蒼海館の殺人 〈館四重奏〉 (講談社タイガ) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • このミス2022版5位。嵐の山荘物的な本格推理小説。大作過ぎてとても骨が折れます。
    緻密に設計された複雑な構成のなかで、さまざまな伏線とともに事件が進行し最後にはすべて解き明かされる。
    あまりにも、複雑過ぎて我々凡人の理解の範囲を超えている。それにもまして、登場人物の大げさな感情の動きや行動が不自然なんだけど、推理の中では必然的な心の動きや行動として説明されるところがひっかかる。人間的に魅力を感じられないところも相まって、なかなか感情移入できないことからさくさく読めず。読了するのにかなり時間がかかってしまった。
    もう一度、読み返せばこの本の素晴らしさがりかいできるのではないかと思います。

  • 知らない作家さんだけど、ツイッターでは読了した方による印象的で鮮やかな蒼を基調としたきれいな表紙がよく流れてきて、それに雰囲気を感じて読んでみようと思った一冊。
    事前情報はなにも持ち合わせず、「〇〇館」と「殺人」というタイトルと、表紙をめくってすぐのページにある「館見取り図」などから、「あー、これは本格ジャンルなんだろうな」くらいの気持ちで読んでみた。

    *あとで知ったが、この作家さんは話題の大型新人さんだそう。昨年のこのミス国内2位にこの方の「透明人間~」がはいっていた。後述するが、東大卒とのことで、その辺がトリックの数々の仕込みに感じられた。

    まったく知らないで読みはじめた私が悪いんだけど、本書はシリーズ2作目。
    前作未読の私には、前作でなにやら心に痛手を負ったらしい探偵役の男子高校生が物語中盤までまったくの引きこもり少年+コミュ症+なにやらぐちゃぐちゃ悩みすぎ状態になっているので主要物語が進まず?????だった。
    あとになって分かったが、このシリーズは探偵がただ事件を解決するのではなく、「探偵の存在意義とは」という壮大なテーマに高校生探偵が対峙するのも読みどころらしい。だが、あまりに主人公が動かなすぎるので、下手するとこの辺でじれて本を投げ出す人がいるんじゃないかと他人事ながら心配した。

    が、この探偵役高校生が「探偵はヒーローなんだから」という別人物のセリフで、まるで付きものが落ちたように探偵という役割に覚醒したところから話にスピードが出て俄然面白くなっていった。

    私が驚いたのは仕掛けの数々だ。あのセリフもあのシーンも、え、あれすらも伏線だったのか~、と。
    種明かしされたときにはくらくら眩暈がするかと思った。本文には<裏の裏の裏>と表現されているが、本当に十二単のように見事な仕掛けの重ね方で、正直いって置いてけぼりをくらってしまった読者もいるだろうと容易に推察できる。私も読書中はこれはもしや…と思ったところには付箋を貼りまくって読んでいったが、やっぱり種明かしでは前にさかのぼってページを確認しまくった。

    この作家さんの「トリックノート」なるものがあれば、ぜひ見てみたいと思う。勝手な想像だけど、この人、東大卒というだけあって頭がいいんだろうなと実感した。そして入試問題を精密機械のごとく時間内に確実に処理していくように、ものすごく緻密にこれらの全仕掛けを練り上げたに違いないと思った。とにかくこの目の眩む仕掛けの数々には脱帽です。

    使われている大きなトリックはあの古典本格ものの使いまわしという意見もあるが、そこは私はそういった古典へのこの作家ならではのオマージュだと解釈するようにした。

    と、ここまではべた褒めなのだが、個人的にどうしても浅いというか、現実離れしてしまって残念なところはあった。

    たとえば例の散弾銃で頭半分吹っ飛んで死んでいる家族を見つけたときのその場の人たちの反応が現実味がまったくないというか、浮ついているというか。私だったら息子の頭が半分散弾銃で吹っ飛ばされている姿を見たら、その場で気を失って倒れます。その後数日は間違いなくうなされてまったく使い物にならないに違いない。

    そしていちばん納得できないのが、これほどの事件を犯した真犯人の動機だ。619ページで「目的は金=おじいちゃんの隠し財産=隠されたダイヤモンド」ということが述べられるが、それに続く

    宝石はそのままでは使えない。そこで、自分の存在を葛城家から抹消し、新しい人生を送ろうとした。宝石はその元手だ。入念な入れ替わりトリックも、二重三重の間違い殺人の構図も、家族に互いを疑わせる構図もーー全部、自分が盲点に隠れ、姿を消すための工作です

    とあるのだが、ごめんなさい、私が馬鹿すぎるんでしょうか、この部分、何度読んでもわかりません。わかったようで、わかりません。
    こんな替え玉殺人のような手の込んだ犯行をわざわざ起こさなくても、家族のだれにも気づかれずにおじいちゃんの財宝をひっそりと盗み出し、自分も家を出て行方をくらまして「新しい人生」を送ればいいんじゃないんでしょうか。それこそ整形なりなんなりして。ここまでの殺人を犯して自分が今後黒田さんになりすまして生きていくことの意味がどこにあるのかわかりません。

