Kindle版読了。
ひょんな事から子供の頃に1度だけ会った恩人でもあるヒーローの世話係をする事になった真面目で働き者の19歳ヒロインと、出生に秘密を抱える人嫌いの25歳天才魔法使いヒーローとのファンタジーラブコメディです。
…ちょっと期待していたストーリー展開とは違いましたが(主にヒーローの性格)、大好きな作家さんなので評価は★5となりました。
ヒロインは王都から離れた小さな村で育った庶民です。
ヒロインとヒーローの出会いは12年前で、ヒロインは7歳、ヒーローが13歳でした。
ヒロインの住む村が隣国に襲われそうになった時に、王宮魔法士のヒーローに助けられます。
ヒロインの母親も眠る村の墓地をヒーローが破壊したお詫びに、ヒロインの願いを1つだけ叶える事を約束して別れます。
それから時は流れ、ヒーローは王国の英雄になっており、ただの村娘のヒロインには手の届かない存在になっていました。
ヒロインが16歳になった時、ひょんな事からヒーローの屋敷で世話係を募集している事を知り応募すると幸運にも採用が決まり働き始めますが、ヒーローは人間嫌いで屋敷に引きこもり魔法役の研究に寝食を忘れて没頭してばかりという、生活能力が一切ない変人でした。
しかし、ヒーローの本性を知っていた事から今迄の世話係のように幻滅や特に期待する事もなく、恩返しとして真面目に働くヒロインにヒーローも少しずつ心を開き、2匹の使い魔達もすっかり懐くようになります。
ヒロインにとってもヒーローは恩人から片想い相手へ変わっていましたが、身分違いから恋心は封印して父親が紹介するお見合い相手と結婚しようと退職を願い出ると、ヒーローから自分と結婚すれば良いと契約結婚を提案されます。
…ヒーローは魔法使いに良くあるようなマイペースな性格ですが、一人称が「僕」だったのは意外でした。
身寄りのなかったヒーローを後見人の王宮魔法師団長が引き取り、王宮でも通じる基礎教養を習わせたという事で、育ちの良さを感じさせる青年になっているのだろうと思いました。
ヒーロー視点あります。
ヒロインはヒーローが初恋でしたが、ヒーローも無自覚にヒロインが初恋のようで、今迄に経験した事のない感情に振り回されて戸惑い、ヒロインとすれ違いが発生します。
ヒーローへの片想いを断ち切る為に、田舎でのお見合い話を受けようと退職を決めたヒロインに、いつの間にかヒロインが屋敷にいる事が当たり前になっていて退職を思い留まらせようと契約結婚を持ち掛けた事で、ヒロインへの特別な想いを自覚したヒーローでした。
初めての嫉妬に暴走したヒーローが、ヒロインにエロ魔法を襲いますが、ここで一線を越える事はしなかったので安心しました。
以前からヒーローに利害関係の求婚をしていたというライバル侯爵令嬢が、ヒロインへの態度を改めて謝罪してくれたり恋愛相談に乗ってくれたりと、予想外に頼りがいのある素敵なお嬢さんでした。
ヒロインとヒーローのじれ恋展開とは別に、私欲で悪魔を召喚する事件も発生していて、ヒロイン達が巻き込まれていました。
ヒーローは上級悪魔と人間のハーフで、生まれた時から「約束」を破ると使い魔共に死ぬ制約を掛けられていました。
気まぐれで人間との間に子供を作った上級悪魔で魔王と呼ばれる父親と、子供が悪魔の子だと知ると憎しみながら簡単に捨てた人間の母親を持ったヒーローの過去が壮絶で、結局それからも人間に利用される運命がつらく可哀想でした…。
そりゃ、やさぐれて引きこもるよな…と、ヒーローに同情しました。
本番ありの初Hはラストに1回だけで、結婚前の婚前交渉でしたが正式に婚約していますし、ヒーローの秘密を知ったヒロインと完全に両想いになった後だったので良かったです。
人嫌いのヒーローなので、DTでした。
最後は結婚式を挙げていましたが、結婚の宣誓がヒーローにとって命を賭けた「約束」になるというのが、重いけど素敵だなと思いました。
エピローグは7年後で、ヒロインとヒーローの間には5歳になる双子の男女が生まれ、幸せいっぱいのハッピーエンドで終わっていました。
初回限定SSはヒーローの使い魔の氷竜視点で、相棒の魔犬と出会ったエピソードや、ヒーローの父親と訣別して人間界へ向かうエピソードが描かれていました。
ヒーローに角が生えている挿絵を見たかったです。