科学者たちが語る食欲 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 古書店のワゴンでゴミみたいな扱いを受けていたが、こんなに面白い本がタダ同然で読めるとはありがたいを通り越してへんな気分。夢中で読んだ。読みながら何度「マジか」と独り言したことか。

    本書はわたしたち生物が生きるためにもつ「食欲」のメカニズムに迫った良書。
    登場人物ならぬ、登場栄養素は、炭水化物とタンパク質と脂肪。脇役は微量栄養素のビタミンとミネラル。

    最初は「バッタ」の研究から始まった。ゴキブリ、ネズミ、ゴリラ、チンパンジー、そしてヒトへと研究対象を広げていくにつれてわかってきたことは、私たち動物はどうも、摂取する栄養素に対して選択的に食欲を向けているということだ。

    なかでも私たちが最優先しているのが「タンパク質」。
    種によって異なるが、食欲はまずこれを一定量摂取することをじつは目的としている。そのためには炭水化物や脂肪をどれだけ摂取しようが構わない。とにかくタンパク質一筋。

    野生の動物たちはまったく本能的に、生息環境から上手にタンパク質を摂取し、プラス炭水化物や脂肪も、驚くほどバランスよく食べている。

    (これらを実証した研究者たちの過酷な実験の過程も読みどころだ。寝食も惜しんで実験の奴隷となり、ときには渇きに苦しみながら砂漠でじっとしている)

    しかしながらだからといってタンパク質が必ずしも体に良いわけではない。
    ここがもっとも驚愕したところなのだけれど、タンパク質を取りすぎると、生物個体の寿命は縮まる。しかしそれに対して繁殖には有利にはたらく。
    だから種の繁栄は無視して寿命を延ばしたければ、「低タンパク・高炭水化物」の食物をとればいいらしいという実験結果が出ている。

    しかし容易に想像がつくが人間社会ではそう簡単にはいかない。そもそも多くの地域で食環境がぶっ壊れているからだ。
    具体的には、
    「添加物を使うことによって、私たちの体が生きるために必要とする栄養素の摂取が狡猾に操作されている」
    からだという。

    本書の後半は主にこの内容。私の判断ではあくまで科学的に慎重な議論がなされていると思うが、こういうのも「陰謀論」だとかいってすぐにレッテル張りされやすそう(笑)

    本書を読むともはや国家ぐるみの殺人としか思えずちょっと吐きそうになる(より詳しくは直接本書に当たられたい)。
    本書はアメリカでの現状について詳しいが、日本においても同様かもしれない(事実はまあほぼ明白だけど、あえて遠回しに"かもしれない"と書くにとどめておく。米国の食品メーカーいわく、「直接の影響は証明できない」と言われるのがオチだから)。
    少なくとも"仮に"本書での米国の状況をただ鵜呑みにするならば、金と引き換えの国家ぐるみの殺人と言っても過言ではない。

    もはや添加物に包囲されていて身動きの取れない状態ではあるが、とはいえ個人的には、それを考えすぎると神経症になりそうだし(実際そうした知人がいるのを見て)、なにより"毒"は美味しいからこれからもあえて食べるつもりだけど、

    ただ、これも"仮に"ある食品メーカーが70億ドル以上を宣伝やロビー活動などに費やし、またテレビアニメの合間に食品のCMを流すことで子どもの正常な(つまり動物本来としての)食欲と食嗜好を壊そうと目論んでいるとすればそれはちょっと無視できない話だ。

    こうした状況も、タンパク質欲がうまく操作されている結果のことだから、本書は少なくとも「食欲システム」を正しく知っておくことを促す。またそれが肥満の改善にもつながるのだという。

    少しだけ触れると、体重が増えると摂取すべきタンパク質のパーセンテージも増えるために、食欲は余計に増大するのだという。したがってそれ以外の栄養素も必然的に大量に摂取することになる。
    だから間食を減らし、植物繊維を取るようにし、「カロリー計算」は重視しないようにし、うんぬんかんぬんすれば体重を減らせるというそんなダイエット指南も最後に付されている。

