新しい世界の資源地図―エネルギー・気候変動・国家の衝突 [Kindle]

  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • エネルギーを巡る国際問題は、プレイヤーが多くてとにかく錯綜している。大国の覇権争い、資源国の思惑、宗教対立、グローバル企業の動き、テクノロジーの進展、そして環境問題。本書は、米国、ロシア、中国、中東の過去を紐解き、現状を分析し、自動車産業の動きや気候変動問題をも押さえた上で、エネルギーを巡る近未来を冷静に考察した大書。

    エネルギー問題を通じて近現代史(政治史、宗教史、産業史、テクノロジー史など)をしっかり学ぶことがでた。イランと中東諸国の関係など、知らないことが多かった。

    新聞記事やニュース報道で断片をインプットしても、全体の流れはなかなか掴めない。こういった書籍こそ読むべきだと感じた(日々新聞をしっかり読み込んでいるエリートビジネスマン風に書いてみました(笑))。

  • アメリカのシェール革命が変えた勢力地図、ロシアの資源外交、中国の南シナ海と一帯一路、中東の紛争の歴史、そして気候変動。あまりの面白さに500ページもあるとは思えないほどあっという間に読んでしまいました。エネルギーは自分の生活に直結する重要な話題でありながら、自分はこうも何も知らなかったんだな、と改めて驚きました。

    世界に資源が偏在していて、そこに人為的な国境線が引かれている。その変えようのない状況が数多くの衝突と悲劇を生み出しているようで気分が沈みますが、本の内容は抜群に面白かったです。

  •  “なかば”読了かな、ひとまず。第1部の中盤、第5章 閉鎖と開放──メキシコとブラジルや、第4部中東の地図 あたりは飛ばし読みだ。
     またのちほど、じっくり拝見するとしよう。

     とにかく、今(2022年3月下旬)、第2部「ロシアの地図」はより多くの人が読むと良い。
     そして、日本人として無責任に、プーチン統治のロシアの立場を批判するだけでなく、第3部「中国の地図」もよく読んで、台湾および南シナ海のシーレーンに差し迫る危機を、我が身のことと理解した上で、物事は語ったほうがよいことが分かる。

     我々の目先10年20年には、本書でいうところの、第5部 自動車の地図、第6部 気候の地図 という未踏の新大陸が拡がり、そのを渡っていかなければならない。新たなガイドブックが必要はことは明白だ。

     そんな時に、欧州の東端の小競り合い、そこだけに焦点を当てて考えていていいはずがない。ウクライナ地域での戦争状態は、一日も早く停戦が成立して、平和が再構築されるにこしたことはない。ただ、そこで、プーチンが失脚すればよいという解決が最善だなどと短絡的な解決を声高に叫ばない方がよさそうだ。

     欧州の片隅の火種を煽っているのは誰だ? 遠く海の向こうから制裁を!と叫んでいるのは誰だ?
     本書の中にも、アメリカ人である著者も書いている。

    「米国が制裁を科すのは「自国の天然ガスのため」、つまり米国のLNGの輸出のためだった。ドイツの外相も同じことを言った。このような推測は根拠のないことではなかった。2017年の法案ではっきり「米国のエネルギー資源の輸出によって雇用を創出する」と謳われていたからだ」

     ゆえに、プーチンはかねてから中国の習近平に「世界規模でも、地域規模でも、我々には共通の優先事項がある」と語っている。両国が共に唱えているのは、多極化と国家の(=自国の)「完全なる主権」に過ぎない。

     それに対して、多極化の反対の“一極支配”を敷こうとしている国がある。国際システムの覇権を握ろうとしている国がある。そして、活動家やNGOを通じて、民主主義を普及させ、意にそぐわない体制は転覆させようとしている国があるのが現実の世界だ。

     そんな国家が存在する中で、最善のバランスを考えていかなければならないということを、俯瞰的に見せてくれる良書だ。
     いや、本書もなんらかの意図を以って編まれたものかもしれない。とはいえ、ものごとのとある一面、一定の角度からみた世界の在り方であることは間違いない。

  • 現在の国際情勢を、石油・LNGなどを含めたエネルギーという観点から解説する。主な地域して取り上げられるのは、米国・ロシア・中国・中東、そして歴史的なトピックとしては電気自動車とカーボンニュートラルが解説されている。

    本書のようなある視点からの統一的な解説というのは、個々のトピックの知識を超えて全体感を掴むのに役に立つ。本書で言えば、冒頭に書かれているアメリカでのシェールの発見と開発が、国際秩序を大きく変えて現在までの流れを生み出したことがよくわかる。

