リーダーの仮面――「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • プレイングマネージャー脱却本として購入したが、結論からうと「ハズレ」だった。

    「識学」という意識構造学を推進し、自身も同名の会社の代表を務める筆者が、識学をもとにしたリーダーシップの考え方をまとめたもの。

    筆者は、会社は仕事をする場所=組織は事業を成功させることと目的として人を集め、個人は生活をするための資金を稼ぐことを目的として会社に所属しているということを大前提とし、上司と部下の関係は仕事上のパートナーであり家族や仲間ではない、という原則を厳守するということに非常に重きを置いている。

    「リーダーの仮面」という衝撃的なタイトルにある通り、いちプレーヤーとして評価を得た人間がマネージャとなるためには、個人としての感情を捨て、組織にとって最もメリットが高まることは何かを第一に考えて行動すべき仮面をかぶった別人として行動すべきだと訴える。個としての生活はプライベートにあり、個人の感情や考え方は一切職場に持ち込むべきではない、としている。

    私がハズレだと表現した理由は、まさにここにある。これについては後述する。

    この本の中では、識学の考え方に基づき、優秀なリーダーとなるためには以下5つの観点を軸にマネジメントを行っていくべきとしている。

    1.ルール:空気ではなく言語化されたルールを作る
    2.位置:対等ではなく、上下の立場からコミュニケーションする
    3.利益:人間的な魅力ではなく、利益の有無で人を動かす
    4.結果:プロセスを評価するのではなく、結果だけを見る
    5.成長:目の前の成果ではなく、未来の成長を選ぶ

    これらがそのまま章立てになっており、それぞれ解説編→実践編といった順番で展開されていく。

    確かに、ルールを明文化して全員に共有する、とか、作業内容は明確にして期限を切って依頼するといったところなど賛同できる部分も多いが、これらはいわゆるリーダー本には大抵載っている内容であり、真新しさは見当たらない。

    一方、私がいるようなITのエンジニアリングの現場、特にシステム開発の世界においては、本書において推奨されている以下のような考え方はまったく通用しない。こんなリーダーがいたら、即刻外されるだろう。

    ・個人に与えるゴールが明確な数値目標であり、その個人の成績を定量化して見える化しチームメンバーに共有さえすれば、自然に競争心が生まれ切磋琢磨する。
    ・個人の失敗を体験させるために、期限とゴールだけ伝え結果を求め、手段は問わないしそこまでに行った過程についても一切評価しない。
    ・努力することや工夫することは本人の担務だから、そこについてリーダーは口を挟まない。
    ・成果を達成したことを一緒に喜ばない。

    アジャイル開発の現場にいると、業績や成果はチームに帰属するものであり、いち個人の成果だけで判断したりしない。これは一個人の能力を評価しないのではなく、チームメンバーの得手不得手を把握し、チーム全体としての総合力を測り、足りないところはメンバー同士でカバーしたり、あるいは全員に学習の機会を与えてベースラインを上げたり、ビルドアップのための時間をリーダー自らがマネージして与えたりする。
    チームの成長と成果を個人の成長とつなげていくのがアジャイルの世界におけるリーダーの役割であり、メンバーもチームとしての成果を最大化するために自分に何ができるかを考えて行動する。リーダーはメンバーの成長とチームの能力を最大化するために環境や場作り、体外交渉まで行う。これがチームビルディングであり、いち組織として戦うために必要なサーバントリーダーとしての役割だ。

    「識学」と言われるものが何なのか、私にはよくわからない。が、筆者が「リーダーの仮面」と表現したように、識学におけるリーダーが、感情を持たず、ゴールと期限を定め、OJTや細かい指導はせず、メンバーが経験した苦労や過程を見ず、結果だけを評価する存在なのだとしたら、社員は会社に対するエンゲージメントを全く持たずに、単に金を稼ぐための場所として捉えてしまう。次のリーダーになる人も、この機械人形のようなリーダーを見て、同じようなマネジメントをしていくことになる。これで健全な企業経営は成り立つのだろうか?

