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感想・レビュー・書評
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面白かった
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朝日新聞2021515掲載
読売新聞2021516掲載
日経新聞2021612掲載 -
自分は47歳。
ドリフターズの「8時だョ!全員集合」は幼い頃から見ていました。
ただ、夢中になったという記憶はありません。
お笑いに開眼したのは、「オレたちひょうきん族」を見てからです。
小学校高学年のころには、「全員集合」から「ひょうきん族」に完全に移行しました。
正直に告白すると、小学校高学年にもなって、「全員集合」を見ている同級生が幼く見えました。
反省しています。
単に背伸びがしたかったのです。
お笑いで最も影響を受けたのは、ダウンタウンです。
「夢で逢えたら」に打ちのめされました。
それまでのお笑い番組とは、全く異質な笑いを提供していたからです。
松本人志を「笑いの神」と崇拝していました。
松本的なお笑いこそがお笑いであり、それ以外は似て非なるものだという極端な思想を持つまでに至りました。
でも、言い訳をしておくと、ぼくらの世代には、そういう若者が多かったのです。
大学時代は、クラスやバイト先に、松本のようなすかした立ち居振る舞いで、言葉数こそ少ないものの、ここぞという時にポツリと渾身のボケをかまして笑いを取るタイプの薄っぺらい男が、ぼく以外に1人や2人は必ずいました。
でも、天才・松本のように10打数10安打というわけにはいきません。
それに、どんなに背伸びをしたところで、しょせんは素人です。
周りも素人ということを加味しても、良くて5安打、自分は3安打くらいでした。
と、思い出話を書き出したらキリがありません。
本題に移りましょう。
本書はタイトル通り、お笑いの歴史(特に戦後)を「世代」というキーワードで読み解いたもの。
なぜ、「世代」なのかは、お笑い好きなら説明不要でしょう。
霜降り明星のせいやが、自分たちの世代を「お笑い第7世代」と呼び、一気に社会に浸透しました。
その後、「では、第1世代はだれのか」「このコンビは第4世代だ」「いや、第5世代でしょう」とお笑い好きの間で議論が白熱しました。
本書の著者で、お笑いに精通したラリー遠田さんは、お笑い芸人の「生まれ年」という尺度を用いて、世代を丁寧に分け、世代ごとの特徴を説明していきます。
第1世代はドリフと萩本欽一、第2世代はビートたけしと明石家さんまなど、世代を代表するお笑い芸人2組をピックアップして論考したのは、視界を良好にするのに役立っています。
もっとも、第4世代と第5世代をひとくくりにして、ナインティナインとロンドンブーツ1号2号に絞った点や、第6世代の筆頭をキングコングとオリエンタルラジオにした点は、人によっては異論がありそうです。
私も「はじめに」で、このラインナップを見た時は、思わず首をひねりました。
ただ、中身を読んで納得。
それも含め、総じておもしろく、興味深い内容の本でした。
「さんまは萩本の正当な後継者」というのはまさに慧眼、思わず膝を叩きました。
ちなみに、ラリー遠田さんは、ぼくより6歳下。
ほぼ同世代と言っていいでしょう。
「おわりに」で、こんな自身のエピソードを紹介しています。
「中高生の頃、『ダウンタウンのごっつええ感じ』などを見ていて「この面白さは年上のオッサンたちには理解できないだろうな」などと思っていたものだが、いま自分がその頃に想像していたオッサンそのものの年齢になっていると思うと震える。」
たしかに震えます。
会いたくて震えることはありませんが、この感懐は本当に震えます。
高校生だった自分は「ごっつええ」を見ながら、この笑いを理解できない大人たちを蔑んでいました、すみません。
令和の時代になり、EXITで笑えないぼくを、今の若者は蔑んでいることでしょう。
震えます。