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感想・レビュー・書評
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ここ数年、1970~80年代の少女マンガを担った作家たちが、来し方を振り返る本を出す動きがある。
竹宮恵子の『少年の名はジルベール』(これは文章によるエッセイだが)あたりがその嚆矢だろうが、今年は笹生那実の『薔薇はシュラバで生まれる』という傑作コミックエッセイも誕生した。
そして本書は、『純情クレイジーフルーツ』で知られる松苗あけみが、マンガ家としての歩みを振り返ったコミックエッセイである。
内容は、デビューに至る軌跡と、70年代末から80年代に至る活動初期のエピソードが中心。
赤裸々な舞台裏話の数々が面白いし、松苗あけみと縁深い一条ゆかりと内田善美のエピソードがふんだんに登場するので、一条・内田ファンも必読だ。
とくに、内田善美は引退状態の「幻の作家」であるわけで、本書は内田についての貴重な資料にもなるだろう。
また、登場は少ないものの、故・吉野朔実とのエピソードも印象的だ。本作の最終ページに置かれた次のようなつぶやきが、胸に迫る。
《『ぶ~け』の憧れ吉野朔実先生
最後にお会いした時に握手できてよかった…
形見として偶然いただくことになったバラの図鑑、ずーっと大事にするからね。》
全編にちりばめられた軽快なユーモアは他の松苗作品と共通だし、舞台となった時代を肌で知る人には楽しめる本だ。
なお、本書では松苗あけみ本人が一貫して非モテ・デブスキャラとして描かれているのだが、そのことに私はビックリした。
当時、いろんな雑誌に載った写真で見た松苗あけみには、「華やかな美人マンガ家」というイメージがあったからだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一条ゆかりは全作品を読んできたので、とても可愛がられていることは知っていたが、そのいきさつが描かれており、楽しく読む気持ちと、裏話がでるほどに時間が経ったのだなぁという気持ちと。
吉野朔実さんの形見分けのエピソードが素敵。 -
笹生那実「薔薇はシュラバで生まれる」を読んで間もないので、合わせて楽しめた。一条ゆかり、内田善美など実名で登場する作家が少ないのが多少物足りない。
元・少女漫画家でなく現役と思うが…ご本人の認識は異なるのか?謙遜か? -
私はこの方の漫画を読んだことが恐らくない。ただこの本をたまたま手にする機会があり、目を通した。
実際この人の絵は上手い。イラストの背景など、すごく上手い。だからこそ編集者さんが見離さなかったのだろうが、当時はそこまで繋ぎ止めておくほどに少女漫画を描ける人間が少なかったのだろうか、というような内容で筆者の当時の様子が描かれてる。
ので、「謙遜して描いてまーす。でも当時からの私の実力も知っておいてよね。」というスタンスで、読み手に「謙遜しすぎですよ、絵もお話も超上手いじゃないですか!」というツッコミをもとめてかいているのだとしたら、胸糞悪いな、とおもってしまったりしました。ごめんなさい。私の性格も相当悪いです。「も」。 -
松苗あけみさんの自伝的マンガ。
びっくりするのが、こんなにストーリー作るのが苦手な人がマンガ家できるのか!ということ。驚くほどストーリー書くの苦手(と本人は語っている)。そこからマンガ家としてやっていけてるのはすごい。どうしてるんだろ?
過去作品を読み返したくなるとともに、この隙間を埋めるような装飾過多な画面作りは松苗あけみさんならではだと懐かしい。