- Amazon.co.jp ・電子書籍 (318ページ)
感想・レビュー・書評
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あらすじ…
東京で小劇場の脚本・演出を行うタケシ、24歳。
強すぎる自意識を作品にぶつける日々の中、地元の福岡にいる父から突然自らの余命が3ヶ月であるという連絡を受ける。
幼かった頃あまりにもソリが合わなかった兄ミキオ、父の新たな伴侶である大和さんと連子の翔、そして中学生の頃父と離婚し、一緒に暮らす期間が長かった小説家の母。すっかりバラバラになっていた4人家族は、父の闘病を期に少しずつ関係性を変えていく。タケシはやりたい演劇と任される仕事とのギャップに苦しみながらも、自らの成長を通して少しずつ納得のいく作品を生み出していく。
作者自身が劇作家だからなのか、場面展開とその対比がとても鮮やか。
タケシの初めての彼女となる緑とは、共に過ごす食事の場面が一つ一つターニングポイントになっているし、「グレーな」エステでお世話になる女の子とは、同じ場所で同じことをされるはずなのに、情けなくも笑える1回目と違い2回目のタケシの痛々しさと言ったならない。実家では母が朝食を整然と並べるのを待つだけなのに、東京の中華料理店では新しい小説のタイトルに悩む母に脚本家として専門的にアドバイスする。
数え上げればキリがないのにとても自然に描かれていると思う。
毒親、という言葉を最近よく見かける。そうした家族関係に身を置かなかった自分には想像したことのないような、逃げ場のない辛さがあるらしい。一見オープンでフラットになった今だからこそ、家族という関係性は閉鎖的になりやすいのかもしれない。
それでも、一人一人が自らの運命を切り開く中で家族関係も変えていける。そうに違いない、そうであってくれ。
「またね」という言葉に希望があるし、救われる人は必ずいる。そう感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示