- Amazon.co.jp ・電子書籍 (197ページ)
感想・レビュー・書評
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正直なところ、少し期待外れだった。
十数年前に『名前のない女たち』を読んだことがあるが、そのときはその生々しい描写に思わず引き込まれてしまった。
それと比べると、本書はAV女優の販促インタビューのような印象を受けてしまう。
なぜなのだろう?
その理由のひとつは、「家族」へのインタビューがまったくなく、家族の反応はすべてAV女優本人から語られるだけということだ。
これでは、家族がどのような反応をしたのか、ときに葛藤があったのかなど、生の声はまったく伝わってこない。
もうひとつは、AV女優本人へのインタビューと捉えた場合、家庭環境や本人の考え方を含め、かつて『名前のない女たち』から伝わってきたようなドラマが感じられなかったことだ。
昔は経済的理由だったり、イジメや家庭環境から情緒不安定になり、その結果AV業界に入るというケースが多かったという。
しかし、そこに対する情報が氾濫し、(言い方は悪いが)同じようなケースに驚きがなくなってきてしまったということかもしれない。
また近年、AV女優になる方自身の仕事に対しての取り組み方が変わったこともあるだろう。
かつては、もしかすると悲壮感を持ってその道を選ぶことが多かったかもしれないが、近年ではそのような方は減ってきているという。
本書に書かれているが、「経済的に追い込まれてAVに出演」以外の理由が増えているらしい。
つまりドラマ自体が薄いともいえるかもしれないし、また違うドラマがあるのかもしれない。
ただ、もしそうなのだとしたら、もっと「違う理由」を深堀りしてほしかったという気持ちもある。
テーマとしては興味深いが、全体的に薄味の本だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前、犯罪加害者の家族のルポを読んだ。AV女優と犯罪者は全然違うが、家族としては、少なくとも初めて事実を知ったときには悩ましい思いがあったのではないかと推測するのだが、本書に登場する限りでは、何も言わないとか、最初は戸惑ったが応援してくれてるというような話ばかりが出てくる。
読み進めるうちに気付いたが、本書は、AV女優本人のインタビューで、家族の態度なども本人を通じて語られている。そのせいか、家族の感情に深みやリアリティがなく、いかにもさらっと語られていて、そこに対する著者の深堀りもない。タイトルが「AV女優の家族」なのに、家族の肉声が感じられないのだ。たしかに、登場するAV女優それぞれの人生には起伏や波乱があって、そこには各人のドラマがあるが、表面をなぞっただけのインタビューにどれほどの価値があるのかという気がする。