    社会人にとって仕事をしている時間は人生のうち起きている時間の40%以上を占める。その40%を時間をこんな殺伐としたやりとりしかしないリーダーと過ごすことが、社員にとって幸せなことなのだろうか。少なくとも自分が会社を経営することになったとしても、この本で定義されているようなリーダーには絶対になりたくない。

  • 初めて部下を持つことになったリーダーはもちろん、上司に指示される部下にとってもおすすめの一冊。
    組織をマネジメントする上で必要な5つのポイントを分かりやすく解説してくれます。
    私はまだ部下がおりません。しかし、上司のどこに不満があるのをこの本のおかげで言語化できました。
    会社も部下も成長するマネジメント法を学びたい方は是非読んでみてください。

  • チーム員を率いていくために念頭におくこと、実践するべきこと、を新しい視点で提示してくれており、自らの考えを新たにする上で、大変に参考になった。
    過去のマネジメント手法を真っ向から否定するアプローチは、非常にわかりやすかった。記載していること全てに賛同するわけではないが、多様化する人材をまとめる上では試行してみる価値はあると感じた。
    ただ、マネジメントをやっている当人がこの手法で満足感ややりがいを得られるかどうか?それが無ければなかなか持続するのは困難とも思えた。
    個人的には丹羽さんの「部長って何だ!」の昔ながらマネジメント手法の方が「好き」ではある。

    • saito sasukeさん
      昨今自分が考えていたマネージ(どちらかというと管理しないで自由にやらせる)とは方向性が異なる方法論だったので少し戸惑い、抵抗感はありましたが...
      昨今自分が考えていたマネージ(どちらかというと管理しないで自由にやらせる)とは方向性が異なる方法論だったので少し戸惑い、抵抗感はありましたが、読み進めていくにつれ、これに則っていくと職場の不要なストレスがなくなるような気もしました。色々と考えさせられる本でした。
      2021/03/01
  • ・プレーヤーとしての能力は30代をピークに落ちる
    ・出世しないと逆に辛くなる
    ・雰囲気が良くなるから成果が出るのではなく、成果が出るから雰囲気が良くなる
    ・リーダーが部下と同じ立場になると、やがて空気を読むだけの調整役、役に立たない上司になる
    ・姿勢のルール設定は後から確認できるようにメールや紙で知らせる
    ・上司が相談に乗っていいこと2つ①部下の権限では決められないことを決める時、②部下が自分で決めていい範囲なのか迷った時
    ・報告は締切を設定して部下からさせる、細かく上司が確認しないこと
    ・会社で評価されない人が社会から評価されることは滅多にない、会社にうまく使われることを意識した方が成長が早い
    ・言い訳に逃げないように部下の報告からは淡々と事実を確認する
    ・仕事の価値観を伝えて心を動かそうとするのは逆効果、仕事の意味や価値観は自分自身で見つけるもの
    ・部下が未達の時は言い訳はスルーし「次はどうしますか?」「具体的にどう変えますか?」と問い続ける
    ・仕事ができる人は「評価者(上司)が求める成果を出せる人」
    ・プロセス重視の弊害が残業アピール、プロセスを無視するリーダーの仮面が必要
    ・残念な経営者は上の階層の人たちが数年で逃げ切ろうとして長期的な視点に立っていないこと
    ・良いリーダーの言葉は遅れて効いてくる

  • リーダーになって間もない部下が選んで、一緒に読むことになった本。
    まあこの本はレビューを見るに賛否両論があるようだけど、自分的にはとても納得のいくもので読み返したい1冊にはなりましたね。
    うちの会社が今やっている、1対1の面談とか、多面評価を全面否定しててわろたw
    まあ俺もいらねーなと思ってたので共感。
    いや面談とか必要な時もあるけど、やればいい感じになるでしょって全社的に強制的に定期的にやらせるもんじゃねーだろって話ですね。
    あとは、「あれどうなった?」って上司が部下に聞いちゃうのは、上司のマネジメントがダメって話も納得。どうしても、「なんであいつこまめに報告してこないんだ」とか部下のせいにしがちだけど、実は違うという(正確にいうと、それができる人もできない人もちゃんとルール化したら部下の特性に関係なく皆がきちんと動けるって話し)。
    といったもろもろのことが納得感あった(鵜呑みにするわけではなく相手や環境によってブレンドは必要)。
    珍しく★5です

    • yoshio2018さん
      会社員時代、one on oneとか360度評価とかありましたね(遠い目)。
      会社員時代、one on oneとか360度評価とかありましたね(遠い目)。
      2022/08/30
  • (他でも投稿してるため、文体がばらつきます。)

    まだプレーヤーとして半人前もいい所ですが、マネジャー層向けの情報商材にビジネスモデルとしてもコンテンツとしても関心があり手に取りました。組織コンサルティングを提供する「株式会社識学」のceoが書いています。最近丸の内線の電車広告をジャックしたらしいので、目撃者は情報ください。笑

