顔も知らない祖父である伯爵の跡取りとなることを告げられた7歳の少年が成長していく話……ではないところがおもしろい。人嫌いの伯爵の心がどのように変化していくか、そして終盤に起きる事件がどのように収まるか、展開はわかりきってはいても詳細な描写の力でぐいぐいと読ませる内容だった。
米国人と英国人が無知ゆえに相手の国に偏見を抱くところが描かれるものの、両者の橋渡しとなる存在が、無知な少年であるがゆえに先入観を持たず、だれにでも純真さと無私の優しさで接することができるセドリック(フォントルロイ卿)であるというのが特に興味深い点だった。