    この作家さん、とにかく頭がいい方なんだろう。これだけ複雑なトリックの仕掛けは文句なくちゃんと機能している。そして作家さんの頭のなかでは、これらの登場人物たちも事件を起こした原因もすべてパズルのようにはきっちりはまるべきところにはまっているに違いない。そして、実際にきちんとはまってパズルは完成しているのだ。眩暈がするくらいの完成度で。
    が、いかんせん、そのパズルは頭の中だけに存在している。”息”をしていない。
    そこが星を一つ減らした理由だ。

    最後は辛口になったが、母と娘が過去の因縁に決着をつける話とか人間を描けている部分も見受けられるし、なによりもまだ若い作家さんで才能がある方なので、今後さらに大化けすることに大いに期待したく応援していきたいと思う。
    なお、本格モノ好きさんは本書のネタあかしは大いに楽しめると思います。

    ====データベース====
    館が沈めば、探偵も、犯人も、全員死ぬ

    濁流押し寄せる館の連続殺人。
    雨が止むころ、僕らは生きているのか。

    学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。

    政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。
    名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、
    激しい雨が降り続くなか、連続殺人の幕が上がる。

    刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも――夜は明ける。
    新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ。

    2019年『紅蓮館の殺人』(講談社タイガ)がスマッシュヒットを記録し、
    2020年『透明人間は密室に潜む』(光文社)が続々ランクインの26歳による最高傑作!

  • プロットの複雑さ、推理難易度の高さなど、よくもまあここまで練り上げたなという完成度。ただ、探偵と一緒に謎を解くという楽しみ方はし辛い作品なので、そこが個人的にはマイナスだった。
    ミステリーというより人間ドラマ的な面白さもあるので、読んで良かったなとは思った。

  • 犯人がまさか自分の身を守るために人だけではなくて、災害までも自分の手の中において計画を実行していだと知った時は驚きが隠せませんでした。

  • 作者の頭がいいってのがよくわかる。こんな複雑なトリック考えられるのすごい。東大まで行ってるだけある。

  • kindle本のまとめ買いで。「紅蓮館~」を読んだし。。。ということで読みました。といいつつ、最初は、紅蓮館~を忘れていて、「葛城君って誰だっけ?」とか思いましたが、読みながら、「そうだ!そうだ!探偵君ね!」と思い出し。ところが、なんとなく紅蓮館を引きずっている調の元気のなさ。。。「ん~。これどうなるの??」と思いつつ、「水位〇〇m」という趣向は、なかなか面白いなあ。。。と。で、殺人が起こるわけですが、なんかしっくりこないところもありながらも、助手の田所君が頑張って。。。と思ったら、「おーーい!!そういうことかい!!」と。と思ったところがスタートでした!!(笑)終盤は葛城君の怒涛の謎解きがあるわけですが、難しすぎて。。。ただ中盤以降はスラスラいける本でした

  • そんなに上手く行くかいな!と、正直思ったわ。
    人は思ったようには上手く動いてくれないと思うんだわ。 …

  • 前作を読まなくても読めますが、出来たら前作読む方がより心理状態が楽しめると思います。

    連続殺人の恐怖と、それと同時に起こる水害の恐怖。館への水の距離が章毎に書かれてるのが、段々読んでてもハラハラしてくる。

  • この本を読み始めて、2作目だったことに気付く自分。
    ところどころに、前作『紅蓮館の殺人』の話題が出てきますが、とりあえず前回の展開は何となくは分かってくるし、前作とはまた区切った別の事件なので、こちらから読んでも大丈夫でした。
    コンセプトとしては、事件と、台風やダム決壊等による危機が迫ってくる感じが相まって良いと思いますが、、、。
    ただ、事件の展開が二転三転…と続き、一緒に謎解きを楽しむ感じではなく、振り回された挙句、「えぇ~それ?」となるような予想外過ぎるというか、厳しいでしょ、それは…というか、そういった感じのまとまり方をしているように感じました。
    二転三転しすぎて、頭が追い付けないまま、気づいたら一気に事件解決!で置いてけぼりを食らったような気がしました。(T_T)
    頭が悪い自分が悪いのですが…。

  • うーん。この謎はどうなのかと納得感が低い。そんなのアリなの?と思わずツッコミを入れてしまった。

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著者プロフィール

1994年東京都生まれ。東京大学卒。2017年、新人発掘プロジェクト「カッパ・ツー」により『名探偵は嘘をつかない』(光文社)でデビュー。以後、『星詠師の記憶』(光文社)、『紅蓮館の殺人』(講談社タイガ)、『透明人間は密室に潜む』(光文社)を刊行し、それぞれがミステリランキングの上位を席巻。’20年代の若手最注目ミステリ作家。

「2022年 『あなたへの挑戦状』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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