    添加物関係の議論にうんざりしているむきは後半は読まずに本を閉じてもいいと思うけれど、前半の「食欲システム」のメカニズムの解説はほんとに面白いので超おすすめ。

  • 出会い方:youtube「ゆる言語ラジオ」のおすすめの本として紹介されて、これは読まなくては!!と思い図書館にて。

    この本の切り口はいわゆる一般の「ダイエット」や「栄養」ではなく「『食欲』とはなんだ?」という点で展開されていきます。

    そうそう!そうなんですよ!!ダイエットにしても、減量にしても、まずは、「腹さえ減らなければなぁ」「がまんするのが辛いんだよなぁ」というところにあって、小腹がすいたらどうにか落ち着かせたくて「飴一個だけなら・・・」、「全部食べなければ・・・」、「こっちよりはこっちのほうがカロリーが低いから・・・」、と結局食欲に負けて言い訳しながら食べてしまう。それともう一つ。食べ過ぎのこと。満腹まで食べることもなんで抑えられないんでしょう。「もったいないから」とか、「食べきれそうだから」とか思いながら満腹まで口にした後に訪れる罪悪感。「あー、また食べ過ぎて気持ち悪い(だったら止めればいいのに)」を何度やっていることやら。

    だいたいさぁ、「体脂肪一桁」とか「素晴らしい体形」にならなくてもいいから、食欲と戦わずに標準体重になる方法ってないの?太るか鍛えるかの2択しかないの?だったら結局我慢するの辛くてダイエットは先送りだわーという中に、

    「我慢?食欲って我慢するんじゃなくてコントロールできるんだよ。知らないの?」

    という、そんなのあるの!?それを教えてよ!の本です。そもそも心の声を頼りにしたら絶対太るものしか食べたくならないし、好き嫌いはなくても体にいいもの食べ続けるのって続かないでしょという考えが間違いだったようです。食べたいものは食べていいし、体質や年齢も関係なくて、まずは今までの食の知識をいったん置いときましょうか。そしてこれを覚えておいてね。

    「タンパク質を気にしてみよう」

    あー、そういうことね。はいはい、炭水化物減らしてタンパク質多めにとるってやつでしょ。ササミとかカロリー低いもの食べてお腹を満たすやつ。それって結局甘いもの食べたくなって続かないんじゃ?って近いようでちょっと違う。この本の莫大な量の実験とデータによるとすべての生物に共通している食欲に関する体からの信号は「タンパク質が一定量取れたら『お腹いっぱい』って感じるよー」ということでした。つまり、置き換えるとか炭水化物を減らすというよりは、普通の食事の中でタンパク質が多いものをとると「満足」して、さらに「空腹感」が減るというもの。習慣的に自分の腹いっぱいの量はこれぐらいというのがあると思うけど、この本によると、それって誤解してたみたいです。

    そもそも生き物にとって最も必要なのが「体自体を作る成分」のタンパク質。体はそれを「食べて取り入れてくださーい」という信号を「空腹」としてだけ発信する。そんなこと知らないもんだから、「あーはいはい、美味しいもの食べてくださーい」に変換されて、「美味しいものといえば甘いものとかカロリー多いものだよね~」と元々の「タンパク質ちょうだい」からずれてチョイスしてたみたい。

    つまりはタンパク質の量さえ確保されれば「はい、食事OKです」となれるのに、タンパク質の少ない食事をとることで結果、多くのカロリーを摂取することになっていたのです。しかも、いったん胃に入って満足した気がしても、やっぱり体は「おい!タンパク質がもう足りねーぞ!やり直し!」として、また「あーはいはい、なんか食べたいでーす」から間食が増えたり、空腹を我慢することになるわけです。

    まずはこの食欲の正体が「タンパク質の確保」にあったということを踏まえて、豆腐や納豆、鶏肉、プロテイン系のバーなどをいつもより意識して入れてみて、ご飯の量を減らしてみます。気分的に全体量が減ったようで不安なのですが、意外と「まあ、空腹感は治まったな」という感じ。それからが不思議で、一日の中で「小腹すいたー」の時間帯になっても、空腹だとはわかるんだけどお腹はすいてないという感じが。なので次の食事にもがっつくこともなく、じゃあまたタンパク質多めで全体量を今までより少なくしとこうか。また長持ちする。結果、特に我慢ということはなく体重もじわーっと落ちていくということになりました。これが体の声を上手に聞くということだったようです。

