実力も運のうち 能力主義は正義か? [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • なぜ資本主義がギクシャクして、なぜポピュリストが跋扈してきたかはつかめる。が、この悪い流れを断ち切るヒントが得られなかった。

  • 読みにくい。響くものがない。

  • なぜトランプ前大統領があれほど人気があるのか?
    不思議だった。でも、この本を読んで、よくわかった。

    日本も然り。
    頑張れば報われる社会にしたいけれど、もはや頑張っても頑張ってもそうはならなくなっているほど、階層が固定化している。

    貧しく不幸せな自分は、必ずしも、頑張らなかったから、努力が不十分だったからなわけじゃない。
    エリートの果たした成功は必ずしも努力の当然の結果というわけではない。

    ここ。


    自分の生活を安定させることができる仕事と収入があり、家族があり、暮らしやすい地域があり、繋がる人たちがいれば、いいじゃないか。ということ。

    頑張れば報われる社会にしたい。
    でも、それ以上に、人より出世しなくても、人より稼げなくても、今の自分も悪くないって言える社会である必要がある、ということだな。
    まさにそうだな、と思った。

  • 成功は才能と努力の合成物
    というところに同意。

    そして、成功は一人ではなしえないという主張にも同意。

  • 所得に課税するのではなく金融取引に課税するのはいいかも。

  • 能力のある者、努力した者が良い大学に行き、高い所得を得て成功者となる。
    現在、アメリカで信じられているストーリー。
    しかし、これは逆に言うと、低賃金労働者は努力をしなかった結果だから自己責任であるという結論にたどり着く。
    著者は、現代にはびこっている能力主義に疑問を投げかける。

    なぜなら、ハーバード大学やスタンフォード大学の学生の3分の2は、所得規模で上位5分の1に当たる家庭の出身である。
    この結果を見ても、学生たちの純粋な努力の成果であると言えるだろうか。裕福な家庭に生まれ育ったために、教育環境が整っており、親が教育費にお金をかけてくれたからと思わないだろうか。
    特にアメリカでは、大学に多額の寄付をした場合、子供が優先的に入学できる制度がある。

    今日の能力主義は世襲の貴族社会へと硬直化してきたと言えるのではないだろうか。

    特に、現在のアメリカでは、大学に行った者と行かなかった者の分断が進んでいる。
    両者の違いを単なる、個人の努力不足という自己責任に押し付けで良いのだろうか。

    最近の研究で、非大卒者の絶望死が増加していることが分かった。
    昔から低学歴の人は、アルコール、薬物、自殺によって亡くなる危険が高かったが、近年、死亡率における学歴格差は激化の一途を辿っている。
    大卒者の死亡率は、40%低下したのに、非大卒者は25%上昇している。

    アメリカンドリームともてはやされた時代は終わり、現在のアメリカでは底辺から上り詰めるのは、相当難しくなっている。

    金持ちであることは、世の中に貢献している結果、人からの感謝の印が金銭となって返ってきているという理論は、金持ちが自己を正当化するための戯言に過ぎない。

    それなら、麻薬ディラーが教職員よりも金持ちなことの説明がつかない。
    人より多くの富を手にしているということは、幸運と、希少な才能と、それを必要としている時代に生まれたという結果に過ぎない。
    つまり、自分でコントロールできる事象はごくわずかで、偶然や運に左右されることが少なくない。
    ここを履き違えているから、高学歴者は傲慢な勘違いをし、低学歴者を見下すことになる。
    そして、低学歴者の人々も見下されるのは仕方のないことと思い込み、人生に絶望し、絶望死する確率が高くなる。

    トランプが当選したとき、トランプを指示したのは、白人のブルーカラー達だった。

    では、この格差をなくすためにどうすれば良いのか。真の平等とは何か。
    著者は、そもそも大学というものをなくしてしまうか、大学入学者の半数をくじ引きで決めるという大胆な発想を提案する。

    著者がハーバード大学の教授であることに照らし合わせても、所謂勝ち組であることに間違いない。
    そんな自分も含めたアメリカの勝ち組達を徹底的に否定し、仕組みを根底から変えようと提言する本書は斬新である。