    広い意味では地政学にカテゴリーされるであろう本書は、アメリカ発らしくロシアやイランに対してどうしても手厳しくなる。類書を読んでも同じようなトーンとなっていることが多いので、一定以上の階層にいるアメリカにとっての共通理解になっているのだろう。

  • 中国、ロシア、中東、アメリカとそれぞれの資源立ち位置がよく理解できる名著。

  • ロシアがウクライナに侵攻を始める前にもかかわらず、本書の内容はこの事態を予測していたかのような内容になってて興味深かったです。

  • タイトルや著者の過去の著作からはエネルギー中心の話と思われたが、実際は、中東・イスラム、中国/シーパワー、ロシア、インド、気候・自動車(エネルギー転換の代表)の状況も概観しており、原題The New Mapがふさわしい。
    まずシェール革命が米国を100年ぶりにエネルギー輸出国にした。エネルギー供給は米、サウジ、ロシアで安定していたが、気候問題、中国の経済と軍事台頭(特に東シナ海)、ロシアのウクライナ進出意欲、イスラム原理主義がグローバル化を揺るがしている。著者の意見としては、過去の軍拡競争に陥らず、対話をし続けることが重要としている。

  • 一応読み終えた。第1部米国の新しい地図、第4部中東の地図は斜め読み。
    ただ米国のシェールガスの発掘によってエネルギーの勢力範囲が大きく変わったことは数々のエピソードから読み取れる。
    第2部ロシアの地図は現在進行中のウクライナ侵攻の前段としてのロシアのソ連時代の勢力に対する回帰願望(プーチンに代表される)を動機とした2流国に成り下がったロシアの悪あがきがよくわかる。
    第3部中国の地図は近隣国でありかつ最大貿易国である中国の海洋進出の野望が南シナ海を中心として描かれ、東シナ海で問題を抱えるわが国にも示唆されるところが多い。
    第5部自動車の地図ではガソリンに頼ってきたエンジンの自動車が気候変動を抑止するための環境保全として脱炭素の前線として電気自動車の開発と普及(世界的にはかなりの偏りがあり、当分は解消されないだろうとの予測),及び自動車という大きな業界でヘゲモニーを握ろうとする中国の野心も再認識。
    また自動運転等新しいテクノロジーがどのように我々の生活を変化させるのか興味深い。
    第6部気候の地図は5部とも関連するが、さらに大きく国単位で持続可能なエネルギーの構成を探る様々なアプローチが描かれる。
    従来の石炭や石油、天然ガスといったCO²排出エネルギーから太陽光,洋上風力といった再生可能エネルギーへの移行ないし併存による脱炭素と蓄電池等新しいテクノロジーの必要性を大局的に示唆する。
    結論やエピローグで著者なりの予測や観測がコンパクトにまとめられていて示唆に富むところも多い。
    大著536ページではあるが単元がコンパクトにまとめられていることもあり案外読みやすい。
    現代をエネルギーをめぐる経済、政治、テクノロジー等から描き、分析する本書は多くの示唆を得ることのできる名著だと思う。

  • ロシアによるウクライナ振興があってのレジームチェンジ、特にエネルギー安全保障の高まりを理解する上で様々な側面がまとまった一冊。非常に分厚い一冊だが、プーチンの大統領になるまでのバックグラウンド、ソビエト連邦時代から続くウクライナとの歴史的関係、ガスプロム社の位置づけなど新たなレジームを紐解く要素が散りばめられており、非常に参考になった

  • ロシアのウクライナ侵攻を予見していたかのような一冊。米国の石油輸出国への転換、脱炭素への取り組みなどのエネルギーを取り巻く環境を地政学的な視点から体系化した一冊。迷わず5つ星です。

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著者プロフィール

ダニエル・ヤーギン
IHSマークイット副会長
「米国で最も影響力のあるエネルギー問題の専門家」(『ニューヨーク・タイムズ』紙)、「エネルギーとその影響に関する研究の第一人者」(『フォーチュン』誌)と評される。ピューリッツァー賞受賞者。ベストセラー著者。著書に『石油の世紀――支配者たちの興亡』、『探求――エネルギーの世紀』、『砕かれた平和――冷戦の起源(Shattered Peace: The Origins of the Cold War)』、共著に『市場対国家――世界を作り変える歴史的攻防』がある。世界的な情報調査会社、IHSマークイットの副会長を務める。


「2022年 『新しい世界の資源地図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ダニエル・ヤーギンの作品

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