東京を捨てる コロナ移住のリアル (中公新書ラクレ) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 新型コロナ感染拡大のなか、IT企業などを中心に導入されるテレワークなどを機に進む地方への移住を紹介するルポルタージュ。都心での仕事をもつ移住者に限らず移住ありきで退職した体験者なども含めた移住実践者を取材し、移住までの経緯や動機などを含む数多くの体験談が紹介されている。随所には移住を支援するための公的機関やサービス、支援金から住居の探し方や中古車の選び方に至るまで、移住に必要な情報が織り込まれ、冒頭で謳われるとおり実用的な移住ガイド本としての役割も併せもつ。基本は都心部の人口集中から地方へ拡散する移住の流れをポジティブに捉えて後押しする方向性となっている。

    多くの移住者の声が取り上げられているが、取材対象に比較的移住から間もない体験者が多いためか、もしくは本書の方針もあってか、あまりネガティブな声は見受けられない。一方、自身が東京から淡路島に移住して「半農半ライター」として生活を営む著者自身の体験からは、6章などを中心に田舎暮らしの意外なコストの高さ(住居費は安くてもその他の費用がコストダウンを補ってしまう)や、新規就農の難しさ、住む家の少なさなど、ネガティブな側面も伝えて補足している。

    個人的には著者自身の淡路島移住を中心とした6章の体験談をもっとも面白く読み、冒頭ではつまらなくなったと語られた、東京の街に対する著者の捉え方も印象に残った。取材の対象となった数多くの移住者についても一部を掘り下げていれば、もっと興味深く読めたかもしれない。移住者が徐々に増えているとはいっても現状はまだ移住先の地方において十分なインフラ整備等がなされてはおらず、移住への敷居が低いとは言えない。ただ、今後この流れに同調する人々が順調に増えれば、移住者の増加によって情報が増えて環境が改善が進み、今後はより多くの人にとってより現実的な選択肢になりえそうだ。そうした先には、著者が終章などで示した展望の通り、人々の生活への意識を変える大きな潮流を生む可能性を秘めているのではないかという希望も抱いた。

  • タイトルは「東京を捨てる」とあるが、著者は「本書」は東京を捨て、地方に移住しようと促すものではないと述べている。



    「コロナ移住」した当事者でもある著者が取材したルポルタージュだ。




    23区の若い人の約4割が地方移住に関心を示している。政府は去年の5月から6月にかけて「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を実施した。




    テレワークの実施が東京23区で増えるにつれて、若い世代を中心にして地方移住に対する関心が高まった。地域別では東京23区が一番高く、20代の35.4%の人が地方移住への関心が高くなった/やや高くなったと答えた。



    移住希望者の動きが従来とは違ってきている。例えば、長野県でも新幹線で東京へのアクセスが便利なところとそうでないところでは違う。



    そして、移住希望者の質問として「どんな支援がありますか?」と聞いてくる。神奈川県のある自治体関係者は「補助金はありますか?」と開口一番に聞いてくる相談が増えていると説明した。



    田舎に仕事はないのは嘘として様々な仕事を紹介している。古民家カフェなどの飲食サービス業、ゲストハウスなどの宿泊業、集落支援などのまちづくり支援業のような起業。酒造・民宿などの承継などの事業継承、自治体職員などの行政関係、農業法人などの農林漁業などの就業をあげている。



    都会人が知らない田舎暮らしのトリセツでは、様々なことが書かれている。例えば「全国版空き家・空き地バンク」の運営が2018年から始まっている。



    登録戸数が延びないという悩みを抱えている。その原因は、相続した家にそのまますんでいるケースが多く、愛着もあり人に売ったり貸したりするのを嫌がる。



    その上、相続人の間ではっきりせず、相続未登記問題がある。キッチン・水回りで、キッチンのみを変えるだけで50~100万かかる。これなら海外旅行でいいところに泊まって楽しんでもお釣りが出そうだと思ってしまう人にはきついなあ。





    空き家があっても改修にお金がかかる点に注意が必要だ。キッチンのみを交換するのに50~100万円かかる。「ヒエー、ヒヤー」と思う人にはきついなあ。



    生活費についても注意が必要だ。住むところはとうきょうに比べて安いかもしれないが、地方にはお金のかかるものがある。その代表が車にかかる費用だ。さらにプロパンガスの費用は都市ガスの1.8倍かかる。




    コロナウイルス感染拡大で地方に移住すると怖い目にあうというニュースを見聞きする。そうでなくても、人間関係の濃密な所に移住するとなにかと煩わしい。



    その辺のリスクを踏まえて地方に移住することを考えないと、自然がキレイだし、広いところに都会より安く買える・借りることができると飛び付くと後が大変だ。




    「ポツンと一軒家」はあくまでもテレビ番組で見るものであって住むものではないと思う今日この頃だ。

  • 20年間東京都大田区で暮らしその後兵庫県の淡路島に移住し農業をしている著者が執筆する地方移住暮らしのススメ本。
    そんな自分も東京に出てきて18年たちウィズコロナの時代に住む意味に若干懐疑的になりつつ読んでみました。
    著者と世代も東京生活歴も似ているのでかなり参考になりました。
    生まれ育ちは北海道のど田舎なのでもちろん田舎暮しのしんどさやデメリットなども知った上で、思っていることがあってそれは、今よりも
    ・広い家で家族と大型犬で暮らしたいなぁ。
    というざっくりとした憧れ。
    その憧れに付随するように地方で仕事あるの?収入下がる?不便だったりしない?というデメリットに相殺させてそれでも憧れが勝つのかどうなのか。を手探り中な今日このごろ。

    本書ではたくさんの実際に東京から田舎に移住を実行した一達のインタビューが書かれている。
    大抵の人は田舎に引っ越してきて満足もしているが、中には思いつきで地方に引っ越して仕事もなかなか決まらず疲弊している人のお話も。
    youtubeとかでも結構地方に引っ越してきた人の本音っぽい動画も観るけど結構後悔している人も多くて意外だったりもしながら、地方がユートピアではないぞ!と思ってみたり。

    さっと一読して地方移住で気になった場所のメモ。
    ・岡山県和気郡和気町
    ・北海道上川郡東川町

    今、この2つの場所に興味津々なのでした。
    本書をきっかけにもう少し調べて掘り下げてみようっと。

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著者プロフィール

1981年生まれ。兵庫県神戸市出身。ジャーナリスト。高校中退後、建設現場作業員、アダルト誌編集者、『週 刊SPA!』(扶桑社)編集者、『AERA』(朝日新聞出版)記者などを経て、進路多様校向け進路情報誌『高卒進路』記者、同誌発行元ハリアー研究所取締役社長、NPO法人進路指導代表理事。著書に『ルポ技能実習生』(ちくま新書)、『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(中公新書ラクレ)などがある。Twitte〈@sawadaa078〉

「2022年 『外国人まかせ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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