  • 成功するしないは、自分の能力や権利が全ての原因ではなく、多くは外的な恵まれた状況から発したものであり、正義の問題とは全く別個とすべき。正義の問題は、社会の在り方論から(純粋に)立案されるべきということがわかる本。最後まで読むと大きな収穫がありました。
    ただ、難しい表現や歴史のお話が読みにくさがあります。是非読み飛ばしながらも最後まで読了されることをお勧めします。
    受験とか出世とか、経済的成功とか、それら実力主義は当然に存在すべきものであえり、能力ある者がその報いを(全て?)受けるべきという考えに疑問を呈する。この能力主義での勝者が、成功を勝ち取った後に、自らは幸運を受ける権利があると拡大解釈するとき、不正義がはじまる。この形は幸運にも成功や出世(社長になる)を手にした人が、自分には社長になる権利があると誤解した時に、組織・社会はぎくしゃくすることに似ているかも。

  • 自分の知識が足りな過ぎて読み終わったら血反吐が風呂いっぱいになってた

  • プロテスタントの教義は、死後に天国に行けるかどうかは最初から決まっているという予定説に基づくものだった。しかし、それでは人々は自分がどちらなのか知りたがる。よって、労働に励むことで自分はきっと天国に行けるのだろうと信じるようになった。これが功績主義をもたらしたとしている。2016年にトランプに投票していた人々は、社会保障政策の充実に満足できなかったのではない。彼らの労働がもはや必要とされていないかのような侮辱に晒されてきた結果だという。労働の承認を促すにはどうすればよいのか。筆者は市民の対話に解決策を見いだす。グローバル社会の勝者と、グローバル化によって仕事を奪われた人々はお互いに交わることがない。だからこそ、両者が議論を交わすことが必要なのだ。

  • トランプがなぜ人気があるのかが初めてわかった気がする。Yes, you can.と言って支持者に訴えたオバマは皆が大学に行くことを奨励したが、大学に行けない人のことを考えていなかった。以前は大学に行く人は近くの大学に行き、たいていの人が入学できたらしいが、最近では特に有名大学では合格率数パーセントになっているという。努力すれば夢はかなうという聞こえのいい能力主義はいまや誰もが当たり前と考えているが、社会全体が能力主義を信奉するあまり、ダメ人間の烙印を押されたことになる敗者に思いをいたすことがなくなっているという。実際には家庭環境その他、資金力などによって成績も大きく影響されるわけだが、これが本人のせいにされる。(このことに気づかなかったことがヒラリー・クリントンの敗因だろう。)しかも実体経済にあまり寄与しない金融業が重要性を増すについて、製造業などの労働が軽んじられてきた。こうして世間からの承認も労働の尊厳も奪われれば不満になるのも無理はない。白人労働者にしてみれば、アメリカンドリームに到達しようと列に並んでいたら、女性や黒人などアファーマティブアクションで前に割り込みされたに等しいといいう。たしかにそう感じるだろうことはわかる。高卒の白人男性の絶望死(自殺だけでなくドラッグやアルコールなどによる死も含む)は大卒に比べ明らかに多いそうだ。1年でベトナム戦争の死亡者よりも多く、最近では2週間でイラク・アフガン戦争での死者より多いとは愕然とする数字だ。
    こうした学歴偏重と能力主義の弊害に対して著者は、まず大学の入試を、ある程度事前に選んだあとでくじ引きにすることを提案している。くじ引きなら自分がダメなために不合格になったわけではないので敗者が屈辱的な気持ちになることがないし、合格者も何もかも自分だけの力で合格したわけではなく謙虚になるだろうと。このこうらい思い切った対策をしなければ変化はおこらないかもしれない。
    ところで、歴代大統領などの演説で特定の言葉・表現を何回使ったかで、その人が何を強調していたかを調べているのはおもしろい。

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著者プロフィール

1953年、アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス生まれ。アメリカ合衆国の哲学者、政治学者、倫理学者。ハーバード大学教授。

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