コロナ時代の選挙漫遊記 (集英社ノンフィクション) [Kindle]

著者 :
  • 集英社
4.29
  • (3)
  • (3)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 18
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (321ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • “選挙に行かないことは、決して格好いいことではない”
    畠山理仁さんが見た、全国15の選挙のルポルタージュです。コロナ時代の選挙って、顔を見せられず、人のいないところに演説に行くしかないんですね…。
    政治を考える入り口にぴったりの一冊。おすすめです!

    ブログを書きました!

    https://okusama149.blogspot.com/2021/10/839.html

  • この本は、選挙を通し民主主義というものの大切さについて教えてくれる本です。15の選挙について解説しています。この本は選挙の情報を集めるのみだけではなく、筆者自ら現地に足を運び、候補者にも質問をぶつけ話を聞くということをしています。私自身の話となり恐縮ですが、私は20歳になってから選挙に行かなかったことがありません。つまり、自分の中では投票率100%となのです。私自身、選挙というのは民主主義の根幹をなす、とても大切な行為だと思っています。

    筆者は言います。「コロナ禍で三密を避けるため、SNSを通じて自身の考えや政策を発信するようになった。それでも私は自分の目で候補者を見てほしいと思っている。有権者の厳しい監視の目、批判の声は絶対に必要だ。有権者の愛がこもった見守りは、候補者を確実に成長させるからだ。」(5P)私もそう思っています。SNSではどうしても一方的なやり取りとなってしまいます。民主主義というのは、双方向でのやり取りが基本であると思っています。

    安倍首相が全校一斉休校を宣言したことに対して、筆者は言います。「そうした政治決断をする政治家を選んだのは、有権者のみなさんだ。投票に行った人も、投票に行っていない人も、必ず政治の影響を受ける。無関心でいるのは個人の自由だが、誰もが政治の影響から逃れることはできない。被害者であると同時に加害者でもある。」(10P)選挙に行かず、つまり自分自身の選択行為を行わない方が、政治の判断により不利益などを被ったとしても、それは自己責任だということを私は解釈しました。

    筆者は言います。「もし、自分が応援した人が運良く選挙で当選したとしよう。その後、その政治家が無茶苦茶な政治をした場合、それは自分にみる目がなかったということだ。有権者には政治家を当選させた責任があるのだから、不満があればきちんと政治家に伝えて欲しい。「私たちが求めている政治の方向性はそっちじゃない」と軌道修正を求めてほしい。誰かに一票を託すというのはそういうことだ。投票して終わりではない。」(50P)この投票して終わりではないという言葉に私は目から鱗が落ちました。確かに投票して終わりではないのですが、つい当選後のことまで追いかけていない自分に気が付きました。これからは当選後のこともしっかりと見つめていきます。

    筆者は言います。「東京都知事選でも、全候補者に取材するというスタンスを取ってきた。その取材方法は選挙管理委員会の前で張り込みをして、資料を取りに来た人に声をかける。立候補の意思がある人には連絡先を聞き、「立候補検討者リスト」を作る。」(略)告示日当日にやってくる人もいるため、選挙の告示日は選挙管理委員会に一日中張り付く。この取材手法で全22名の候補者すべてと接触することができた。」(60P)選挙の取材というのは、ここまでする、逆に言うとここまでしないといけないのだと思いました。

    鹿児島県知事に対して鹿児島の県政記者クラブ(青潮会)以外の記者会見の参加について筆者が問います。「青潮会主催の会見に参加できない記者に向けて、機会を持つ考えはありますか。」⇒「スケジュールの許す限り対応したい。」(98P)

    鹿児島県では以前から県政記者クラブに所属する記者以外は知事会見の参加が許されていなかったのです。それを2012年4月に会見に参加は出来るが、質問はできないという状態まで粘り強く交渉しました(92P有村記者)それを筆者が今回、知事に質問し、やっと質問することが出来るようになるまで勝ち取りました。9年間の頑張りが報われた瞬間でした。

    戸田市議会議員選挙に当選したスーパークレイジ―君に対し、当選した他の市議会議員が面白おかしく言うことに対して筆者は言います。「最も大切にされるべきは「有権者一人ひとりの権利」だ。そして民意によって当選した議員に対しては最低限の敬意を持って接するのが正しいあり方だと思う。」(168P)私もそう思います。

    筆者は言います。「知事選挙を「よその地域で行われるローカルなイベント」だと考える人も多いが、私は違う。民主主義という観点に立てば、知事選挙は「全国的なイベント」だと言っても過言ではない。だから、もっと注目されていい。その理由は
    ・自分の地域でも立候補してほしいと思える人が見つかるかもしれない。
    ・自分の地域でも役に立つ政策のアイデアが見つかるかもしれない。」(172P)
    この観点を私は持っていませんでした。これからは、そのような観点から他県の知事選挙を見て参ります。

