2巻では、高校生ゲイルが組織に唆されて学校内で銃乱射事件を起こすという、割とありがち感のあるストーリーが展開される。
動物が不条理に殺されることを何とも思わないのなら、お前たちに不条理な死を押し付けて気付かせてやるのだと、イカれた信条のもとにネット生配信しながらクラスメイトを殺戮するゲイル。
この手のイカれポンチ野郎はよくマンガや映画に登場するが、彼もその路線をしっかりと踏襲してくれる。期待を裏切らない。彼は自分の行為を人間にとっての"知恵の実"、"認識の赤い錠剤"と称した。そんな中2感を全開にした演説からの、チャーリーに蹴っ飛ばされて鼻血流して失神するところまで、しっかり役を演じきってくれる。テーマが秀逸だとベタでもちゃんと読めるし、新しいものが読みたいと思いつつベタを求めている読者心理もあるのだ。知らんけど。
今回は組織のボス的なマックスが、人種差別や奴隷制にも触れている。正義は時代によって変わるのか、いや普遍的なものであって気付かなかっただけだ、などと述べるのだが、そもそもゲイルを奴隷スパルタカスに準えて銃乱射に誘導するための前段として喋っているので、こいつが何を考えているのかわからない。そもそも、終始笑顔で動じない悪役はとんでもないやつだと、これまたマンガでは相場が決まっているのだ。こいつもおっかない。
ヴィーガンの描かれ方のバランスを取るためもあると思われるが、チャーリーの保護者2名もヴィーガンであり、チャーリーもヴィーガンである。保護者の方は、主義を他人に押し付けるでもなく、完璧なんて無理だけど、できる範囲で苦痛を減らそうよ、という穏健派でいい感じに描かれている。チャーリーに至っては保護者にそう育てられたから何となくそうしてるだけ、といった具合だ。人間を食べたらいけないの?と言ってたくらいだから、出されたら食べるのかもしれない。
また、チャーリーの権利問題についても触れられている。ここでも、保護者は"チャーリーの権利"に主眼を置いているのに対して、それを支持する議員は"動物まで包含した権利の成立"を目指しており、この議員関連でもまた何か一悶着ありそうである。裏で組織と繋がっているまでありそうだ。
ここまで一貫して、保護者とルーシーからは一個体としてのチャーリーという目線、それ以外からは半人半猿の生命体としてのチャーリーという目線で、対照的に描かれているのも印象的。チャーリーは自身でも言うように、ただのONE、でいられるのか、まあ無理だろう。