保育所と見まごうようなほんわかした探偵局に,とても腕利きとは思えない「なんか丸い」探偵・陽向万象,その助手の三吉菊野の物語。
探偵局が舞台ではあるが所謂日常の謎的なミステリー。本作には4篇が含まれるが,最初の3つはすでに亡くなっている人から大切な人へ生前語られなかったメッセージを探し出す話。第1話は一時カリスマ投資家として話題になり最近亡くなった,加賀美喬生の枕元に置かれていたO.ヘンリーの短編集に挟まれていた封筒のメッセージの解読依頼。第2話は,2ヶ月前に建設現場の事故でなくなった夫の遺品の由来を知りたいという未亡人の依頼,第3話は,小学校のとき,タイムカプセルを埋める約束をしたのに約束の場所に現れずその後交通事故で死んでしまった親友の真実を早朝の公園で偶然であった陽向探偵が解き明かす話。
第4話はちょっと変わって菊野が商店街の八百屋の中学生の息子の悩みを解決する話。それとは別に陽向探偵から菊野に「鏡の国のアリス」にまつわるクイズが出される。ルイス・キャロルのアリスものに「地下の国」と「子供部屋」というのがあるのを初めて知った。
深刻な事件も起こらないので心穏やかに読める作品だが,各話,一応メインの謎が解けた後,すぐに終わらずなんだかグダグダと話が長い印象だった。