三酔人経綸問答 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫) [Kindle]
- KADOKAWA (2021年12月21日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (219ページ)
感想・レビュー・書評
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中江兆民は、明治時代の思想家です。岩倉使節団に随行してフランスへ留学し、後の1887年に本書原文を書きました。兆民さん41歳の時です。”東洋のルソー”と呼ばれたそうです。
本文構成としては、タイトル通り三人の人物がブランデーを飲んで酔いに任せて?日本国の針路を論じるというものでした。
紳士君という民主主義者(理想の高いダーウィニスト的な)と、豪傑君という侵略主義者(現実を見るメンタリスト的な)が激論し、南海先生に意見を請うというカタチです。
概ねどこかで学んだり、読んだことがある時代背景で、列強が日本へ侵略してきた場合の想定や、彼の国への侵略を先手を打って仕掛けてはどうかという意見などを登場人物に語らせていました。
結果は歴史が示すところなのですが、兆民さんはその後の戦争(例えば7年後の日清戦争)に何を思ったのだろうと考えました。
本書では、アベ・ド・サン=ピエールからカントへの”平和論”の系譜も紹介されていました。
また、現代の価値観と違うところもあって、例えば、紳士君の「人に頼って生きるのは、恥ずべきことではないか?」には個人的には抵抗を感じますし、
豪傑君の、(国民のうち”昔好きの人達”は)大国に行き戦争をしろ、といった内容には嫌悪感があります。
さらに、紳士君側の意見には、人類は常に進歩していくのだという考えが強くあって、私からすると欧米受け売りの思い込みじゃないかと疑ってしまったり、
豪傑君が「理論と技術」の区別をして、医学と政治を論じるところなどは、少し納得してしまいました。
南海先生が二人の話を聞いて、まとめ上げてごまかすところはソレでいいのか?とも思いましたが、日本の民権と欧米の民権の区別には納得したし、政治技術としては
有りなんだろうと思います。二人は心地良く話し切って、お別れをするのですから。
素人考えだし、詰め込み過ぎてとっちらかったレビューですが、登場人物がいて、それぞれ特徴的な三者三様なので、学びやすい本だと思います。
明治時代などの激動の歴史に興味がある方はぜひご一読頂きたいです。短い文章で一般向けだと思いますので。
余談ですが、兆民さんは土佐生まれ。坂本龍馬に「タバコ買ってきてよ」と言われたりした少年時代のエピソードもあります。(幸徳秋水の伝)
このあたりは、本書、角川ソフィア文庫版の解説に書かれていました。なんか面白くて好きなエピソードです。
また手元の年表では、本書が出た1887年はザメンホフがエスペラント語を考案した年とあります。二葉亭四迷が『浮雲』を発表とも。
その当時の言葉や流行が気になる言語マニアとしては、外せない出来事ですが、あぁまたとっちらかってきた・・・。詳細をみるコメント0件をすべて表示