    ◯論理で直感を磨く
    僕は生来的に論理よりも直感派で、20歳になってからあまりのバランスの悪さに危機感を覚え、以来調整をしながら生活をしています。
    どっちが大事かではなくどっちも大事という話ですが、論理を詰めた先にある直感にしか価値はなく、勉強を怠った末に出したなんとなくは得てして無価値でした。
    ・部下のモチベは無視
    ・自由放任よりもルールで縛れ
    等々、直感に反する主張が紹介されていますが、論理を紐解くとどれも納得感があり、知らない領域は素直に勉強するべきと再認識させられます。

    ◯ゲームルールにアンテナを張る
    ルールの変化にいつまでも気づかない<痛みとともにルールの変化に気づく<怪我する前にルールの変化に気づく
    右側に行きたいよな。。。
    このアンテナを鍛えるには、要所要所で立ち止まって考える心の余裕が案外重要だと思ってます。

    ◯プレーヤーこそ視座を上げるべき
    この本を手に取る人の多くはマネジメント階層の方だと思います。しかしこの本を読んだときに最も今いる環境で差をつけられるのはプレーヤー階層なのではないでしょうか?
    自分の上司、ひいては組織がどういう論理に基づいて動いているのか(動くべきか)を知っておくことは、文字通り階層構造の末端であるプレーヤーの視座を高めることに直結し、多くの恩恵をもたらしてくれるはずです。

    • こまつなさん
      おっしゃる通りと激しく同意します。
      おっしゃる通りと激しく同意します。
      2023/01/31
  • 初めて課長になるタイミングで、どのようにやったら良いかわからなかったので読んだ。

    部下と仲良くならない、プロセス管理ではなく結果管理を、課題を達成した部下を褒めすぎない(当たり前のこととしないと、部下の目標達成のハードルが下がる)など、具体的、現実的に使える考え方が示されてとてもよかった。

    これを軸にやっていこうと思う。

  • 結構良かった。
    いや、かなりの部分はドライでいいんですよ、ほんと。

    もしマネージャでなければ、逆に自分がこれでマネジメントされてたらどうか?、という読み方するといいと思いますねー
    まぁ、自分の場合はアリだと思いました!

  • リーダーは部下から冷たいと思われるかもしれないが、毅然とした態度を取るべき。

    言い訳をさせない、する必要がない環境をあらかじめ作っておくことが大事。

    社会人なら必読かもしれない。
    なんなら若手社員が読んでも新鮮で面白いかも。

  • ※27歳、社会人4年目。ベンチャー勤務。イチプレーヤーからマネージャーとかも意識しだしたくらいでの書評です。

    ◆総評:かなり参考になるけど、思想の偏りが強め。
    自分みたいな新米リーダーがこれ1冊をバイブルにして世を渡ると痛い目をみそう。
    他人に甘い性格の自分にとっては影響力の高い本でした。これくらいドライに結果を見据えたコミュニケーションも重要だなーと。
    ただ、人として嫌われたくない自分はややアレルギー。
    →「オン」と「オフ」を明確につけて緊張感を持たせるところは持たせるとか、バランス持って行動に移したい。

    ◆要点:
    ・リーダーは「仮面」を被り、部下のマネジメントにおいては感情論を排除するべき。
    ・飲みニケーション・1on1等は基本的に否定派。
    ・「ルール」「位置」「会社の利益」「個人の成長」「結果」にコミットしたドライなコミュニケーションを実施すべき。
    →上記5点にコミットすることで、会社にメリットが生まれその延長線上に個々人の利益が生まれる。
    ・上司-部下間の「ほうれんそう」においては、言い訳や感情を排除する。目標を達成した時→褒めない(目標達成は当たり前)未達→叱るでもなく、「次はどうするか」を定量・具体的に報告させる。
    ・距離感をもつことにより、上司に対して部下は
    「冷たい」という印象をもち最初は否定的になるはず。
    でも結果が出る、スピーディーにことが進むことにより長い目でみてポジティブに転ぶはず。
    →最初は苦しいけど、「仮面」をつけようね。

    ◆行動に生かす点
    ・メンバーの事情・感情に耳を傾けない。
    あくまで、結果に対して評価を下しネクストの具体化を自発させる。
    ・上司-部下間の「位置」は守る。(業務中は)
    →指示出すべきところ(上るべき山)は明確に自分がおろす。プロセス(山の登り方)は自分で考えさせる。
    ・ドライに言い切る

    ※仮面は確かに必要。自分みたいな人間はとくに。わかるはわかるけど、たまに飲みに行って・ランチの時くらいは外す柔軟性は持ちたいなーと。

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