患者の話は医師にどう聞こえるのか――診察室のすれちがいを科学する [Kindle]

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  • ストーリーを語りたい患者と原因を特定し、早く問題を解決したい医師。

    デフォルトから食い違う患者と医師のコミュニケーションのあり方を通して、その本質をあぶり出す。

    コミュニケーションとは、相手の話を聴くこと。
    オーケストラからオーボエの音だけを聴くように。
    聞き手は、共同の語り手なのだ。聞き手次第で語り手の話ぶりは変わる。

    それを邪魔するのは、自分自身の偏見だ。まずは無意識の偏見を認めることから始めよう。偏見というフィルターは、自分が思ってる以上に頑固だ。

  • メモ:患者に好きなだけ話して貰っても、実はそんなに時間はかからない。医師も信頼関係の構築が困難と判断すれば、治療から手を引くこともありうる。

  • アメリカの内科医であるダニエル・オーフリ先生が、医師と患者のコミュニケーションの問題を分析した一冊。

    具体的なエピソードも豊富に盛り込まれており、ページをめくる手がなかなか止まらなかった。

    本書が推奨する、医師と患者の効果的なコミュニケーションの方法論は、非常にシンプルで
    ①患者の話に注意を向けて集中すること
    ②少しの間だけでも黙って患者の話を聴くこと
    の2つだ。しかし、これが案外かなり難しいことだと医学生や医師は思ってしまう。私を含めて。

    しかし、医師と患者の情報の非対称性と、関係の不平等性はそう簡単に解消できるものではないからこそ、歩み寄る気持ちを医師が持たなければ、患者は不利益を被ってしまう。
    患者は医師と比べて圧倒的に不利な立場にあるため、医師が率先して配慮に努めるべきだという論理に、読んでいて大きく賛成した。

    コミュニケーションがおざなりな、頭でっかちの医師は決して名医になれないことが本書を読んでよく分かり、ここに医療の深さがあると感じた。精進したい。

    「問診は即興のセッションである」という比喩が面白く、的を射ていると感じた。即興をするには楽譜を読む力や演奏能力はもちろん必要だが、それだけではダメで相手との対話が必須である。
    会話の全ての主導権を医師が握るような問診は、即興ではない。
    これは「医療は科学に裏打ちされたアートである」というオスラー医師の表現にも通じる部分があると感じた。

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著者プロフィール

1965-。ニューヨーク在住の内科医。アメリカ最古の公立病院・ベルビュー病院勤務。ニューヨーク大学医学部臨床教授。著書にMedicine in Translation: Journeys with My Patients (2010)、Intensive Care: A Doctor’s Journey (2013)、 When Doctors Feel: How Emotions Affect the Practice of Medicine (2013; 『医師の感情』医学書院 2016)、What Patients Say, What Doctors Hear (2017; 『患者の話は医師にどう聞こえるのか』みすず書房 2020) がある。New York Times紙やLancet誌で医療や医師と患者の関係について執筆を行うほか、医療機関初の文芸誌Bellevue Literary Reviewの編集長も務める。

「2022年 『医療エラーはなぜ起きるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ダニエル・オーフリの作品

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