    あともう一つ、これも大事。

    「残すともったいない」

    ってやつです。例えば、茶碗のご飯でも、デザートにケーキでも、最後まで食べたいな~、とに体は食欲としては満たされたのに「あと半分残すのもったいないな」とついついパクっと行っちゃいますよね。この時点では食欲は十分満たされているのに習慣的に「残しちゃダメ!」が働いて無駄なカロリーが摂取されるわけです。「もったいない」から食べとこうってなるし、食べると「もったいない」から残せなくないのは体の信号から外れた習慣的な勘違いです。まずはしっかり「残す勇気」から。次第に、無駄なものは買わなくなってフードロスともならなくなってくると思います。もちろん、自炊するのが食品数にしても量にしても最適ですが、意識するだけでもコンビニでだって上手に選べるようになってくると思います。最近は特に低糖質、高タンパクの食品コーナーが充実しているのでありがたい!

    というわけで、少し諦めていたお腹のお肉達も少しずつさよならできてきています。そうなると、「じゃあ、運動もちょっとしてみよっかな」というわけです。この本ではさらに「塩分」「食物繊維」「加工食品」についてもなるほどな食欲に関する話がしっかり書いてあったので、読まれることがあればもっと食欲コントロールのサポートが得られると思います。

    まずはこの本を手掛かりにさらなる正しい食への知識と体のサインに注意していこうと思います。

  • 人間はタンパク質欲を満たすために食事をするため、脂質や炭水化物よりもとにかくタンパク質を優先して摂取することで食べすぎを防ぐことができる。しかし、タンパク質の摂りすぎは老化を早めるので、タンパク質ばかり食べていればいいというわけではないのが難しいところ。

  • 昆虫を使った実験が印象的。
    バッタには、タンパク質を始めとする栄養素の摂取を調整する能力があるとのこと。自分で栄養素の調整ができるなんて、すごい。

    行動指針
    ①超加工食品をできるだけ避ける
    ②食物繊維を積極的にとる
    ③午後8時以降は何も食べないようにする

    以下、印象に残ったところを抜粋。

    テロメアとは染色体の末端にあるキャップ状の構造で、細胞複製に欠かせない重要な要素が細胞分裂時にほつれてしまうのを防いでいる。染色体の機能と完全性を保つ働きをする、きわめて精巧な小さな機械。

    低タンパク質と高炭水化物の組み合わせが長寿をもたらす。

    アンニカの事例にびっくり。頭痛は続き、吐き気も残っていたため、検査を受けることにした。アンニカは自分をジャングルから追い出し、安心な医療を受けられる場所に導いてくれた火災に感謝せずにはいられなかった。脳内で恐ろしい寄生虫のように成長しているクルミ大の腫瘍が、MRI検査で見つかったのだ。

    超加工食品とは、工業的に生産された食品。
    たとえば「酢酸イソアミル」を考えてみよう。これはアイスクリームやキャンディ、ケーキ、そのほかの超加工食品に、バナナの香りを与えるために使用される添加物だが、ペンキやラッカーの溶剤、靴クリームの添加物としても使われている。

    「トランス脂肪」とは、植物から抽出された健康的な不飽和油を、前述のとおり水素化(水素原子を付加)することで、工業的に製造される脂肪。バターの代わりに使うと、ドーナツなどサクサクとした食感が得られる。品質保持期間を延ばすこともできる。

    繊維の比率が低いと、食べ物は美味しくなる。

    緑のラベルは健康的に見える。

    食品産業の絶大な力が、国や専門家による国民の食事のガイドラインにも影響を与えている。

    超加工食品を避けよう。 目の前にあると食べてしまうから、家の中にもち込まないのがいちばん。
    超加工食品を見分ける実用的な方法としては、NOVA超加工食品群に特徴的な成分が少なくとも1種類以上、原材料のリストに含まれているかどうかを調べるといい。つまり、 キッチンでけっしてまたはめったに使われない食品成分(高果糖コーンシロップ、水素添加油脂やエステル交換脂肪、タンパク質加水分解物など)、または最終製品の嗜好性や魅力を高めるための添加物(香味料、旨み物質、着色料、乳化剤、乳化塩、甘味料、増粘剤、消泡剤、充填剤、炭酸化剤、発泡剤、ゲル化剤、つや出し剤など)である。
    スーパーに並べられている加工食品には全て入っているのではないだろうか・・・。

