルタイムAIの設計原則では、認識と思考を分け、独立して処理させる必要性を説明するのに、食料品店の別個の仕事に専念した商品係やレジ係、マネージャーを登場させたりと、わかりやすい。
    AIは賢くある必要はなく、ルールをあらかじめコード化して、考慮すべき約束事を限定する「有限状態」も、モノポリを例にとり説明している。

    もちろん、マシンの選択肢を減らし世界を単純化すれば、ルール通りに動くだろうが、それでは環境の変化に即応できない。
    ワインをサーブする執事ロボットが、注ぎやすいように傾けたグラスではなく、テーブルにワインを注いでしまう事態は避けなければならない。
    「認知-計画-行動」アーキテクチャから「服属」アーキテクチャへの転換は、複雑さの度合いも増すが、それゆえにエラー起こさないアルゴリズムではなく、エラーが起こっても良いアルゴリズムが求められるようになった。
    統計的手法を駆使した要素を、よく似たアーキテクチャを介して組み合わせることが進展に不可欠だった。

    映画の好みを予測するネットフリックスのレコメンデーション・エンジンが紹介されているが、こればかりは経験上役に立った印象がない。
    パーソナルなオススメというより、マスに向けた人気順としか感じない。
    星で評価するシステムも、基準の曖昧さもさることながら、鑑賞後に評価が変わる問題をどうするか、難問だ。
    本も読んている間は寝食を忘れるほど没頭していたのに、読了後は不思議と辛口になるものがある一方で、その逆もある。
    本文検索まで行われないと、著者やジャンル・タイトルからだけでは読み込ませるデータも物足りないのだろう。
    真にAIが次に読むべき本をパーソナルにおすすめできて、それを読んで「面白かった。ありがとう」と言える日はやってくるのだろうか?

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著者プロフィール

自称「機械学習geek」のソフトウェア・エンジニア。プリンストン大学にてPh.D.(コンピュータ・サイエンス)を取得後、テザ・テクノロジーズ社(Teza Technologies)のエンジニア、および、グーグル社(Google)機械学習&データサイエンス・チームのエンジニアリング・マネージャーを務める。『スマートマシンはこうして思考する』(MIT Press, 2018, 依田光江訳、みすず書房、2020)が初の著書。

「2020年 『スマートマシンはこうして思考する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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