イドコロをつくる 乱世で正気を失わないための暮らし方 [Kindle]

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  • 著者が他の著書で提案した、小さくても自立した経済をつくる「ナリワイ」と両輪を成すのが、本書で扱われる「イドコロ」。イドコロとは「居心地よく精神を回復させられる場」であり、「居場所」のように固定化したコミュニティではないことを特徴とする。そして精神を健全に保つことで、「異常な時代の妥当性のない常識に呑み込まれない」ことも目的のひとつとしている。書籍の構成としては、1章がイドコロの定義と分類、2章が8つに分類されるイドコロの解説、3章が著者の経験を中心とした実践例、4章では改めてイドコロの意義を語っている。

    定義される8つのイドコロの分類は以下の通り。
    ■自然系イドコロ
     ①生活を共同する集まり(≒家族その他)
     ②(親しい)友人
     ③仕事仲間
    ■獲得系イドコロ
     ④強い趣味の集まり
     ⑤公共空間の気に入った場所
     ⑥日頃通える小さいお店
     ⑦有志でつくるオープンな空間
     ⑧文明から離れて一人になれる場所

    「自然系イドコロ」については、なるようにしかならないならない部分が多いと著者も認める通りで、実践的には「獲得系イドコロ」をいかに増やすかについての提案が多い。⑤⑥⑧あたりは各人が取り組みやすい項目で、併せて「歩くこと」「(雑多な)読書」も薦められている。一方で、3章の著者の経験を中心に紹介される④⑦の実例については、個人的には少しハードルが高く感じる部分もあった。

    全体として、必ずしも新しい取り組みを進めるというわけではなく、温故知新の色合いも強い。柔軟性の高さと有用さを両立したコミュニティを模索するという側面については、『チョンキンマンションのボスは知っている』にも相通じると思いながら読んでいたところ、本文途中で著者によっても紹介されていた。ほかに、現状のSNSについてはイドコロとして機能しづらくなっているという再三の指摘をはじめ、ストレスが生まれやすい現代社会に対する考察も面白く読めた。本書をカテゴライズするならある種の自己啓発に当たると思うが、一般的な自己啓発本のように即効性や自己の拡大を目的とした内容とは対照的で、本書で展開される提案は地味で、効果を発揮するにはそれなりの時間を要する現実的な内容にまとまっている。

    余談だが、『赤毛のアン』は本書に書かれているイドコロの多くを実践していると思う。

  • ふむ

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著者プロフィール

伊藤洋志
個人のための仕事づくりレーベル「ナリワイ」主宰。1979年生まれ、香川県出身。京都大学農学部森林科学専攻修士課程修了。個人が身一つで始められ頭と体が鍛えられる仕事をナリワイと定義し、研究と実践を行う。主な著作に『ナリワイをつくる』『イドコロをつくる』(いずれも東京書籍)。「遊撃農家」などの個人のナリワイとチーム活動による野良着メーカー「SAGYO」のディレクター、「熊野マウンテンビル」運営責任者などの活動に加え、タイアカ族の山岳村落の学術研究プロジェクトにも参画する。

「2023年 『山岳新校、ひらきました』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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