    「高タンパク質食品」を食べる。多種多様な動物性食品(鶏肉、肉、魚、卵、乳製品)および/または植物性食品(種、ナッツ、豆)の中から高タンパク質食品を選び、タンパク質の摂取ターゲットを満たすとともに、タンパク質欲を最もよく満足させるバランスでアミノ酸が含まれた食事を摂ろう。

    「繊維」を食べよう。多量の葉物野菜、非デンプン質の野菜、果物、種、全粒穀物を食事に含め、体にカロリー負荷をかけずに繊維を確保して、食欲ブレーキを再起動させよう。豆や種、乾燥豆(ライ豆、インゲン豆、ひよこ豆、ササゲ、レンズ豆など)を食べることでも、繊維とタンパク質、健康的な炭水化物を増やすことができる。 ビタミンとミネラルが摂れ、サプリメントの必要性が薄れるというおまけつき

    「食べない時間」を1日の中につくろう。細胞とDNAの修復・維持を促すために、夜間は断食し、間食を控えよう。 たとえば午後8時から翌朝の朝食までは何も食べないようにするなど。毎日の断食によって長寿経路が活性化されるうえ、夜遅くに余分なカロリーを摂取するリスクが減り、眠りにつきやすくなる。

    よく眠ろう。 睡眠は、食事・運動とともに、心身の健康の3本柱の1本 である

    こもらず「外」に出よう。

  • 読み終わっての正直な感想を書くと、「面白かったのだけど目次を見て懸念していた点は、こちらの懸念通りだった」に尽きる。
    面白かったのは、昆虫(バッタ)を皮切りに動物は自分の食べるものを如何にコントロールしているのか、地道な実験により突き止めている点。カロリー制限が老化防止に有効という話があるが、実際はタンパク質の量を増やしてタンパク質欲を満たしつつカロリーを抑えるのが大事という点は、興味深く感じた。
    一方の懸念点は、途中に入る超加工食品の件。専門外で組んだ相手の影響もあると思うが、食べてはいけない系の安易な議論に終始しているという印象しか受けず(実験内容については知っておいて良いだろうが)。アメリカなどの状況を鑑みて書かれていることは考慮しても、量の概念に関する記載もほぼ無いので、日本で単純に受け入れられる話ではないと思う。
    この調子で最後まで進んだら★2にしようと思ったが、その後持ち直したのが救いだった。

  • タンパク質に対する食欲が、食品の総摂取量を決定しているという仮説をもとに、著者やその周りの方々の研究を通して紹介している一冊。後半は栄養全般に関しても述べている。各章の終わりにまとめが書かれているので、長々と読むのが辛い人はそこを読むだけでも十分楽しめると思いました。

  • 食欲は目標となるたんぱく質ポイントをめざす。
    たんぱく質が十分に摂取できないと、満たされるまで摂食を続ける。
    妊娠中に低タンパク質だった場合、幼児期の内臓脂肪率がたかかくなる。逆にたんぱく質が多かった場合はやせた状態で生まれる。
    面白い話だたくさんあった。

    読んでる途中で気が付いた。これ一度読んでるわ。

  • タンパク質欲をコントロールし,健康になろう。

  • 自分たちの食生活をコントロールすることでより健康になる方法が書かれた本。
    自分たちの食欲を根本から理解できるため今後の食生活にも実践的に生かせます。
    科学的な視野から私たちの食を見てみたい人におすすめの本。
    食欲の秋にぴったりの一冊になっています。

  • 自然界の生物は生存に必要な栄養をバランスよく摂取しているのに、人間の食欲はなぜ暴走するのか?がよく分かった。
    章ごとに疑問と仮説と実験でわかったこと、更に次の疑問、があり、グイグイ惹き込まれて読んだ。

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著者プロフィール

シドニー大学生命環境科学部栄養生態学教授およびチャールズ・パーキンス・センター栄養研究リーダー。オックスフォード大学で研究員および専任講師を10年間務めた。世界中の大学や会議で講演を行っている。スティーヴン・J・シンプソンとの共著に『The Nature of Nutrition: A Unifying Framework from Animal Adaptation to Human Obesity』(未邦訳)がある。シドニー在住。

「2023年 『食欲人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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