    名古屋市長選挙に出るために、240万円の供託金が必要とされていることについて、筆者は言います。「それぞれの候補者は大変な覚悟を持って立候補している。大きなリスクを背負い、有権者の選択肢になろうとして体を張っている。こうした人たちがいなければ選挙は成立しない。そのありがたみを再認識して欲しい。(略)有権者のみなさんには、すべての候補者を敬意と感謝の気持ちで迎えて欲しい。」(188P)私もそう思います。逆に言うと、そこまでのお金が必要となるということは、立候補のハードルが高くなることを意味し、本当に選挙に立候補して欲しい方が出来ないケースも考えられるように思えました。

    東京都議会選挙の投票率が42.39%だったことについて、筆者は言います。「前回の52.28%を8.89%下回った。私は「ひとり民主主義応援団」を自称しているが、選挙の楽しさ、立候補の意味、参加することの大切さを伝えられなかった。非力な自分を恥じている。もっと多くの人が「選挙」に注目してくれるような活動を展開できていれば、こんな低い投票率になることはなかったはずだ。」(261P)私は筆者の責任ではなく、大人がもっと投票の大切さ、民主主義の大切さについて機会あるごとにアナウンスしていないことに責任があると思っています。選挙期間中にのみ選挙の大切さについて、触れているだけではいけないと思っています。日本の周辺国でも民主的な選挙をしている国ばかりではなく、北朝鮮などは、選挙に一人しか立候補できないようです。(実質的には信任投票となる)

    横浜市長選挙の取材をしていて筆者は言います。「横浜は広い。道路では渋滞もあるから移動時間が読めない。一日に会える候補者の数も限られる。一人(筆者)対8人(候補者)の取材では休んでいる暇がないため、どうしても食事の時間を削る必要がある。多くの場合は食事抜きだ。」(283P)選挙期間中は、候補者本人だけではなく、取材する側も身を削る必要があるのだと実感しました。

    横浜市長選挙の候補者であった山中竹春さんが選挙戦最終の演説場所を明かさないことについて、筆者は言います。「選挙運動は妨害されない権利がある。間違っているのは妨害する側であり、候補者は堂々と表に出て主張を続ければいい。山中はたった一人で活動しているのではなく、周囲には支援するスタッフがたくさんいる。堂々としていればいい。」(298P)全くの同感です。自分自身にやましい所がないのであれば、胸を張って選挙活動をして欲しいです。

    一人でも多くの方がこの本を手にして、選挙の大切さ、ひいては民主主義の大切さに思いを馳せるようになっていただけることを願っています。私は選挙に行き投票する人は美しいと思っています。素晴らしい本を出版してくれた筆者と出版社に深く感謝いたします。ありがとうございました。

  • めちゃくちゃ面白い。とにかく早く読んだ方がいい。時代的にタイムリーなことももちろんだが、マスコミ、Twitterなどがいかように報じていて、それと現場がどれだけ乖離しているかということが、時間とともに記憶や印象が薄れていってしまうからだ。
    スーザンソンタグの「そこにはいつもそれ以上のことがある」や岸政彦の「他者の合理性」という言葉がこれだけ生かされた事象は他にないだろう。
    そうでなくてもなんてドラマチックなんだ。確かにこんなに面白いことはない。下手な映画なとか足元にも及ばない喜怒哀楽とカタルシスと自己変容が選挙にはある。
    既成政党の推薦や公認がいかに浮ついた表層的なものであるか。そんなレッテルにおいそれと簡単に左右されてしまう世論と自分。
    大いに反省した上、今後の「選挙」という名の、現実のイベント祭りの価値とすれば途方もない金額のプラチナチケットを無駄にすることのないようにしたい。

  • 衆議院選挙が始まった。いろいろな候補者が出馬している。今回の本は「選挙エッセイ」という珍しいテーマを扱っている。





    著者は「選挙は返品可能な高額商品を見定める機会」と考えてほしいと述べている。与野党共に返品した政治家が複数いるからなあ。せっかくのきかいなので、権利を行使しないともったいないお化けがでる。





    選挙というとどうしても主要政党とその他という構図になるが、その他の人たちは何を考えて立候補したのか知る機会を主要メディアは提供してもいいはずだがしない。不思議だな。




    この前話題になった横浜市長選挙をはじめとして、東京都議会選挙、東京都知事選挙、熊本県知事選挙、静岡県知事選挙など全国の選挙の模様を知ることができる。





    今回の衆議院選挙で投票する際の参考として読んでみるのも悪くはない。





    全国各地で個性豊かな候補者がいるので、注目してみては。




    衆議院議員選挙2021 候補者情報 政策 公約 -衆院選- NHK

  • 選挙のプロジャーナリストである畠山理仁さんの書いた本です。
    選挙の楽しさやこんなおもしろい候補者いたのかと新たな発見がありました。

全6件中 1 - 6件を表示

畠山理仁の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×