組織が変わる――行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2 on 2 [Kindle]

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  • ダイヤモンド社
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感想・レビュー・書評

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  • 職場に活気がない、忙しいのに売上が上がらない。そんな職場のモヤモヤを解消するカギは「対話」にあり。真の問題に気づき、向き合うための対話の方法「2on2」を紹介する書籍。

    企業が成長すると、既存事業と新事業の間に、方向性の食い違いが生じる。それが積み重なった結果生まれるのが、職場の活気のなさといった「閉塞感=慢性疾患」である。この組織の慢性疾患には、ゆっくりと長期間進行するといった特徴がある。
    これに対処するには、危機感が生まれにくいことを認識し、日頃から「対話」を行うことなどが必要である。

    対話とは、他者を通じて問題に向き合い、新たなアプローチを発見する方法論である。職場には、同僚や他部門の人など、立場の違う様々な人が存在する。組織の慢性疾患を改善するには、そうした違いを受け止め、互いの接点を見いだす必要がある。そのための対話の方法が「2on2」である。

    2on2は、4人を2対2の2チームに分けて行う。問題を抱える当事者が、参加メンバーの選定・招集を行う。所要時間は約60分。
    各チームが交互に話す。メンバーは、「何に困っているか」「どんな時によく発生するか」といった投げかけを通して、問題の中身を明らかにしていく。

    2on2を行う際は、次のような点に注意する。
    ・問題解決しない:
    表面化した問題の解決ばかりに目が行くと、背後の慢性疾患に気づけない。
    ・反転の問いかけ:
    同じ問題を発生させる方法を考えると、問題の発生プロセスと、自分と問題との関わりが見える。
    ・問題に名前をつけ、「妖怪探し」をする:
    問題に名前をつけて観察する「外在化」により、問題の様々な面が見えてくる。

  • ■感想
    大事なのは犯人探しではなく、他者の語りを通じて問題を捉えるナラティヴを広げてみたり、問題に名前をつけて、人と問題を切り離して考えてみたりすること。

    ■Todo
    組織の根本的な闇を解決する一つ方法を発見できて
    良かったと思います。この改善を提案するコンサル業を行いたい。

  • ■要約
    ・組織の慢性的な課題に対して、
     当事者感の1on1では課題を一面的にしかみれなく、
     またすぐに問題解決しようとして表面的な課題解決しかできない現象がおき、本質的問題解決がしづらい。
    ・そのため、本書では対話を通して問題を深ぼることで、問題を表面的に捉えるのではなく多面的により本質的に捉えていくアプローチを提唱する。
    ・慢性的課題に対して自ら気づく「セルフケア」ができる組織にしていくことで、小さか改善が積み重なり、組織を前にすすめることができる

    ■感想
    ・筆者がいう2on2は実際の組織に取り入れるには、
     マネージャークラスがこの2on2に納得していないと
     コストがかかる方法やってなんになんの?
     って言われがち。
     そのため、実際の組織に導入するには、
     難しいのではと思った。ただし、問題を他の視点で捉えることで、新しい解決の切り口が見えてくることは何事もありうるので、そういう観点だと2on2は有効なように思える。
     

    ■アクション
    反転の問いかけとは、問題に対して「この状況を更に悪化させるにはどうするか」を問うことで物事の違う側面をみることができる

  • 「組織の慢性疾患」を「解決・解消・寛解」するのではなく うまく向き合っていく、その端緒を探るための考え方を記した本。

    そのためのアプローチとしてシンボリックに 2on2 というものも紹介されているけど、本書の本質は決してそこではない、と思う。

    「自分も問題の一部」だと認識するために、メタ認識をうまくするためにはどうしたらいいか、そこなんだと理解。

    「岡目八目」メソッド、とでも言おうか。

    個人に見える範囲のナラティブを積み重ねる、ことって割とすぐに忘れがち。よく抽象的な課題にしてしまうので反省。

  • 所謂大企業病を変革という外科的手術で治すのではなく、慢性疾患と捉え、内科的診療で一生付き合っていくことで結果として大企業病が治っていくという発想は、私にはなく、とても新鮮で面白かったです。

    著者が繰り返し述べられている「自分もその問題の一部であることに気づく」ことは、普段から意識していても一人では難しく、そのために他者の視点を対話から得ることで、自分が当事者であることに気づける。他にも問題に対し何が問題かに気付くためのエッセンスが詰まって素晴らしい本です。

  • 対話によって組織を変えるための具体的な方法を記述した著作でとても面白かった。
    筆者の提唱するのは、2on2という手法。これは、1on1を2組用意し、困っている人ともう一人がその問題について語る。2組は順番に会話をして、その会話をもう一方は聞くという構成。
    やはり大事なのは、個人を糾弾しないという点。問題の原因を個人に求めず、それが起きる構造に注目する。大事なのは、その問題は困っている人が関わって起きているということ。
    そして、1つ面白いと思ったのは質問方法。その問題をもっと大きくするためにできることはありますか?というもの。これを問われることで、自分が問題の構造の一部という認識が生まれる。

  • 当事者研究の視点も多分に合流させながら、企業組織を考察し、きちんと具体策まで考案・実践した一冊。参考図書にある『薬物依存症』や、熊谷先生・國分先生の『責任の生成』も読んだ上で読み返すと、また味わい深そう。

    宇田川先生の論説は、いつも優しさと厳しさの塩梅が心地よい。先生自身が、「経営学という偏狭なナラティブ」をビジネス現場はもちろん、当事者研究などの他分野研究を積極的に取り入れながら、自分自身のナラティブを押し広げ続けている。その仕事の姿勢にも感銘を受けた。

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著者プロフィール

経営学者/埼玉大学 経済経営大学院 准教授

1977年東京都生まれ。2000年立教大学経済学部卒業。02年同大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。06年明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。2006年早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、2007年長崎大学経済学部講師・准教授、2010年西南学院大学商学部准教授を経て、16年より埼玉大学大学院人文社会科学研究科(通称:経済経営系大学院)准教授。
社会構成主義やアクターネットワーク理論など、人文系の理論を基盤にしながら、組織における対話やナラティブとイントラプレナー(社内起業家)、戦略開発との関係についての研究を行っている。大手企業やスタートアップ企業でイノベーション推進や組織変革のためのアドバイザーや顧問をつとめる。専門は、経営戦略論、組織論。
07年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。
20年日本の人事部 HRアワード2020書籍部門最 優秀賞受賞。


「2021年 『組織が変わる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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